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4.猫になった婚約者とキャットハウス

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「ライル様、キャットハウスはどれがよろしいですか?」
「キャットハウス?」
「ええ。昨日は床で寝て頂きましたが、流石にいつまでもそうはいかないので」


 昨日は突然の出来事だったため、事情を把握し、ひとまずご飯を調達しお出しした。急ぎだったため、用意がなく床で寝て頂いたのだ。

 一応、ベッドをどうぞと勧めたのだが、それは断られた。女性を差し置いてベッドを陣取るのも、猫の姿とはいえ共に寝るのもお断りだと言われた。

 嫌味な男だと思っていたが、意外と良識があるのかもしれない。もしくは、猫になって頼る相手が私しかいないから、気が弱くなっている……とか?


「キャットハウスはベッドにもなりますし、身が隠れるので寛げると思いますよ」
「ふむ。それは良いな」
「なにかご希望はございますか?」
「ふわふわで寝心地がいいものが良いな……あとは、落ち着けるものがいい」
「分かりましたわ。適当に見繕って来ます」


 ふわふわで寝心地が良く、落ち着けるものか。できるだけライルが使っていたものと似たものが良いかと思ったが、普段からいいものを使っているのだろうな。


「ああ、ついでに爪切りや爪研ぎ用の家具も調達しようと思うのですが、そちらはご希望はございますか?」
「ん? そんなものまで必要なのか?」
「そうですね」
「……よく分からんから適当に選んでくれ」
「分かりました」


 使用人に行かせるわけにはいかないので私自らが行くことにしよう。この国はそれなりに治安も良いので、事件に巻き込まれる危険もあまりない。そもそも、私以外に有力な令嬢はこの辺りでは多くいる。大小色んな国が密集しているからだ。わざわざ私を狙う輩は少ない。それに、念の為、パッと見では令嬢とは分からない格好に着替えた。


「それでは、行ってまいります」
「お前が行くのか?」
「はい。そのつもりです」
「……やっぱり俺も行く。連れてけ」
「はい?」
「いいだろう? どうせ俺のを買うなら俺が選んだ方が良い」
「はぁ……分かりました」


 ライルを連れて、買い物に行くことになった。やはり、自分のものにはこだわりがあるのだろうか。
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