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41.猫になった婚約者とお金

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「ともかく、依頼人については分かりましたわ」


 ライルを猫にした相手もその理由も判明した。

 探していた魔女もへクセだと分かった。


「……それで、ライル様のことなんですけれど」
「猫ちゃん?」
「俺を人間に戻してくれ!」
「……だそうですわ」


 ライルがへクセに飛びついた。今度はキャッチして、バランスを崩すことは無かった。

 ライルをわしゃわしゃと撫でながら、へクセは考える素振りを見せる。


「んー……それはいいけど……本来ならもう呪いは解けているはずなんだよねー」
「な、なに!?」
「どういうことですの?」
「僕さ、猫ちゃんに呪いをかけた時、自動的に三日で元に戻るようにしておいたはずなんだよね……」


 へクセは三日で解けるように呪いをかけていた?

 だが、ライルは一ヶ月経った今も猫のままだ。呪いは解けていないのは明白。


「……俺は猫のままだぞ?」
「だよねぇ……おかしいなぁ」
「お前が呪いをかけたんだろう!?」
「そうなんだけどさぁ……」


 へクセ自身も不可解な様子だ。ライルを触り続けながら、んー? と言ったりうー? と言ったりしている。


「そもそも、どうして三日なんですの?」
「だって……流石に王子に呪いをかけるのはやばいし……三日くらいなら悪い夢を見たで済むかなぁって……」
「ごまかそうとしてたのか!?」


 王子に呪いをかけるのはやばいと思っている割に、その当の本人に明かしているがいいのだろうか。

 持ち上げてみたりその辺に寝っ転がさせたりもしている。

 もしかして、へクセはあれで呪いを確認でもしているのだろうか。

 最初来た時もライルを撫で回していたし、話の内容を当てたのも、ライルを触って正体に気づいていたから?

 魔女が呪いをかけた相手に触れると、魔女にしか分からない何かが分かる……ということなのだろうか。


「やっぱり失敗した様子はないなぁ……僕がどこか間違えたわけでもないし……」


 ぼそぼそとなにやら呟いている。


「なぁ、俺に呪いをかけるのがやばいと思っているくせになぜその依頼を引き受けたんだ? 断ればいいだろう」
「だって……お金いっぱいくれるって言うから……」


 ライルをベタベタ触り続けながら言う。声色が少しだけ申し訳なさそうだ。

 怒る気もなくなったのか、ライルは大人しくへクセに触られ続け、特に口も挟まなかった。


「お金に困っていらしたの?」
「困ってはないけど……すっごい大金だったから……あと土地もくれるって言われて……つい」


 生活には困ってはいなくても、へクセは決して裕福とは言えない。

 つい目が眩んでしまうのも仕方ないといえば仕方ない。


「お前って奴は……」


 ため息混じりにライルが呟いた。その声は怒ってはいなかったが、呆れているようだった。
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