幽閉塔の早贄

３部 王のピアノと風見鶏

１部・２部のあらすじ

＜１部　奇跡の器とヤギ＞

人よりも大きな体躯で、魔法を操る“魔人”が統べるベルクマイヤ王国。この国の宮廷の端には誰も近寄らない、湖面に浮かぶ塔がある。

塔の生贄に選ばれた孤児院出身のノアは、塔の管理人であるアシュレイが、かつて自分が心のよりどころにしていた｢アシュリー｣ではないかと思うが、それを聞くことができずにいた。一方アシュレイは、ノアを憎悪する貴族の子どもだと思い込み、辛辣に接してしまう。

それでも塔での交流の中で、2人は段々と惹かれあっていく。しかし、アシュレイには心に決めた人がいた。

想い人がいながらノアに傾倒してしまう自分を隠そうとするアシュレイは、再びノアに辛くあたるようになり、すれ違う2人はやがて最悪な事態へと発展していく。



＜２部　焼け落ちる瑞鳥の止まり木＞

様々な不運に見舞われながらも、お互いの思いが通じ合ったノアとアシュレイ。しかし幸せな時間も束の間、アシュレイの父が逝去し、葬儀が終わると同時に出征が決まった。

ノアはその不自然な出征に疑念を抱き、謀反を疑う。アシュレイとブラウアー兄弟は秘密裏に調査を始めるが、謀反人の影すら掴めない。出征が差し迫る中、アシュレイはルイスにある使命を託す。

遣いガラスを手配してノアの助言を出征先のアシュレイに伝える、その使命を果たすためバーンスタイン家の使用人を訪ねるルイス。

しかしそこでルイスに託された情報は誰もが予想できなかった真実だった。

ルイスが帰るなり謀反が宮廷内で勃発し、遣いガラスに伝言を託せなかったノアとルイス。兄弟の歪な愛に孤独を抱き、別の者を愛そうとしたルーク。ルイスを第一に考え、自分の気持ちを押し殺すジル。彼らが王の元へ辿り着いた時、この国と魔法の真実がゆっくりと暴かれていく。