17 / 17
17.三年後
しおりを挟む
王子は王となり、聖女ルミナは王妃となっていた。
フーガとサーシャを見つけることはできなかったが、二人はそのことに気がついてはいなかった。
フーガとサーシャは自分たちの死を偽装したからである。
バレないように脱ぎ捨てた服を用いて、名も無い身元不明の死体に着せて身代わりにしたのだ。
王子はそれを見つけ、悪女は死んだと判断した。ルミナは偽装を疑っていたものの、王子の判断に従った。
邪魔をされなければ問題は無い。どうせサーシャがこの国に戻ってくることは無い。ルミナの思惑は成功していたからだ。
二人は国民から厚い信頼を得た。素晴らしき指導者と称えられ、麗しき王と麗しき王妃と囁かれた。
そして、二人の間には可憐な王女が生まれていた。
一方、フーガとサーシャは慎ましく、だけれども幸せに暮らしていた。
小さな小さな村はいつしか栄えて一つの街になっていた。
街の住人達はフーガとサーシャの素性を知ることは無かった。知ろうと詮索することも無かった。
ただただ何も無い平凡で理想的な日々を二人は過ごしていた。
「……ねぇ」
「なんだ?」
「……助けてくれてありがとう。一緒に逃げてくれてありがとう」
「急にお礼なんてどうしたんだよ……」
「前に約束したでしょ?」
「え? ああ、うん……」
「これからも、よろしくね」
「ああ。こちらこそ」
青く、澄み切った空だった。木々の緑の葉が風で微かに揺れていた。
そんなのどかな日々の中で、そんな会話が緑と青の中に溶けていった。
フーガとサーシャを見つけることはできなかったが、二人はそのことに気がついてはいなかった。
フーガとサーシャは自分たちの死を偽装したからである。
バレないように脱ぎ捨てた服を用いて、名も無い身元不明の死体に着せて身代わりにしたのだ。
王子はそれを見つけ、悪女は死んだと判断した。ルミナは偽装を疑っていたものの、王子の判断に従った。
邪魔をされなければ問題は無い。どうせサーシャがこの国に戻ってくることは無い。ルミナの思惑は成功していたからだ。
二人は国民から厚い信頼を得た。素晴らしき指導者と称えられ、麗しき王と麗しき王妃と囁かれた。
そして、二人の間には可憐な王女が生まれていた。
一方、フーガとサーシャは慎ましく、だけれども幸せに暮らしていた。
小さな小さな村はいつしか栄えて一つの街になっていた。
街の住人達はフーガとサーシャの素性を知ることは無かった。知ろうと詮索することも無かった。
ただただ何も無い平凡で理想的な日々を二人は過ごしていた。
「……ねぇ」
「なんだ?」
「……助けてくれてありがとう。一緒に逃げてくれてありがとう」
「急にお礼なんてどうしたんだよ……」
「前に約束したでしょ?」
「え? ああ、うん……」
「これからも、よろしくね」
「ああ。こちらこそ」
青く、澄み切った空だった。木々の緑の葉が風で微かに揺れていた。
そんなのどかな日々の中で、そんな会話が緑と青の中に溶けていった。
0
お気に入りに追加
286
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(14件)
あなたにおすすめの小説
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
聖女にはなれませんよ? だってその女は性女ですから
真理亜
恋愛
聖女アリアは婚約者である第2王子のラルフから偽聖女と罵倒され、婚約破棄を宣告される。代わりに聖女見習いであるイザベラと婚約し、彼女を聖女にすると宣言するが、イザベラには秘密があった。それは...
【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
【完結】シェアされがちな伯爵令嬢は今日も溜息を漏らす
皐月 誘
恋愛
クリーヴス伯爵家には愛くるしい双子の姉妹が居た。
『双子の天使』と称される姉のサラサと、妹のテレサ。
2人は誰から見ても仲の良い姉妹だったのだが、姉のサラサの婚約破棄騒動を発端に周囲の状況が変わり始める…。
------------------------------------
2020/6/25 本編完結致しました。
今後は番外編を更新していきますので、お時間ありましたら、是非お読み下さい。
そして、更にお時間が許しましたら、感想など頂けると、励みと勉強になります。
どうぞ、よろしくお願いします。
わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
捜索ですね。
変換ミスです。
ご指摘ありがとうございます。
修正致しました。
疑問へのお答え及び貴重なご意見ありがとうございます。
大変参考になります。
被害者が主人公として進み、加害者側が何らかの罰を受けるのが、いわゆるざまぁというわけですね。
悪意があるかどうかというより、結果として被害が出た場合に、加害者が罰を受ければざまぁになると。
そうなると、双方とも相手を加害者で自分を被害者だと思っている場合は、主人公をどちらに置くかで変わってくることになりますね。
主人公視点=読者の目線。だから、読者目線の悪役を成敗するのがざまぁという形になるわけですね。
大体分かってきました。ありがとうございます。
シードラ様
ご意見ありがとうございます。
確かにいつかはボロが出そうですね。その結果、瓦解することもありえそうです。
ただ、王子はルミナにベタ惚れなので、恋しているうちは庇ってしまいそうです。
基本的にルミナは表に出るのは王子に任せているので民衆にはバレにくいかなと考えていました。
サーシャのことがあってからしばらくはルミナも気を払うでしょうし、国民達も同情や信頼があるので急には瓦解しにくいかなという感じです。
とはいえ、だんだん近くにいる一部の人が気づいていくだろうなとは思っています。
しかし、身分が下だったりすると逆らいにくいかなと思っていました。
数が多く集まれば、反乱を起こせるのですが、その時が来るまでは水面下で事を進めるでしょう。
なので、繁栄・維持から衰退までが緩やかなカーブを描く感じですかね。
10年20年くらいは繁栄するものの、だんだん下降していき覆されるというのが、今持つ1番近いイメージです。
先程の返答では、最終話から5年や10年くらいの期間を考えていました。考えていた描写はそこまでだったので……。