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番外編

ライルへのプレゼント5

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「あの、ライル様」


 ライルの誕生日当日、パーティやらなんやらが終わり、ようやく二人きりになれたところ。

 プレゼントを渡すためにおずおずとライルへ話しかけた。


「パーティで何回も言いましたが……誕生日おめでとうございます」
「うむ、ありがとう」
「……これを」


 ブローチが入っている小箱を差し出す。

 いざプレゼントを渡すとなると妙に緊張してしまう。喜んでくれるだろうか。ドキドキして落ち着かない。


「私からのプレゼントですわ」
「おお! ありがとう。嬉しいぞ!」


 にこにこと嬉しそうに小箱が受け取られる。


「ここで開けてもいいか?」
「ええ」


 そわそわとおやつが待ちきれない猫のような様子のライル。

 開けても良いと伝えると、丁寧に包みを解いた。ライルが小箱を開ける。


「……ブローチか! おお、美しい装飾だな」


 中身を見て目がキラキラと輝いた。良かった、喜んでくれているらしい。


「鈴蘭がモチーフなのか」
「ええ」
「鈴蘭というと、あの散歩の日を思い出すなぁ」
「ふふ、私もそれを見て同じことを思いました」
「そうなのか? なんだか嬉しいな」


 同じものを見て同じことを考える。それだけのことが、少し嬉しい。私とライルの気持ちが通じているような気がするからだろうか。


「それにしてもよくできているな。作った者のセンスが良いのだろう」
「……それ、作ったのへクセですよ」
「ソルシエールが!?」
「ついでに危険から守る魔女のおまじないもかけておいたとのことでした」
「えっ!?」


 目をまんまるにして驚いている。驚かない方が無理だろう。素人が作る出来ではない。高貴な身分のはずのライルでさえ気がつかなかったくらいのものを作れるとは、本当にへクセは底が知れない。


「まじない……まぁ、ソルシエールの力は本物だからな」
「ええ。是非、御守りとして肌身離さず持っていてくださいね」
「もちろんだ。カレンからもらったものだからな。大事にするぞ」


 ライルは微笑んで、私の頬に軽くキスをした。

 急にこんなことをされると嬉しいが恥ずかしい。猫の姿の時なら可愛いだけなのだけれど。

 顔が熱い。多分、今の私の顔は赤くなっているのだろう。


「……カレン、改めて素敵なものをありがとう」
「いえ、喜んでくれてなによりです」


 喜んでくれたのなら本当に良かった。誕生日は特別な日だから。一年で一番幸福な日であってほしい。
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