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8.猫になった婚約者と魔女2

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「ところで、なぜその魔女に猫へ変えられてしまったのですか?」
「えっ、あ、ああ……それは……」


 ライルは口ごもる。口を閉ざしたまま、毛繕いを始めた。気まずい時、暇な時、考え事をしている時などは毛繕いをする癖がある。それが、猫の習性なのかライルの癖なのかは分からない。

 何回かザリザリとして気が済んだのか、毛繕いを止めた。


「……誰かに頼まれて呪いをかけに来たらしい」
「頼まれた?」
「ああ。俺を恨んでいる奴からの依頼だとさ」


 確かに、ライルは恨まれやすい性格だ。嫌味な男だったし、現に私も嫌っていた。しかし、わざわざ呪いをかけるとはかなりの嫌われようだ。


「一体……誰の仕業でしょうか」


 思わず声に出ていた。


「俺が知るわけないだろう! 知っていたら問い詰めている」


 ライルはシャッーと声を荒らげる。


「猫の姿では無理だと思いますが」
「無理でもなんでも問い詰める!」


 依頼人を教えるわけがない。だから、当然ライルが知る余地はない。


「でも、なぜ猫なんでしょうね」
「何がだ?」
「呪いならもっとカエルとかトカゲとか……醜かったりあまり好かれなかったりするものに変えません?」
「む、確かにそうだな。猫だと可愛がってくれる人も多いし……」
「でしょう? 私が呪いをかけるなら虫とかにしますよ」
「虫!? 虫は嫌だな……」


 わざわざ呪いをかけるのを依頼するほど嫌いなのに、あえて猫。そもそも、依頼人が指定したのではなく、魔女の好みや情けだったのかもしれないが。


「依頼人も気になりますが……それより魔女ですね」
「ああ、会わないと呪いが解けん」
「魔女を探して見つけ出す。これが、当面の目標ですね」
「そういうことになるな」


 ひとまず魔女に会うことが必要だ。呪いを解いてもらえるかどうかは知らないが、会わなければ始まらない。


「ですが、ライル様」
「なんだ?」
「私……あなたのためにそこまでする義理はありませんわ」
「なっ!? 見捨てるのか!?」


 元々、私はライルに良い感情を抱いていない。猫が好きだから、猫姿のライルの世話をしているだけ。魔女の話も、話自体を信じてもライルを信じているわけではない。

 婚約したのだって、親の意向。単なる政略結婚目的。ライルは好きではない。嫌味ばかりだし、最低な性格だと思っていた。猫だから生意気な物言いも可愛げがあるが、人間だったら心底腹が立つ。私としては、このまま猫でいてもらいたいくらいだ。
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