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15.猫になった婚約者と爪切り
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「ライル様、爪切りをしましょう」
室内を歩いていたライルに声をかける。さっきから、ライルが歩く度に爪が床に当たる音がする。絨毯を引いてあるところではたまに引っかかっている。多分、爪が伸びている。
「爪切り?」
「ええ。伸びていらっしゃるでしょう?」
「爪研ぎは毎日してるのだが……それでは不十分なのか?」
「爪研ぎは爪を鋭くするためですから。他にも色々理由はあるらしいですが」
「そうなのか……」
「爪切りをしておくと伸びた爪で怪我をしないよう予防になるのです」
「なるほど。なら頼む」
「ええ、分かりました」
こちらへ来てください、とライルを呼ぶ。とことこと大人しく私の前まで歩いてきた。
「失礼しますね」
「うわぁ!?」
ひょいと抱えて抱き上げる。ライルは急に持ち上げられて驚いたようだ。尻尾とぼふっと逆だっている。
「申し訳ありません、驚かせてしまいましたか?」
「う、うむ。人に持ち上げられるなど経験がないからな……」
「きちんとお伝えすべきでしたね」
野良猫や人と接する経験の少ない猫は抱かれることを嫌がる子が多い。ライルは前に買い物に行った時、平気そうだから油断してしまった。
「だがまぁ、悪くないぞ。だから……気にしないでいい」
私を見上げながらそう言ってくださった。後ろから抱える形で膝に乗せて、落ち着かせるために何度か頭を撫でた。ライルは喉をゴロゴロと鳴らしている。
「爪切り、してもよろしいですか?」
猫用の爪切りを見せる。急に切り始めたらまた驚かせてしまうだろう。爪切りは嫌がる猫も多いし、できるだけ安心した状態で行いたい。
「大丈夫だ。やってくれ」
「はい。では、前足の右からやりますね」
「うむ」
肉球を押して爪を出す。尖った爪が飛び出してきた。ライルが痛がらないように気をつけながら、爪の先を二ミリほど切る。
バチンと音がして、一本の爪が切れた。
「……続けても大丈夫ですか? 痛くありませんでした?」
「ああ、大丈夫だ」
嫌がってないこと、痛がってないことを確認してほかの爪も切る。やはり多少は怖いらしい。ライルは爪を切っている間ずっと、自分の爪と爪切りを見つめていた。
「あと少しですよ、大丈夫ですか?」
残るは後ろ足の左側だけ。もう一度大丈夫か確認する。最初は平気でも、途中から嫌がる子も多いからだ。
「大丈夫だ。このまま最後の足もやってくれ」
「分かりました」
最後の足の爪を切る。バチン、バチンと音が続いて全ての爪を切り終えた。
「お疲れ様でした」
頭を二、三回撫でる。ライルは、うむ。お前もお疲れ、と答えた。
「いい子にできたご褒美に、あのおやつをあげますね」
「おやつ! あれか!?」
「ええ」
この前喜んでいた液状のおやつを手に取り見せる。緑色の目がきらきらと輝いていた。可愛い。
嫌なことをやったあとはご褒美をあげる。これが鉄則だ。
早く早く、と待ちきれない様子のライルに包みの封を切って渡す。心底美味しそうに食べていた。
私は可愛いなぁと思いながら、その様子を眺めていた。
室内を歩いていたライルに声をかける。さっきから、ライルが歩く度に爪が床に当たる音がする。絨毯を引いてあるところではたまに引っかかっている。多分、爪が伸びている。
「爪切り?」
「ええ。伸びていらっしゃるでしょう?」
「爪研ぎは毎日してるのだが……それでは不十分なのか?」
「爪研ぎは爪を鋭くするためですから。他にも色々理由はあるらしいですが」
「そうなのか……」
「爪切りをしておくと伸びた爪で怪我をしないよう予防になるのです」
「なるほど。なら頼む」
「ええ、分かりました」
こちらへ来てください、とライルを呼ぶ。とことこと大人しく私の前まで歩いてきた。
「失礼しますね」
「うわぁ!?」
ひょいと抱えて抱き上げる。ライルは急に持ち上げられて驚いたようだ。尻尾とぼふっと逆だっている。
「申し訳ありません、驚かせてしまいましたか?」
「う、うむ。人に持ち上げられるなど経験がないからな……」
「きちんとお伝えすべきでしたね」
野良猫や人と接する経験の少ない猫は抱かれることを嫌がる子が多い。ライルは前に買い物に行った時、平気そうだから油断してしまった。
「だがまぁ、悪くないぞ。だから……気にしないでいい」
私を見上げながらそう言ってくださった。後ろから抱える形で膝に乗せて、落ち着かせるために何度か頭を撫でた。ライルは喉をゴロゴロと鳴らしている。
「爪切り、してもよろしいですか?」
猫用の爪切りを見せる。急に切り始めたらまた驚かせてしまうだろう。爪切りは嫌がる猫も多いし、できるだけ安心した状態で行いたい。
「大丈夫だ。やってくれ」
「はい。では、前足の右からやりますね」
「うむ」
肉球を押して爪を出す。尖った爪が飛び出してきた。ライルが痛がらないように気をつけながら、爪の先を二ミリほど切る。
バチンと音がして、一本の爪が切れた。
「……続けても大丈夫ですか? 痛くありませんでした?」
「ああ、大丈夫だ」
嫌がってないこと、痛がってないことを確認してほかの爪も切る。やはり多少は怖いらしい。ライルは爪を切っている間ずっと、自分の爪と爪切りを見つめていた。
「あと少しですよ、大丈夫ですか?」
残るは後ろ足の左側だけ。もう一度大丈夫か確認する。最初は平気でも、途中から嫌がる子も多いからだ。
「大丈夫だ。このまま最後の足もやってくれ」
「分かりました」
最後の足の爪を切る。バチン、バチンと音が続いて全ての爪を切り終えた。
「お疲れ様でした」
頭を二、三回撫でる。ライルは、うむ。お前もお疲れ、と答えた。
「いい子にできたご褒美に、あのおやつをあげますね」
「おやつ! あれか!?」
「ええ」
この前喜んでいた液状のおやつを手に取り見せる。緑色の目がきらきらと輝いていた。可愛い。
嫌なことをやったあとはご褒美をあげる。これが鉄則だ。
早く早く、と待ちきれない様子のライルに包みの封を切って渡す。心底美味しそうに食べていた。
私は可愛いなぁと思いながら、その様子を眺めていた。
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