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43.猫になった婚約者とへクセと契約

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「あっ、僕が魔女ってことは誰にも言わないでね」


 一旦話が終わり、お茶を飲んでゆっくりしていたところでへクセが思い出したように言った。


「もちろん言いませんわ」
「俺も言わないぞ!」


 私もライルもへクセが魔女であることを明かすつもりは無いことを伝えた。

 魔女であることが知れると、色々と面倒なのだろう。魔女にも規約や制限があるようだし、他にもその力を狙う人に悪用される可能性もある。


「本当!? じゃあ契約してくれる?」
「契約するの!?」
「契約だと!?」


 私とライルの声が重なった。


「え……だって口約束だと効力が……あっ二人を信じてないわけじゃないよ! ただ魔女と明かす時は、絶対契約するようにしてて……」


 へクセは慌てた様子で早口で説明した。

 確かに、へクセからすれば重大な秘密なわけだ。最も効力の強いと言っていた契約で縛っておかないと、いくら友人とはいえ不安だろう。

 それに、ライルとは今日知り合ったばかりだ。いつの間にか仲良くなっていたけれど、へクセが完全に信用するのは難しい。

 そもそも、ライルに呪いをかけたのはへクセだ。悪い方に考えれば、腹いせに魔女であると明かすなんていうこともある。

 念には念を、ということだろう。調査をしていてもへクセの情報がほとんど出なかったこともある。こういったことには用心深く慎重に動くよう気をつけているのだろう。


「契約しますわ」
「俺もするぞ」


 別にへクセの秘密を握る必要は無いため、二つ返事で了承する。ライルも同じように応じていた。


「良かった! じゃあ契約する内容を今から言うね!」
「ええ」
「うむ」


 頷いて同意する。

 へクセの雰囲気が一変した。ふわふわと和むような空気感から、糸が張りつめたような厳格なものへと変化した。

 へクセの青い目が怪しく光り、私たちを見据える。


「猫ちゃん……つまりライル=ブローナーとカレン=ダーネルは、僕へクセ=ソルシエールが魔女であること、及びそれに関することの一切を他言しないことを誓う。これを破った際、魔女についての記憶全てを失う。いいね?」


 普段とは違う、低くて頭に響くような声だった。

 反射的に頷いていた。


「反対に……僕へクセ=ソルシエールは君たち二人、カレン=ダーネルとライル=ブローナーに対して、魔女として呪いを解くまで協力すること。また、ライル=ブローナーの正体を他言しないことも誓う。これを破った際、僕は寿命の三分の一を失う」


 へクセが言い終わると、場の空気が元の和やかなものに戻った。


「はい、これで契約完了!」


 にこっと笑うへクセに、さっきの面影はまるでなかった。のんびりと柔らかいいつものへクセだった。

 ライルはへクセの変わりようが怖かったのか、身を縮めて微かに震えていた。
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