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49.猫になった婚約者と知らせ

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「ライル様! 見てくださいこれ!」


 へクセから来た手紙をライルに見せる。手紙には達筆な字で、呪いが解けなかったことの原因が分かったかもしれないという旨が記されていた。


「む!?」


 手紙を見て、驚いたように目を丸くする。良い知らせに目を輝かせていた。


「今日は店にいるようですね」


 手紙の最後に店にいる日と話のできる時間帯が書き記してあった。


「へクセに会いに行きましょうか?」
「もちろんだ!」


 落ち着きのないライルをなだめつつ、街へ行く準備をする。ライルは準備する必要がない分、待っている時間が退屈なようだ。

 私の周りをウロウロと歩き回る。小さいから足で蹴ってしまいそうで心配だ。


「……お待たせしました」
「できたか! 行くぞ!」


 飛びついてきたライルを抱き抱えたまま、街を歩いてへクセのアンティークショップに向かった。


「あ、猫ちゃんにカレン!」


 アンティークショップに着き、扉を開けるとすぐにへクセが顔を出した。

 店の中は相変わらず人気がない。


「おい! 呪いが解けなかった原因が分かったって本当だろうな!?」


 腕の中にいたライルが、降りてへクセに飛びつく。


「わわっ!? ちょっと、落ち着いてよ猫ちゃん」


 へクセは突然飛びつかれて驚いていたものの、難なくキャッチしていた。抱きかかえたはいいものの、黒い服に茶色い毛がたくさんついてしまっている。


「もー、猫ちゃんったら……カレン、奥に来て」


 ため息をついたあと、へクセは私を奥に通した。この前へクセと話した店の奥のスペースだ。

 何か話をする時はここですることになっているのだろうか。


「じゃあお茶持ってくるね~」


 ライルを床に降ろし、ひらひらと手を振って去っていった。

 食器同士の当たる音が聞こえる。

 その後すぐに、紅茶二つとライル用のミルクを持って帰ってきた。


「ありがとうございます、へクセ」
「どういたしまして~」
「ありがたくいただくぞ」
「どうぞ~」


 カップに入っているお茶を飲む。へクセの入れる紅茶は美味しい。茶葉も安いもので特別なことは何もしていないらしいが、味が良い。

 目の前で同じようにへクセはお茶を飲んでいる。

 黙っていれば顔は良いのに。髪はサラサラで、青い瞳は綺麗で。そこはかとなく大人らしい色気と儚さもある。細身でスタイルもいい。


「ん? なあにカレン」
「いえ……」


 声が幼いからなのか、言動が子供っぽいからなのか。話すと印象が百八十度変わる。

 これも本音が見えないとライルに言わせた要因の一つなのだろうか。黙っている時は物憂げな表情をしている割に、話すと能天気に見える。

 コロコロ変わる。表情も雰囲気も。


「あっ、呪いの話?」
「そうだぞ、ソルシエール。俺はミルクを飲みに来たのではなくその話を聞きに来たのだ!」
「……と言いながら全部飲んでいますけれど」
「あはは、美味しかったんだね~」


 それじゃあそろそろ本題に移ろうか、とへクセは前置きをした。

 またへクセの雰囲気が変わった。一瞬、辺りに静けさが訪れた。

 
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