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第4部 手負いの獣に蝶と花
第28話 愛の証明(ルーク視点)※
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ジルの部屋の方がルイスの部屋に近い。昔はこんなくだらないことで取っ組み合いの喧嘩になったものだ。ジルはきっとルイスが帰ってくる音を聴きたくて部屋の扉を開け放っていた。そこにもたれかかってジルが月明かりで絵本を広げる光景を眺める。
あの絵本は字が読めないと嘘をついてルイスに読んでもらっていたお気に入りの一冊だ。こうやってルイスが帰ってこない日はあの絵本で寂しさを紛らわせている。
「兄様が読んでやろうか?」
ジルは驚き絵本を落とした。そして忌々しそうに絵本を拾いそしていつもの場所にしまう。
「兄様じゃダメか?」
「思い出が汚れる」
「ひどい言い方をするな!」
ジルはため息をついてベッドに潜り込んだ。だから私もジルを奥に追いやってその横に寝転ぶ。
「1ヵ月もたなかったな。兄様たちのキスを楽しみに帰ってくるの」
「そういう邪な心で俺にキスしていたことをルイスに見抜かれたんだ」
「ルイスが帰ってこないのを私のせいにするのか!? 日に日にエスカレートして、今度は兄様たちで愛し合えなんて言い出しかねないぞ!」
ジルは私を馬鹿にしたようなため息をつく。
「ルイスが帰ってこなくて溜まってるのか?」
「お前は! なんなんだ! 少しくらいモテたからといって! お前を抱きたいなんてひとつも思ってないからな!」
「でもルイスがそう望んでいたらどうだ?」
「た、たしかに! お前の言う通りルイスが喜ぶから……その、キスはしてたかもしれない! でもお前だって抱かれたいわけでも抱きたいわけでもないだろう!?」
「だから、ルイスはお前になりたかったのだろう? 俺の方が上手いとかそういう話じゃないんだ」
急にジルの言ってることが分からなくなって口を噤んでしまう。確かに最近ジルに抱かれている時の方がルイスに堪えが効かなくなっていた。気にしていなかったわけではない。意識的に考えないようにしていたのだ。
「なにを言ってるかさっぱりわからん。そういえばなんで称号を賜らなかったのだ!」
面倒な話題を逸らして気を紛らわそうとした。しかしジルは私を逃がさない。
「お前から賜るのなら喜んで受け取っただろうよ。ルイスもお前になって、俺とルイスを愛してほしいと思ってるんだ」
「愛しているだろう! お前のことも、ルイスのことも!」
ジルのなんだか嬉しそうな息の音が2人の空間に吐き出される。
唐突に視界が暗くなり、唇に柔らかい感触が当たる。その後にジルの匂いがして、私の話を聞いていたのか? と疑問符が浮かぶ。しかしその疑問は下半身に這ってきたジルの手で押しやられた。
「んうっ……! ど、どこ触ってるんだ!?」
「ガタガタうるさいぞ。溜まってるんだろう?」
ジルの巨体に私の力が及ぶはずもなく、なされるがまま履物をずらされる。唇を奪われ喚くこともできず、体も自由も奪われる。こんなあり得ない状況が不覚にも私の下半身が反応させる。
「別に抱こうってわけじゃない。演技でもいいから俺に体を預けろ」
返事をする前に口を塞がれ、まったくもって拒否権がない。それが甘い疼きをもたらし、仕方なく体の力を抜いて、ジルの頭を抱えた。
「兄様……なにをしているんですか……?」
ジルと私は声の方に振り向くや否や、視線の先のルイスがペタンと床にへたりこんだ。私は人生最大級の修羅場だと狼狽する。
「ルイスが帰ってこなくて寂しいって、ルークが俺の部屋に来たんだ」
「ああ、ああ! そんな説明はいいのです! 続けてください!」
「ルイスも近くで見たらいい」
「ああ、僕に構わずどうか続けてください……僕はもうダメです、腰に力が入らないし、前が爆発しそうです!」
狼狽える私をよそに2人はまるで芝居のように淡々と物事を進めていく。ジルは制止を振り切りルイスを担ぎ上げ、ベッドまで連れてきた。
「ああ、本当だ。ルイスのここはもう爆発してしまいそうだな。でもルークは俺にしてもらいたいのだそうだ。部屋の外からだいぶ見つめられていたからな」
私が否定しようと起きあがろうとすればジルは力尽くで組み伏せる。この時思ったのだ。ジルもルイスのためにこうしているのだと。こうなったらジルの芝居にのってやろうと思った。
「レオに惹かれたのは、お前が手に入らない状況が似ていたからだ」
芝居のつもりで愛を囁こうと思ったが、ここでジルとルイスが驚くほど目を剥いた。引っ込みがつかなくなってしまってポロポロと言葉が溢れ出す。
「体を重ねるだけが愛の証明じゃない
……ルイスを愛しているお前ごと愛している……お前がルイス以外の誰かを犯すことも、犯されることも許さない……例え私にでもだ……」
