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3部 王のピアノと風見鶏
第2話 拷問の種類
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途中視界を奪われたまま馬に乗せられ、大分遠いところまで連れてこられた。視界が戻った時にはさっきの宮殿とは打って変わって、やけに質素な部屋に投げ入れられた。バーンスタイン卿は俺の腕と足をそれぞれ縄でくくり、窓という窓に手をかざしてなにかをしていた。
視界の半分が床のまま彼の行動を観察していたが、例え視界に自由が利いてもその真意を知ることはできなかったであろう。よくわからない行動が完了したのか彼が踵を返して俺の方へ向かってきた。その時、唐突にドアが開け放たれ国王が入ってきた。
「陛下、その扉以外は施錠いたしました」
「ああ、まったく。今度はなんだ。おい、お前。名をなんという」
国王はバーンスタイン卿を労いもせず、俺に名を問い、そして沈黙が流れた。
「陛下」
バーンスタイン卿は言いながらジリジリと俺に近づいて来る。
「おい、アシュレイやめろ。少しは殺気を抑えられんのか。この軍服は我が国のもので間違い無いか?」
「はい、間違いございません」
バーンスタイン卿が答えるや否や、またあの不思議な力で俺の体が浮き上がる。何度されても慣れず、頭が混乱する。手を引っ張られるような感覚で直立に浮かされたと思ったら、国王が俺の顔を隠していた布を剥ぎ取った。
「名を名乗れ」
国王の問いにまたしても沈黙が流れると、バーンスタイン卿が剣を抜いた。そうして俺の首元に剣の切っ先を向ける。彼の藍と紅の瞳はその剣と同じように冷たく鋭い。躊躇いのかけらも無い非情な瞳だった。王は後ろからバーンスタイン卿の肩を掴みそれを制した。
「庸人の傭兵だ。すぐに洗えるだろう。アシュレイ、兵の管理をしている者に心当たりはあるか?」
国王はバーンスタイン卿に質問を投げかけながら、俺の顎を掴み顔を寄せた。紅い瞳に俺自身が映り込む。しばらく見つめたと思ったら、国王の手が縦横無尽に俺の体を這い回った。
「陛下……なにもリスクを犯してまで他の者に訊ねずとも、この者の口を割らせればよろしいかと」
「試しに指の一本でも折ってみるか? こういう目をした奴は拷問では口を割らんぞ。お前の論法では殺すだけだ」
バーンスタイン卿が王の奥でじっと俺の顔を見る。そして溜息を吐きながら剣を鞘に収めた。
「似ている」
バーンスタイン卿のその言葉に、国王は俺の体を弄っていた手を止めた。
「誰にだ?」
「さあ? 駐屯地でめぼしい者を見繕って参ります。それまで過度な拷問はお控えください」
「さっき私に止められたのは、どこのどいつだ。お前と違って誰それかまわず殺したりしないんだ」
「貴方と違って誰それかまわず体を触ったりしません。国王の品位を地に落とすことがございませんよう」
「なるほど。その手があったな」
納得したのか国王は唐突に俺の服を掴み、そのまま引き千切った。
「陛下……」
「私の品位を気にかけるのならば、はやく素性の分かる者を連れてこい」
「御意」
バーンスタイン卿はそのまま部屋を出た。残された国王が割いた服の間から顔を突っ込む。唐突な行動に身がギュッと縮まるが、指一本動かせない。
「お前はヤギと同じ匂いがするな。貧しさから草を喰む者の匂いだ。しかし顔はヤギとは似ていない。一体誰と似ているというのだ?」
「んんっ」
顔や胸を縦横無尽に撫でられ、気持ちの悪さから声が漏れる。触られたくらいでどうということはないのに、なぜだか嫌悪感が這い上がってくるのだ。
「可愛い声を出す」
体中が麻痺する中、動かせるのは眼球くらいだった。バーンスタイン卿が戻るまで長い間必死に視線を外し、この不快感に耐え続けた。
視界の半分が床のまま彼の行動を観察していたが、例え視界に自由が利いてもその真意を知ることはできなかったであろう。よくわからない行動が完了したのか彼が踵を返して俺の方へ向かってきた。その時、唐突にドアが開け放たれ国王が入ってきた。
「陛下、その扉以外は施錠いたしました」
「ああ、まったく。今度はなんだ。おい、お前。名をなんという」
国王はバーンスタイン卿を労いもせず、俺に名を問い、そして沈黙が流れた。
「陛下」
バーンスタイン卿は言いながらジリジリと俺に近づいて来る。
「おい、アシュレイやめろ。少しは殺気を抑えられんのか。この軍服は我が国のもので間違い無いか?」
「はい、間違いございません」
バーンスタイン卿が答えるや否や、またあの不思議な力で俺の体が浮き上がる。何度されても慣れず、頭が混乱する。手を引っ張られるような感覚で直立に浮かされたと思ったら、国王が俺の顔を隠していた布を剥ぎ取った。
「名を名乗れ」
国王の問いにまたしても沈黙が流れると、バーンスタイン卿が剣を抜いた。そうして俺の首元に剣の切っ先を向ける。彼の藍と紅の瞳はその剣と同じように冷たく鋭い。躊躇いのかけらも無い非情な瞳だった。王は後ろからバーンスタイン卿の肩を掴みそれを制した。
「庸人の傭兵だ。すぐに洗えるだろう。アシュレイ、兵の管理をしている者に心当たりはあるか?」
国王はバーンスタイン卿に質問を投げかけながら、俺の顎を掴み顔を寄せた。紅い瞳に俺自身が映り込む。しばらく見つめたと思ったら、国王の手が縦横無尽に俺の体を這い回った。
「陛下……なにもリスクを犯してまで他の者に訊ねずとも、この者の口を割らせればよろしいかと」
「試しに指の一本でも折ってみるか? こういう目をした奴は拷問では口を割らんぞ。お前の論法では殺すだけだ」
バーンスタイン卿が王の奥でじっと俺の顔を見る。そして溜息を吐きながら剣を鞘に収めた。
「似ている」
バーンスタイン卿のその言葉に、国王は俺の体を弄っていた手を止めた。
「誰にだ?」
「さあ? 駐屯地でめぼしい者を見繕って参ります。それまで過度な拷問はお控えください」
「さっき私に止められたのは、どこのどいつだ。お前と違って誰それかまわず殺したりしないんだ」
「貴方と違って誰それかまわず体を触ったりしません。国王の品位を地に落とすことがございませんよう」
「なるほど。その手があったな」
納得したのか国王は唐突に俺の服を掴み、そのまま引き千切った。
「陛下……」
「私の品位を気にかけるのならば、はやく素性の分かる者を連れてこい」
「御意」
バーンスタイン卿はそのまま部屋を出た。残された国王が割いた服の間から顔を突っ込む。唐突な行動に身がギュッと縮まるが、指一本動かせない。
「お前はヤギと同じ匂いがするな。貧しさから草を喰む者の匂いだ。しかし顔はヤギとは似ていない。一体誰と似ているというのだ?」
「んんっ」
顔や胸を縦横無尽に撫でられ、気持ちの悪さから声が漏れる。触られたくらいでどうということはないのに、なぜだか嫌悪感が這い上がってくるのだ。
「可愛い声を出す」
体中が麻痺する中、動かせるのは眼球くらいだった。バーンスタイン卿が戻るまで長い間必死に視線を外し、この不快感に耐え続けた。
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