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番外編

様子見2

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 仲良さげに談笑するへクセと女性。しばらくおすすめの商品を聞いたり世間話をしたりしていた。


「あの……へクセさんって、彼女とか……います?」


 ふいに女性が言った。わずかに頬が赤らんでいるのが見える。

 この子……店に入った時からもしかしてとは思っていたけれど、へクセのことが好きなのか?


「彼女? いないよ」
「そっそうなんですね! モテそうなのに、意外です」
「そうかなぁ、自分ではあまり分からないけど」
「だってイケメンじゃないですか! 大人っぽくて優しいし……どことなくミステリアスで。絶対モテますよ」
「あはは、褒めても何もないよ」


 べた褒めだな、あの子。確かに、ここから見ている感じだとそう思うのも無理ないが……本人に直接言うとは。

 へクセはへクセでのらりくらりと、何も気にしていない様子だ。察しがいいから恋心持たれていたら、分かりそうなものだけれど。

 分かっていて知らないフリしているのか、本当に気がついていないのか。そういえば、浮いた話聞いたことないな。興味無いのか?


「……好きな人いたりします?」
「いないよ? なんで?」
「いや、モテるけどその人のために断ってるのかなぁって……」
「あはは。残念、はずれ」


 やはり、あの子へクセのこと好きだろう。そうでなかったら、彼女の有無や好きな人の有無を聞いたりしない。

 ただの客と店主がそんな話するか? しないだろう。絶対へクセに気がある。ましてや、いないと聞いて嬉しそうにするのだから。絶対好きだろう。


「あの、それなら……」


 女性が躊躇いがちに何かを言いかけた時、再び扉が開いた。

 さぁっと外のぬるい風が店内を駆け抜ける。


「こっ、こんにちは!」


 上擦った少女のような高い声が聞こえた。声の方を見ると、長い黒髪の大人しそうな女性が立っていた。

 年齢は桃色髪の女性と同じくらいだろう。

 服装は黒のブラウスと青いスカート。合わせ自体は似ているものの、黒と青を基調にしているせいか、印象がかなり違う。


「……こんにちは」


 微かに目を見開いて、驚いたような様子だった。そのままの表情で、一瞬間が空いたあと、へクセは挨拶を返した。

 桃色の女性は気まずそうな、居心地の悪そうな顔をしている。

 黒髪の女性は髪で影になって、表情は分からない。

 まさか二人目の客が来るとは。しかも、どちらも女性。


「……一ヶ月ぶりくらいだね。最近来てなかったから、また来てくれて嬉しいよ」


 長めの沈黙のあと、気まずかったのかへクセが黒髪の女性に優しく話しかけた。柔らかく微笑んでいる。


「さ、最近は忙しくて。ひ、久しぶりにソルシエール様に会えて……あっ、ソルシエール様のお店に来れて良かったです」


 もじもじしながら、しどろもどろに答えた。……もしかして、この子も?
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