夏に降る雪に溺れるような恋を

立ち込める煙と命の灯

―帰り道、病院へ向かう足取りは重かった。

病院へ向かう途中、道に手向けられた花束を見つけた。

史也が事故にあった場所だ。

その時の情景がフラッシュバックして頭が痛くなる。

「うぅ・・・」

思い出したくない過去を思い出せば思い出すほど、
人は自分を維持できなくなってしまう。

治りかけていた心のかさぶたをはがされるような感覚だ。
道に座り込んでしまった。

「だめだ、病院遅れちゃう。」

すぐに立ち上がりはしたが、
もう歩きたくない、このままずっと眠りたい、そんな気分だ。

史也だったらこんな時なんて言ってくるだろう。
「何ぐずぐずしてんだよ、病院いかないと怒られるぞ」
なんて笑いながら言うのだろうか。今となっては答えなんてわからないが。

もしあの時もう少しだけ長話していれば。
もう少しだけ帰る時間を遅くしていれば。
他愛もない話をもっとしていれば。

どうにかして史也の死を防げなかったものか。

今更悔やんでも仕方のないことではあるが、
彼が死んでから1年間、同じことを考えているような気がする。

自分を責めても仕方ないが、そうでもしないと落ち着かなかった。

そうこう考えているうちに病院へついた。
史也がお世話になったという先生がいる病院だ。

病院の外の喫煙所でちょうどタバコを吸っている先生を見つけた。

「先生、タバコなんて吸って大丈夫なんですか？」

「お、これはまずいところを見られてしまったな。どうしてもストレスがたまってしまうもんで。」

先生はいつものしわくちゃな笑顔でそう言った。

「今日、史也のお墓詣りに行ってきたんです。きっと史也も向こうで元気にしてると思います。」
「うん、そうだな、史也君のことだからきっと向こうでもうまいことやってるよ。おばちゃんとかに好かれちゃったりしてるだろうな」

先生は、史也が死んでからというもの、私をどうにかして笑顔にしようとしてくれている。
本当にありがたいことだ。それだけで涙が出そうになってしまう。

「それで、あの事なんですけど、――