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2部 焼け落ちる瑞鳥の止まり木
第43話 7賢者(アシュレイ視点)
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ノアは俺の馬に乗り、ルイスはジルの馬に乗って、国王の住う宮殿へひた走る。ノアは端的にここまで来た経緯と、今回の首謀者の目的とその計画を話す。ジルやルークにも聞こえるように話すためか、後半は声が枯れてしまっていた。小さな体で一生懸命話す姿に、例えようのない愛おしさが湧く。しかし声の心配もしていられなかった。
「ノア。大体分かったのだが、なぜ7賢者は鎮魂祭に行かないと知り得たのだ。7賢者が謀反人と結託している可能性はないのか?」
庸人が謀反を起こしたというシナリオで王を暗殺し、それを鎮圧したという虚偽の成果で、権力と、7賢者への交渉の場を持とうというのはわかった。しかしその仮説に思い至るまでの決定的な確証がなかった。
俺にしがみつくノアを見るが、ノアはそれきり黙ったままだった。俺の質問に答えたのは、意外にもルイスだった。
「アシュレイ、この情報は身の安全のためならばどう使おうと僕に任せると、そう言われてオットーから託された。ノアはそれを守っているんだ」
「オットーが?」
「でも僕は僕の命に懸けて、アシュレイと兄様にこの情報を託す。7賢者は全員庸人だ」
「な……!」
なんでと問う間に、今までの疑問が全て納得に変わる。7賢者が全員庸人だと知っていたならば、庸人に罪を着せるこんな作戦に出ない。
それになぜこんな大掛かりな王都外への武力の分散が行われたか。それはさっき自身が感じた違和感の答えにもなっていた。そのシナリオで進めるのであれば、魔人の関与は許されない。庸人の部隊では王宮を襲撃できないからだ。例えできたとしても、後々魔人を納得させることはできないだろう。
「なぜ……オットーが……」
オットーが王と繋がっているのは知っていた。しかし知り得たならば国が傾くようなこんな情報をなぜ一介の使用人が……。そう思った時にひとつの可能性が脳裏をよぎる。
「アシュレイももう分かっていると思うけど、オットーがその1人なんだと思う」
「わかった。ルイス、礼を言う。命懸けでその情報とノアを守り抜いてくれたんだな」
ルイスは急に黙ったから、後ろを走るジルの馬を見やった。無言になった理由はすぐにわかる。ジルにきつく抱きしめられて息すらさせてもらえないようだった。
「ノア、塔を焼け出されたのにもかかわらず、よく俺の元まで来てくれた。これが片付いたら俺の屋敷で一緒に暮らそう」
ノアは信じられないといった表情で俺を見上げる。
「う、嬉しくないのか?」
「いえ、いえ! で、でも、あまり大きく……」
「まだそんなことを言っているのか! お前を愛しているんだ!」
そこにルイスが野次を飛ばしてくる。
「ちょっと、アシュレイ! ノアは僕とも遊んでくれるって約束してくれたんだからね! 独り占めしないでよ!」
「お前が屋敷に遊びにくればいいだろうが!」
「おい、まだ終わっていないんだぞ! 呑気なことを言っているな!」
1番後ろを走るルークが檄を飛ばす。いつもだったらジルの役割だったが、人はその時々で役割が変わる。ジルやルークに守られてきたルイスが恐怖に耐えながらノアを守ったように。1番強いと思っていたジルがルークの死を前に弱さを見せたように。
そして生贄として幽閉されていたノアが、塔を飛び去ったように、役割はいつも目まぐるしく変化するのだ。
「ノア。大体分かったのだが、なぜ7賢者は鎮魂祭に行かないと知り得たのだ。7賢者が謀反人と結託している可能性はないのか?」
庸人が謀反を起こしたというシナリオで王を暗殺し、それを鎮圧したという虚偽の成果で、権力と、7賢者への交渉の場を持とうというのはわかった。しかしその仮説に思い至るまでの決定的な確証がなかった。
俺にしがみつくノアを見るが、ノアはそれきり黙ったままだった。俺の質問に答えたのは、意外にもルイスだった。
「アシュレイ、この情報は身の安全のためならばどう使おうと僕に任せると、そう言われてオットーから託された。ノアはそれを守っているんだ」
「オットーが?」
「でも僕は僕の命に懸けて、アシュレイと兄様にこの情報を託す。7賢者は全員庸人だ」
「な……!」
なんでと問う間に、今までの疑問が全て納得に変わる。7賢者が全員庸人だと知っていたならば、庸人に罪を着せるこんな作戦に出ない。
それになぜこんな大掛かりな王都外への武力の分散が行われたか。それはさっき自身が感じた違和感の答えにもなっていた。そのシナリオで進めるのであれば、魔人の関与は許されない。庸人の部隊では王宮を襲撃できないからだ。例えできたとしても、後々魔人を納得させることはできないだろう。
「なぜ……オットーが……」
オットーが王と繋がっているのは知っていた。しかし知り得たならば国が傾くようなこんな情報をなぜ一介の使用人が……。そう思った時にひとつの可能性が脳裏をよぎる。
「アシュレイももう分かっていると思うけど、オットーがその1人なんだと思う」
「わかった。ルイス、礼を言う。命懸けでその情報とノアを守り抜いてくれたんだな」
ルイスは急に黙ったから、後ろを走るジルの馬を見やった。無言になった理由はすぐにわかる。ジルにきつく抱きしめられて息すらさせてもらえないようだった。
「ノア、塔を焼け出されたのにもかかわらず、よく俺の元まで来てくれた。これが片付いたら俺の屋敷で一緒に暮らそう」
ノアは信じられないといった表情で俺を見上げる。
「う、嬉しくないのか?」
「いえ、いえ! で、でも、あまり大きく……」
「まだそんなことを言っているのか! お前を愛しているんだ!」
そこにルイスが野次を飛ばしてくる。
「ちょっと、アシュレイ! ノアは僕とも遊んでくれるって約束してくれたんだからね! 独り占めしないでよ!」
「お前が屋敷に遊びにくればいいだろうが!」
「おい、まだ終わっていないんだぞ! 呑気なことを言っているな!」
1番後ろを走るルークが檄を飛ばす。いつもだったらジルの役割だったが、人はその時々で役割が変わる。ジルやルークに守られてきたルイスが恐怖に耐えながらノアを守ったように。1番強いと思っていたジルがルークの死を前に弱さを見せたように。
そして生贄として幽閉されていたノアが、塔を飛び去ったように、役割はいつも目まぐるしく変化するのだ。
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