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第4部 手負いの獣に蝶と花
第21話 ジルの欲望
しおりを挟む「こうやって2人に触られるだけでもそんな声を出してしまうのか? こんな逞しい体をどんな肉棒で突いてもらいたいのだ……」
「お前らを……信用できない……どうせ……俺を満足させることなく強請るだけであろう……! んっ……はっ、やめろ……! 触るな!」
「触るなと言いながら腰は動いているぞ。ラング卿の言葉は信用できて私の言葉は信用できない、それはメルヒャー卿と繋がっていたからか? 乳首をこんなにさせて……ここが感じるんだろう?」
「カミルも……お前らの策略の餌食になったのではないのか!?」
「いいえ。彼も望んでやっているのです。兄の借金は満額返済したのにも関わらず、我々の紹介で訪れた客をたらし込んでいる。しかし彼では客は満足しない。貴方のような屈強な体を求める客が多いのですよ。それに感度もいい」
「やめろ!」
店主の手を払い落とした音が部屋中に響き渡る。
「貴方は軍に所属しながら、自分の性趣向をバラされるのを恐れている。しかし私たちも国にバレては困ることがある。お互いもちつもたれずでいいではないですか? なにを恐れているのです?」
「メルヒャー卿は末に収監され死刑が確定している。そんな情報だけでは俺の立場を揺るがす情報を秘匿するという説得材料にはならない!」
僕はこの時、ジルの凄みを感じた。なぜならば彼が本当に望んでいるように僕自身が勘違いをしたからだ。ルークが握りしめる拳を見てもそうだ。僕らはジルの演技に魅了されていた。
「ではカミルの件はどうかな? 彼は兄の借金という名目で客を相手にしているが、兄はすでに死んでいる。元々、兄の借金の理由が伴侶の治療費だったのだが、まさか自分も同じ病で死ぬとは思わなかったのだろう。カミル自身から問われることがないから惰性で客を送り続けている」
店主の言葉に怒りが沸点を超えて、僕は立ち上がろうとする。しかしバーンスタイン卿が僕を押さえつけて離さなかった。
「やはりカミルを騙しているではないか!」
「しかしその情報を貴方に開示した。どうです? まだ信用できませんか? 大きな体をこんなに熱くして。今晩にだって用意することはできるのですよ? どんな男たちに抱かれたいのです? 大きな体の雄ですか? 小さな体の雄ですか?」
ジルは黙った。ジルが僕たちが突入することを待っているような気がして、僕を押さえつけるバーンスタイン卿を見る。しかし彼は首を横に振るだけで視線を動かさなかった。
「俺が……捻れば殺せるほどの小さい雄に……できれば……庸人に犯されたい……」
しばらく部屋に静寂が訪れた。その空気を店主のいやらしい笑いが打ち消す。
「なるほど……くくっ……でも庸人は金を持っていない。ここまで来たら腹を割って話そうじゃないか。庸人も手頃な年齢の雄を複数人用意できる。それら複数人の庸人に犯されているところを、魔人にお披露目するのはどうだ?」
「庸人は……金も払わず……秘密を守れるのか……?」
「大丈夫。用が済めば隣国に奴隷として売る庸人に秘密もクソもなかろう。小さくて可愛い庸人にいっぱい犯されたあと、魔人の殿方の肉棒を咥え込む。これでお互いの利害が一致するがどうかな?」
「魔人も……複数人がいい。できれば口の汚い雄が……」
「ええ、ええ。わかっていますよ。ちっぽけな庸人に犯されているところを罵られたいのですね。そして最後にお仕置きをしてもらうのです」
「あ……貴方も……ラング卿も……?」
ジルに初めて呼ばれた紳士、ラング卿は安堵の混じる声を漏らした
「ええ。私もお金を払ってでもそれに参加したい。ゾルガー卿もそうですね?」
「ゾルガー卿?」
「申し遅れました。私はゾルガー=ペーターと申します」
次の瞬間、激しい閃光が窓から飛び出す。瞬く間にバーンスタイン卿とルークが窓をぶち壊して部屋に雪崩れ込み、あっという間に2人を拘束した。僕は一体なにが起こったのかわからないまま呆然とその光景を眺めた。
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