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番外編
ライルへのプレゼント
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「へクセー、ちょっといいかしら?」
扉を開けて、店内のどこかにいるであろうへクセを呼ぶ。
一瞬の間ののち、少し離れたところから声が返ってきた。
「あ、久しぶりー、どうしたの?」
ひょこっと物陰から青い髪を揺らして現れた。相変わらずのんびりした口調だ。
「今日はちょっと買い物に来たの」
「買い物?」
「ええ。ライル様へのプレゼントを探しに」
「プレゼント?」
へクセは目を丸くした。恐らく、ライルの誕生日が近いことを知らないのだろう。一応、ライルは王子で国民はだいたい知っているのだが……まぁ、へクセだし。
「ライル様の誕生日のためのね」
「ああ、なるほど」
納得したような声を出して頷いていた。本当に知らなかったのか……。変なところで抜けている。
「でもなんで僕の店に? ここ、庶民でも買えるようなものしかないけど……」
「ライル様、珍しいものが好きらしいの」
「だからアンティークとか取り扱ってるここに来たんだ」
「そういうことよ」
他にもライルが気に入りそうなものが売っているところやオーダーメイドで作らせても良かったのだが、一度へクセの店に来ることにした。
前にもちらっと見たが、こうやってまじまじと見ると面白いものや不思議なものがたくさん置いてある。アンティークショップと言っていたけど、オカルト風のものもあるし普通の雑貨もある。
どっちかといえば何でも屋という方が近い気がする。本当、なんでもあるし。
「うーん……何がいいかしら」
「どういう系渡すか決めてるの?」
「いえ。そこまでは……」
プレゼントというのは毎度悩むものだ。相手との関係性や性格、好みなどを考えて選ばなければならない。身分が高ければそれに応じた値段や質のものを渡さなければならないこともある。
「……なにこれ?」
目を止めたのは、一つのアクセサリー。薄い青と濃い青が混ざりあってグラデーションが生まれている。海をそのまま閉じ込めた感じだ。
綺麗で目を惹かれるが、宝石ではなさそうだ。商品名は魔女の涙。
「それが気になる?」
「え、ええ。ねぇ、魔女の涙って……」
「そのまんまの意味だよー」
「それって……」
「本物の魔女の涙ってこと」
本物の魔女の涙ということだろうか。前なら信じなかった。ただ、売るための文句くらいにしか考えなかっただろう。だが、へクセが魔女であると知っている以上、そういった品があってもおかしくない。
「一応、これの逸話的なのあるけど聞く?」
「ええ。聞きたいわ」
「おっけー。あ、言っておくけど別にこの話僕に関係ないからね。ぜんっぜん知らない魔女の話だよ」
そう前置きして、へクセは話し始めた。
扉を開けて、店内のどこかにいるであろうへクセを呼ぶ。
一瞬の間ののち、少し離れたところから声が返ってきた。
「あ、久しぶりー、どうしたの?」
ひょこっと物陰から青い髪を揺らして現れた。相変わらずのんびりした口調だ。
「今日はちょっと買い物に来たの」
「買い物?」
「ええ。ライル様へのプレゼントを探しに」
「プレゼント?」
へクセは目を丸くした。恐らく、ライルの誕生日が近いことを知らないのだろう。一応、ライルは王子で国民はだいたい知っているのだが……まぁ、へクセだし。
「ライル様の誕生日のためのね」
「ああ、なるほど」
納得したような声を出して頷いていた。本当に知らなかったのか……。変なところで抜けている。
「でもなんで僕の店に? ここ、庶民でも買えるようなものしかないけど……」
「ライル様、珍しいものが好きらしいの」
「だからアンティークとか取り扱ってるここに来たんだ」
「そういうことよ」
他にもライルが気に入りそうなものが売っているところやオーダーメイドで作らせても良かったのだが、一度へクセの店に来ることにした。
前にもちらっと見たが、こうやってまじまじと見ると面白いものや不思議なものがたくさん置いてある。アンティークショップと言っていたけど、オカルト風のものもあるし普通の雑貨もある。
どっちかといえば何でも屋という方が近い気がする。本当、なんでもあるし。
「うーん……何がいいかしら」
「どういう系渡すか決めてるの?」
「いえ。そこまでは……」
プレゼントというのは毎度悩むものだ。相手との関係性や性格、好みなどを考えて選ばなければならない。身分が高ければそれに応じた値段や質のものを渡さなければならないこともある。
「……なにこれ?」
目を止めたのは、一つのアクセサリー。薄い青と濃い青が混ざりあってグラデーションが生まれている。海をそのまま閉じ込めた感じだ。
綺麗で目を惹かれるが、宝石ではなさそうだ。商品名は魔女の涙。
「それが気になる?」
「え、ええ。ねぇ、魔女の涙って……」
「そのまんまの意味だよー」
「それって……」
「本物の魔女の涙ってこと」
本物の魔女の涙ということだろうか。前なら信じなかった。ただ、売るための文句くらいにしか考えなかっただろう。だが、へクセが魔女であると知っている以上、そういった品があってもおかしくない。
「一応、これの逸話的なのあるけど聞く?」
「ええ。聞きたいわ」
「おっけー。あ、言っておくけど別にこの話僕に関係ないからね。ぜんっぜん知らない魔女の話だよ」
そう前置きして、へクセは話し始めた。
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