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2.猫になった婚約者と同居
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「これで信じてくれただろう、カレン」
「ええ……まぁ、半信半疑ですが」
説明を終えたライルは、毛繕いを始めた。仕草も猫になってしまっているらしい。茶色い前足を、ザリザリと舐めている。その様をじっと見ていると、ライルがハッとした様子で毛繕いを止めた。
「ええい! じっと見るんじゃない!」
「申し訳ありません」
謝罪の言葉を述べる。心から悪いとは思ってはいない。形式だけだ。見られたくないのなら、ここで毛繕いをしなければ良いのに。
「ともかく、カレンに信じて貰わないわけには俺はどうすることもできん」
「私じゃなくとも、貴方のお父様やお母様に伝えれば良いのではなくって?」
「そんなものは言われなくとも試したさ! でもダメだった」
ライルは猫の姿で大きくため息をついた。イライラしているのか、縞模様の尻尾が勢いよく、横に振れる。
「彼らには、猫が鳴いているようにしか聞こえないらしい。他の奴らもそうだ! なぜ俺の言葉が分からない!」
「それはそうでしょう……貴方、今猫ですからね」
ライルは今、れっきとした猫である。しかもその辺をウロウロしているような、よく見る柄の猫。茶色い虎模様のオス猫。人間のライルと共通点を挙げるとするならば……瞳だろうか。緑色の瞳だけは同じだ。
「それで手当り次第、声を掛けるも誰も相手にしてくれず、しょぼくれていた所へ私が貴方の声に気づいたわけですね」
「腹立たしいがそういうことだ」
ライルはこくこくと頷いた。人間の時は大仰で偉そうでウザイだけだったが、猫の姿だと可愛らしいものだ。
「どうやら、カレン以外には俺の言葉は通じないからな。お前に俺の世話をしてもらう他ない」
「はぁ……仕方ないですわね。いいでしょう」
ただのライルならいくら頼まれても、こう易々とは承知しなかっただろう。しかし、ライルは今猫である。私は大の猫好きだ。もちろん、動物ならなんでも好きだが、特に猫は好きだ。
中身がライルとはいえ、猫の形をしているのならば、放っては置けない。可哀想だ。それに、今の姿ならどの仕草も可愛く思えるというものだ。
「では早速、俺専用の部屋を一室、用意しろ」
「そんなものありませんわ」
「なんだと!?」
「だって貴方、私以外にはただの猫なんですから。そんな権限ありませんよ」
「ならどうしろっていうんだ!」
「私の部屋の隅っこの方を貸してあげます」
「はあ!?」
ライルは猫が威嚇する時のシャッーと言う声を出した。これでは本当にただの猫だ。
「俺がお前の部屋の隅!?」
「嫌なら外で勝手に生活してくれます?」
「それは……嫌だな……。だが、カレンと同室も……」
「貴方猫なんですからね。例え部屋を用意しても、どうせ使えないわよ」
「ふむ……まぁ、仕方ない。お前の部屋で勘弁してやろう」
こうして、ライルは私の部屋で生活することになった。
「ええ……まぁ、半信半疑ですが」
説明を終えたライルは、毛繕いを始めた。仕草も猫になってしまっているらしい。茶色い前足を、ザリザリと舐めている。その様をじっと見ていると、ライルがハッとした様子で毛繕いを止めた。
「ええい! じっと見るんじゃない!」
「申し訳ありません」
謝罪の言葉を述べる。心から悪いとは思ってはいない。形式だけだ。見られたくないのなら、ここで毛繕いをしなければ良いのに。
「ともかく、カレンに信じて貰わないわけには俺はどうすることもできん」
「私じゃなくとも、貴方のお父様やお母様に伝えれば良いのではなくって?」
「そんなものは言われなくとも試したさ! でもダメだった」
ライルは猫の姿で大きくため息をついた。イライラしているのか、縞模様の尻尾が勢いよく、横に振れる。
「彼らには、猫が鳴いているようにしか聞こえないらしい。他の奴らもそうだ! なぜ俺の言葉が分からない!」
「それはそうでしょう……貴方、今猫ですからね」
ライルは今、れっきとした猫である。しかもその辺をウロウロしているような、よく見る柄の猫。茶色い虎模様のオス猫。人間のライルと共通点を挙げるとするならば……瞳だろうか。緑色の瞳だけは同じだ。
「それで手当り次第、声を掛けるも誰も相手にしてくれず、しょぼくれていた所へ私が貴方の声に気づいたわけですね」
「腹立たしいがそういうことだ」
ライルはこくこくと頷いた。人間の時は大仰で偉そうでウザイだけだったが、猫の姿だと可愛らしいものだ。
「どうやら、カレン以外には俺の言葉は通じないからな。お前に俺の世話をしてもらう他ない」
「はぁ……仕方ないですわね。いいでしょう」
ただのライルならいくら頼まれても、こう易々とは承知しなかっただろう。しかし、ライルは今猫である。私は大の猫好きだ。もちろん、動物ならなんでも好きだが、特に猫は好きだ。
中身がライルとはいえ、猫の形をしているのならば、放っては置けない。可哀想だ。それに、今の姿ならどの仕草も可愛く思えるというものだ。
「では早速、俺専用の部屋を一室、用意しろ」
「そんなものありませんわ」
「なんだと!?」
「だって貴方、私以外にはただの猫なんですから。そんな権限ありませんよ」
「ならどうしろっていうんだ!」
「私の部屋の隅っこの方を貸してあげます」
「はあ!?」
ライルは猫が威嚇する時のシャッーと言う声を出した。これでは本当にただの猫だ。
「俺がお前の部屋の隅!?」
「嫌なら外で勝手に生活してくれます?」
「それは……嫌だな……。だが、カレンと同室も……」
「貴方猫なんですからね。例え部屋を用意しても、どうせ使えないわよ」
「ふむ……まぁ、仕方ない。お前の部屋で勘弁してやろう」
こうして、ライルは私の部屋で生活することになった。
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