凍りつく空気に自信を失いどんどんと声が小さくなる。
「兄様は……今とても幸せなんだ……」
最後の念をおしたら、ルイスとジルが胸に飛び込んできた。それからしばらく2人にもみくちゃにされ、今日というこの日の幸福が胸に染み入った。
あの絵本は字が読めないと嘘をついてルイスに読んでもらっていたお気に入りの一冊だ。こうやってルイスが帰ってこない日はあの絵本で寂しさを紛らわせている。
「兄様が読んでやろうか?」
ジルは驚き絵本を落とした。そして忌々しそうに絵本を拾いそしていつもの場所にしまう。
「兄様じゃダメか?」
「思い出が汚れる」
「ひどい言い方をするな!」
ジルはため息をついてベッドに潜り込んだ。だから私もジルを奥に追いやってその横に寝転ぶ。
「1ヵ月もたなかったな。兄様たちのキスを楽しみに帰ってくるの」
「そういう邪な心で俺にキスしていたことをルイスに見抜かれたんだ」
「ルイスが帰ってこないのを私のせいにするのか!? 日に日にエスカレートして、今度は兄様たちで愛し合えなんて言い出しかねないぞ!」
ジルは私を馬鹿にしたようなため息をつく。
「ルイスが帰ってこなくて溜まってるのか?」
「お前は! なんなんだ! 少しくらいモテたからといって! お前を抱きたいなんてひとつも思ってないからな!」
「でもルイスがそう望んでいたらどうだ?」
「た、たしかに! お前の言う通りルイスが喜ぶから……その、キスはしてたかもしれない! でもお前だって抱かれたいわけでも抱きたいわけでもないだろう!?」
「だから、ルイスはお前になりたかったのだろう? 俺の方が上手いとかそういう話じゃないんだ」
急にジルの言ってることが分からなくなって口を噤んでしまう。確かに最近ジルに抱かれている時の方がルイスに堪えが効かなくなっていた。気にしていなかったわけではない。意識的に考えないようにしていたのだ。
「なにを言ってるかさっぱりわからん。そういえばなんで称号を賜らなかったのだ!」
面倒な話題を逸らして気を紛らわそうとした。しかしジルは私を逃がさない。
「お前から賜るのなら喜んで受け取っただろうよ。ルイスもお前になって、俺とルイスを愛してほしいと思ってるんだ」
「愛しているだろう! お前のことも、ルイスのことも!」
ジルのなんだか嬉しそうな息の音が2人の空間に吐き出される。
唐突に視界が暗くなり、唇に柔らかい感触が当たる。その後にジルの匂いがして、私の話を聞いていたのか? と疑問符が浮かぶ。しかしその疑問は下半身に這ってきたジルの手で押しやられた。
「んうっ……! ど、どこ触ってるんだ!?」
「ガタガタうるさいぞ。溜まってるんだろう?」
ジルの巨体に私の力が及ぶはずもなく、なされるがまま履物をずらされる。唇を奪われ喚くこともできず、体も自由も奪われる。こんなあり得ない状況が不覚にも私の下半身が反応させる。
「別に抱こうってわけじゃない。演技でもいいから俺に体を預けろ」
返事をする前に口を塞がれ、まったくもって拒否権がない。それが甘い疼きをもたらし、仕方なく体の力を抜いて、ジルの頭を抱えた。
「兄様……なにをしているんですか……?」
ジルと私は声の方に振り向くや否や、視線の先のルイスがペタンと床にへたりこんだ。私は人生最大級の修羅場だと狼狽する。
「ルイスが帰ってこなくて寂しいって、ルークが俺の部屋に来たんだ」
「ああ、ああ! そんな説明はいいのです! 続けてください!」
「ルイスも近くで見たらいい」
「ああ、僕に構わずどうか続けてください……僕はもうダメです、腰に力が入らないし、前が爆発しそうです!」
狼狽える私をよそに2人はまるで芝居のように淡々と物事を進めていく。ジルは制止を振り切りルイスを担ぎ上げ、ベッドまで連れてきた。
「ああ、本当だ。ルイスのここはもう爆発してしまいそうだな。でもルークは俺にしてもらいたいのだそうだ。部屋の外からだいぶ見つめられていたからな」
私が否定しようと起きあがろうとすればジルは力尽くで組み伏せる。この時思ったのだ。ジルもルイスのためにこうしているのだと。こうなったらジルの芝居にのってやろうと思った。
「レオに惹かれたのは、お前が手に入らない状況が似ていたからだ」
芝居のつもりで愛を囁こうと思ったが、ここでジルとルイスが驚くほど目を剥いた。引っ込みがつかなくなってしまってポロポロと言葉が溢れ出す。
「体を重ねるだけが愛の証明じゃない
……ルイスを愛しているお前ごと愛している……お前がルイス以外の誰かを犯すことも、犯されることも許さない……例え私にでもだ……」
凍りつく空気に自信を失いどんどんと声が小さくなる。
「兄様は……今とても幸せなんだ……」
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