幽閉塔の早贄

大田ネクロマンサー

文字の大きさ
上 下
123 / 240
2部 焼け落ちる瑞鳥の止まり木

第43話 7賢者(アシュレイ視点)

しおりを挟む
ノアは俺の馬に乗り、ルイスはジルの馬に乗って、国王の住う宮殿へひた走る。ノアは端的にここまで来た経緯と、今回の首謀者の目的とその計画を話す。ジルやルークにも聞こえるように話すためか、後半は声が枯れてしまっていた。小さな体で一生懸命話す姿に、例えようのない愛おしさが湧く。しかし声の心配もしていられなかった。

「ノア。大体分かったのだが、なぜ7賢者は鎮魂祭に行かないと知り得たのだ。7賢者が謀反人と結託している可能性はないのか?」

庸人が謀反を起こしたというシナリオで王を暗殺し、それを鎮圧したという虚偽の成果で、権力と、7賢者への交渉の場を持とうというのはわかった。しかしその仮説に思い至るまでの決定的な確証がなかった。

俺にしがみつくノアを見るが、ノアはそれきり黙ったままだった。俺の質問に答えたのは、意外にもルイスだった。

「アシュレイ、この情報は身の安全のためならばどう使おうと僕に任せると、そう言われてオットーから託された。ノアはそれを守っているんだ」

「オットーが?」

「でも僕は僕の命に懸けて、アシュレイと兄様にこの情報を託す。7賢者は全員庸人だ」

「な……!」

なんでと問う間に、今までの疑問が全て納得に変わる。7賢者が全員庸人だと知っていたならば、庸人に罪を着せるこんな作戦に出ない。

それになぜこんな大掛かりな王都外への武力の分散が行われたか。それはさっき自身が感じた違和感の答えにもなっていた。そのシナリオで進めるのであれば、魔人の関与は許されない。庸人の部隊では王宮を襲撃できないからだ。例えできたとしても、後々魔人を納得させることはできないだろう。

「なぜ……オットーが……」

オットーが王と繋がっているのは知っていた。しかし知り得たならば国が傾くようなこんな情報をなぜ一介の使用人が……。そう思った時にひとつの可能性が脳裏をよぎる。

「アシュレイももう分かっていると思うけど、オットーがその1人なんだと思う」

「わかった。ルイス、礼を言う。命懸けでその情報とノアを守り抜いてくれたんだな」

ルイスは急に黙ったから、後ろを走るジルの馬を見やった。無言になった理由はすぐにわかる。ジルにきつく抱きしめられて息すらさせてもらえないようだった。

「ノア、塔を焼け出されたのにもかかわらず、よく俺の元まで来てくれた。これが片付いたら俺の屋敷で一緒に暮らそう」

ノアは信じられないといった表情で俺を見上げる。

「う、嬉しくないのか?」

「いえ、いえ! で、でも、あまり大きく……」

「まだそんなことを言っているのか! お前を愛しているんだ!」

そこにルイスが野次を飛ばしてくる。

「ちょっと、アシュレイ! ノアは僕とも遊んでくれるって約束してくれたんだからね! 独り占めしないでよ!」

「お前が屋敷に遊びにくればいいだろうが!」

「おい、まだ終わっていないんだぞ! 呑気なことを言っているな!」

1番後ろを走るルークが檄を飛ばす。いつもだったらジルの役割だったが、人はその時々で役割が変わる。ジルやルークに守られてきたルイスが恐怖に耐えながらノアを守ったように。1番強いと思っていたジルがルークの死を前に弱さを見せたように。

そして生贄として幽閉されていたノアが、塔を飛び去ったように、役割はいつも目まぐるしく変化するのだ。
しおりを挟む
口なしに熱風| ふざけた女装の隣国王子が我が国の後宮で無双をはじめるそうです

口なしの封緘

皇帝に追放された騎士団長の試される忠義
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

処理中です...