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6.婚約破棄に向けて
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婚約破棄のために目標を決めた二人は、すぐさま行動を始めた。
婚約まで強引に進める親だ。対抗して先手を打っていかないと既成事実を作られてしまう。
周囲への認知、親同士の結託、結婚を前提とした交易。
これらを防いで婚約破棄へ持っていかなければならない。
アンとロームは、わざと人目のあるところで喧嘩をしたり互いに嫌がっている素振りを見せて、相性が悪いことをアピールした。
その裏で、政略結婚の目的である資源や軍事力の交易や提供を推し進め、結婚しなくても目的が達成されるように取り持った。
両親に任せるのではなく、アンやロームが積極的に動いた。これは、決定権を手にするためだった。
また、互いの両親がこれ以上結託しないために、できるだけ会わせる時間を取らないようにした。
どうしても会う時間が必要な場合は必ず同席し、話が良くない流れになったら、協力して断ち切った。
そうこうして、着々と準備は進んでいった。
「だんだん、私たちの仲がよろしくないと周りが思い始めているようですわ」
「ああ。反対に交易は順調に進んでいる。結婚はしなくても互いに欲しいものは手に入れられる状況だ」
「婚約破棄まで、あともう少しですね」
「だな。あとは……決定打を打ち込むだけ」
誰もいない場所で、二人は最後の計画を練っていた。
婚約破棄を認めなければならない状況。そこに持っていくための打ち合わせ。
「ローム様、先に謝っておきますわ」
「いや……こちらこそ」
「絶対に印象が悪くなってしまいますけれど、本当にごめんなさい」
「大丈夫だ。俺もアンさんに手荒なことをしてしまうから……すまない」
「気になさらないでください」
最後にそれだけ言葉を交わして二人は何事も無かったかのように分かれた。
あとは、互いの両親がいる前で、話した通りの作戦を行うだけ。
会食が行われるその時を二人は待ち望んでいた。
――そして、その瞬間がやってきた。
「どうしていつもいつも君はワガママばかり言うんだ!」
「ワガママ!? 私の主張は当然の権利ですわ!」
「ふざけるな!」
「きゃっ!? ワインを女性にかけるなんて……ありえませんわ!」
些細なことから発展した口論。当然、アンとロームが仕組んだ喧嘩で、作戦通りである。
「落ち着いて、二人とも」
「これから結婚をする男女がこんなことで喧嘩をしてどうする!」
「そうよ、失礼でしょうアン!」
「全く……」
オロオロするロームの母、喝を入れるロームの父とアンの母、呆れたような反応を見せるアンの父。
反応はそれぞれだが、アンとロームの喧嘩を止めようと仲裁に入ろうとした。
「こんなことではありませんわ! 私はずっと我慢していましたの!」
「俺だってそうだ!」
口喧嘩はますますヒートアップしていく。
「アンさんと結婚なんてありえない! 婚約破棄させてくれ!」
「それはこちらのセリフです!」
婚約破棄という言葉に慌てて反応したのは、ロームの父とアンの母だった。
「おい、ローム! 何を勝手なことを言っている!」
「アンもよ! 勝手なことを言わないでちょうだい!」
その声にロームとアンは叫ぶように返す。
「どうせ政略結婚の目的はもう達成されているだろう!? 俺を道具に使わないでくれ!」
「そうですわ! 婚約破棄を認めてくれないなら……これまで私が取り持ってきた交易も全て白紙に戻します!」
「俺だってそうだ! このまま結婚をさせるつもりなら……俺がアンと取り持った契約を全て破棄する!」
アンとロームは切り札を使った。これまでの準備は全てこれを使えるようにするための行動だったのである。
二人の両親はその言葉に目を見開いた。こう切り出されては婚約破棄を認めるしかない。
だが、目的さえ達成されるのなら結婚を諦めること結婚を諦めることなど容易だった。
こうして、アンとロームの計画は成功した。
婚約まで強引に進める親だ。対抗して先手を打っていかないと既成事実を作られてしまう。
周囲への認知、親同士の結託、結婚を前提とした交易。
これらを防いで婚約破棄へ持っていかなければならない。
アンとロームは、わざと人目のあるところで喧嘩をしたり互いに嫌がっている素振りを見せて、相性が悪いことをアピールした。
その裏で、政略結婚の目的である資源や軍事力の交易や提供を推し進め、結婚しなくても目的が達成されるように取り持った。
両親に任せるのではなく、アンやロームが積極的に動いた。これは、決定権を手にするためだった。
また、互いの両親がこれ以上結託しないために、できるだけ会わせる時間を取らないようにした。
どうしても会う時間が必要な場合は必ず同席し、話が良くない流れになったら、協力して断ち切った。
そうこうして、着々と準備は進んでいった。
「だんだん、私たちの仲がよろしくないと周りが思い始めているようですわ」
「ああ。反対に交易は順調に進んでいる。結婚はしなくても互いに欲しいものは手に入れられる状況だ」
「婚約破棄まで、あともう少しですね」
「だな。あとは……決定打を打ち込むだけ」
誰もいない場所で、二人は最後の計画を練っていた。
婚約破棄を認めなければならない状況。そこに持っていくための打ち合わせ。
「ローム様、先に謝っておきますわ」
「いや……こちらこそ」
「絶対に印象が悪くなってしまいますけれど、本当にごめんなさい」
「大丈夫だ。俺もアンさんに手荒なことをしてしまうから……すまない」
「気になさらないでください」
最後にそれだけ言葉を交わして二人は何事も無かったかのように分かれた。
あとは、互いの両親がいる前で、話した通りの作戦を行うだけ。
会食が行われるその時を二人は待ち望んでいた。
――そして、その瞬間がやってきた。
「どうしていつもいつも君はワガママばかり言うんだ!」
「ワガママ!? 私の主張は当然の権利ですわ!」
「ふざけるな!」
「きゃっ!? ワインを女性にかけるなんて……ありえませんわ!」
些細なことから発展した口論。当然、アンとロームが仕組んだ喧嘩で、作戦通りである。
「落ち着いて、二人とも」
「これから結婚をする男女がこんなことで喧嘩をしてどうする!」
「そうよ、失礼でしょうアン!」
「全く……」
オロオロするロームの母、喝を入れるロームの父とアンの母、呆れたような反応を見せるアンの父。
反応はそれぞれだが、アンとロームの喧嘩を止めようと仲裁に入ろうとした。
「こんなことではありませんわ! 私はずっと我慢していましたの!」
「俺だってそうだ!」
口喧嘩はますますヒートアップしていく。
「アンさんと結婚なんてありえない! 婚約破棄させてくれ!」
「それはこちらのセリフです!」
婚約破棄という言葉に慌てて反応したのは、ロームの父とアンの母だった。
「おい、ローム! 何を勝手なことを言っている!」
「アンもよ! 勝手なことを言わないでちょうだい!」
その声にロームとアンは叫ぶように返す。
「どうせ政略結婚の目的はもう達成されているだろう!? 俺を道具に使わないでくれ!」
「そうですわ! 婚約破棄を認めてくれないなら……これまで私が取り持ってきた交易も全て白紙に戻します!」
「俺だってそうだ! このまま結婚をさせるつもりなら……俺がアンと取り持った契約を全て破棄する!」
アンとロームは切り札を使った。これまでの準備は全てこれを使えるようにするための行動だったのである。
二人の両親はその言葉に目を見開いた。こう切り出されては婚約破棄を認めるしかない。
だが、目的さえ達成されるのなら結婚を諦めること結婚を諦めることなど容易だった。
こうして、アンとロームの計画は成功した。
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