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3部 王のピアノと風見鶏
第61話 破く者たち ※
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王の気が済むまでの時間は長かった。かれこれ1時間程度、彼の腕の中にいるが、2人とも眠りもせず、何度も唇を重ねあった。王は近況を聞きたがり、ラルフのこと、ラルフの伴侶のリナのこと、マリーのこどもやあの夫婦のことなど、洗いざらい話した。王は話の途中で笑っては俺の唇を塞ぐ。話を聞いているというよりは、声を聴いているという方が正しいのかもしれない。
俺がくしゃみを1つしたら、王は風呂へ俺を運んだ。そうして原型を留めていない無惨に破かれた服を脱がしていく。
「リナも家事の時間を守らなかったり、手抜きをすると、すぐ譜面を破るんだ。俺の周りには破く人ばかりだな」
この服はおさがりではなく、新品の服を借りたのだ。今回は譜面を破かれるどころじゃ済まないかもしれない。俺が憂鬱な気分に落ち込んでいると、王は嬉しそうにする。今まで目下の者に怒られる王が、嬉しそうにする理由がわからなかった。でも、リナに譜面を破かれた時、なんとなくその嬉しさが理解できた気がした。王もまた、対等な関係に飢えていたのだ。
「風呂に入ったら、出て行く」
「なぜだ?」
「ジルに無理をさせた。ブラウアー家に赴き、マントのお礼と、ジルに……ちゃんと言えたって……報告したい……」
「残念だったな。服もこんなになってしまったし、着る物がないぞ。裸で行くか?」
王はいつもの減らず口に戻った。少し笑って、王の髪を手繰り寄せた。王は嬉々として俺の唇を何度も啄む。
「今日が永遠に続けばいい……」
「どう足掻いたって明日は来る。ここで暮らしてラルフの元へ通えばいい」
王の思いがけない言葉に顔をあげる。俺のその行動に王はびっくりした様子だった。
「ジルにどんな報告をするつもりだったのだ?」
「ギードに自分の気持ちを伝えられたと」
王は優しく笑って、俺を担いだまま湯に浸かる。そうして俺の中に放った白濁を掻き出しはじめた。
「生活も音楽の一部か。確かに聞いた限りだと、ここから通うには過酷そうな仕事ぶりだな。だから離れていても、なんて言ったのか。冷たいことを言う」
王は俺の感じる腹の敏感な場所を押しながら、口を尖らせる。その歯に衣着せぬ物言いが嬉しくて、尖った唇を吸った。
「ギードという名曲を何曲も作る。だから献上しにきてもいいか?」
「リアムは曲名のセンスがなさすぎる。俺がつけてやるから、持ってこい。破かれるほど作っているのだろう?」
王は急にあの場所をさすった。
「ひぁっ……ギード……あまり強く、押さないでくれ……」
「優しい方がよいか?」
「ふっ……変な声が……出る……」
「それを聴かせるために来てくれたのではないのか?」
王らしい言葉に少し笑った。
「体だけの献上でも……いい……んっ……」
王が急に指の動きを止めて引き抜いた。冗談を冗談で返したつもりだったが、空気が変わってしまい慌ててしまう。ルークがルイスに怒られていた場面がチラついた。
「そんなことを言うな」
「ギードにしか言わない」
「そんなことを……」
ギードが悲しむ前に俺は髪を掴んで口を塞いだ。唇が離れたら王の肩に顔を埋めて呟く。
「愛している」
王は急に反応が鈍くなり、ゆっくり俺の背に手を這わせ、そのまま動かなくなった。結局俺は服を与えてもらえず、そのまま一緒に眠った。朝になれば彼は俺の背に唇をつけて眠っているのだろう。それが悲しくて今日は彼の頭を抱いて寝た。
俺がくしゃみを1つしたら、王は風呂へ俺を運んだ。そうして原型を留めていない無惨に破かれた服を脱がしていく。
「リナも家事の時間を守らなかったり、手抜きをすると、すぐ譜面を破るんだ。俺の周りには破く人ばかりだな」
この服はおさがりではなく、新品の服を借りたのだ。今回は譜面を破かれるどころじゃ済まないかもしれない。俺が憂鬱な気分に落ち込んでいると、王は嬉しそうにする。今まで目下の者に怒られる王が、嬉しそうにする理由がわからなかった。でも、リナに譜面を破かれた時、なんとなくその嬉しさが理解できた気がした。王もまた、対等な関係に飢えていたのだ。
「風呂に入ったら、出て行く」
「なぜだ?」
「ジルに無理をさせた。ブラウアー家に赴き、マントのお礼と、ジルに……ちゃんと言えたって……報告したい……」
「残念だったな。服もこんなになってしまったし、着る物がないぞ。裸で行くか?」
王はいつもの減らず口に戻った。少し笑って、王の髪を手繰り寄せた。王は嬉々として俺の唇を何度も啄む。
「今日が永遠に続けばいい……」
「どう足掻いたって明日は来る。ここで暮らしてラルフの元へ通えばいい」
王の思いがけない言葉に顔をあげる。俺のその行動に王はびっくりした様子だった。
「ジルにどんな報告をするつもりだったのだ?」
「ギードに自分の気持ちを伝えられたと」
王は優しく笑って、俺を担いだまま湯に浸かる。そうして俺の中に放った白濁を掻き出しはじめた。
「生活も音楽の一部か。確かに聞いた限りだと、ここから通うには過酷そうな仕事ぶりだな。だから離れていても、なんて言ったのか。冷たいことを言う」
王は俺の感じる腹の敏感な場所を押しながら、口を尖らせる。その歯に衣着せぬ物言いが嬉しくて、尖った唇を吸った。
「ギードという名曲を何曲も作る。だから献上しにきてもいいか?」
「リアムは曲名のセンスがなさすぎる。俺がつけてやるから、持ってこい。破かれるほど作っているのだろう?」
王は急にあの場所をさすった。
「ひぁっ……ギード……あまり強く、押さないでくれ……」
「優しい方がよいか?」
「ふっ……変な声が……出る……」
「それを聴かせるために来てくれたのではないのか?」
王らしい言葉に少し笑った。
「体だけの献上でも……いい……んっ……」
王が急に指の動きを止めて引き抜いた。冗談を冗談で返したつもりだったが、空気が変わってしまい慌ててしまう。ルークがルイスに怒られていた場面がチラついた。
「そんなことを言うな」
「ギードにしか言わない」
「そんなことを……」
ギードが悲しむ前に俺は髪を掴んで口を塞いだ。唇が離れたら王の肩に顔を埋めて呟く。
「愛している」
王は急に反応が鈍くなり、ゆっくり俺の背に手を這わせ、そのまま動かなくなった。結局俺は服を与えてもらえず、そのまま一緒に眠った。朝になれば彼は俺の背に唇をつけて眠っているのだろう。それが悲しくて今日は彼の頭を抱いて寝た。
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