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別れ
十八話
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「でもっ……」
引き下がらない私の言葉を遮って、零は口を開く。表情は相変わらず、微笑みを保ったままだ。
「俺がしたくてやった事だから。ね?」
未だ泣き止まない私を宥めるように、柔らかな声で。そうだ、あの時も零は大丈夫だから、と。今と同じように優しい声で、愚図る私を送り出したんだ。
「……っ、零……」
「全くもう、桜空は今でも泣き虫なんだから」
呆れたように笑って見せる零の身体はもう後ろにある街の景色が透けて見える程、薄くなっていた。溢れている光の粒も、さっきとは比べ物にならないくらい多い。周りの光が増せば、それに比例して零の存在が希薄になっていく。
伸びてきたその手は、空を切る。行き場を失った片手は中途半端な所で止まって、どうすべきか悩んでいるようにも見える。
触れないもどかしさを誤魔化すためか、零はまた、笑った。困っている時も、苦しい時も、どんな時でも零は笑うのだ。宙に投げ出されたままだった手は、力なく降ろされた。
「最期、くらいはさ……笑って見送ってよ……」
そんな零が、ぽつりと弱々しく呟いた。その声は震えていて、目は潤んでいた。笑顔を繕おうとしてもいい上手くいかないのか、その顔は歪んでいた。
「二度も泣き顔でさよならなんてしたくないよ……」
そういう零の目からは今にも雫が落ちてしまいそうだ。だが、唇は綺麗に弧を描いている。あくまでも、笑顔でサヨナラを告げようとしてくれているのだ。
「……うん……っ……」
無理やり目を細めて口角を上げて、笑顔の形を作る。
零は泣いていたが、満足げでとても嬉しそうだった。
私はその姿を忘れたくなくて、目に焼き付けておきたくて……ぼやけた視界でも目を逸らすことはしなかった。
数十秒後。そこに、零の姿はなかった。代わりに星空に向かって昇っていく沢山の淡い光の粒だけが行く先を示していた。
引き下がらない私の言葉を遮って、零は口を開く。表情は相変わらず、微笑みを保ったままだ。
「俺がしたくてやった事だから。ね?」
未だ泣き止まない私を宥めるように、柔らかな声で。そうだ、あの時も零は大丈夫だから、と。今と同じように優しい声で、愚図る私を送り出したんだ。
「……っ、零……」
「全くもう、桜空は今でも泣き虫なんだから」
呆れたように笑って見せる零の身体はもう後ろにある街の景色が透けて見える程、薄くなっていた。溢れている光の粒も、さっきとは比べ物にならないくらい多い。周りの光が増せば、それに比例して零の存在が希薄になっていく。
伸びてきたその手は、空を切る。行き場を失った片手は中途半端な所で止まって、どうすべきか悩んでいるようにも見える。
触れないもどかしさを誤魔化すためか、零はまた、笑った。困っている時も、苦しい時も、どんな時でも零は笑うのだ。宙に投げ出されたままだった手は、力なく降ろされた。
「最期、くらいはさ……笑って見送ってよ……」
そんな零が、ぽつりと弱々しく呟いた。その声は震えていて、目は潤んでいた。笑顔を繕おうとしてもいい上手くいかないのか、その顔は歪んでいた。
「二度も泣き顔でさよならなんてしたくないよ……」
そういう零の目からは今にも雫が落ちてしまいそうだ。だが、唇は綺麗に弧を描いている。あくまでも、笑顔でサヨナラを告げようとしてくれているのだ。
「……うん……っ……」
無理やり目を細めて口角を上げて、笑顔の形を作る。
零は泣いていたが、満足げでとても嬉しそうだった。
私はその姿を忘れたくなくて、目に焼き付けておきたくて……ぼやけた視界でも目を逸らすことはしなかった。
数十秒後。そこに、零の姿はなかった。代わりに星空に向かって昇っていく沢山の淡い光の粒だけが行く先を示していた。
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