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2部 焼け落ちる瑞鳥の止まり木
第27話 それぞれの朝(ルイス視点)
しおりを挟む僕は朝に強い。昨日ルークの顔を見られなかったから、彼の部屋に急いだ。ジルの部屋とは反対側の突き当たりにルークの部屋がある。僕は夜着のまま走り出そうとした時、後ろから抱き上げられた。
「坊ちゃん、お伝えしたいことがございます」
「おじいちゃん? おはよう。ちょっと兄様のところに行ってからでいい?」
ハンスは困ったように笑い、僕を床に下ろした。
「ろくでもない魔人たちはもうお出かけですよ?」
「え……?」
朝も朝でまだ日も昇っていない。今日はそれぞれに予定があるとは聞いていたが、お出かけなんていう時間ではなかった。
「ルークはいるよ」
僕はこの奥の部屋で確かにルークの気配を感じる。
「いませんよ。坊ちゃん、ジルより言伝が。無理はしなくてもいいが、なにかあったらすぐに家に戻るように、と」
「家……? ねえ、おじいちゃんは僕がこのままなにも疑わずに出勤してくれた方が嬉しい?」
「物分かりのいい坊ちゃんで助かります」
「ルークは出ていく時元気でしたか?」
ハンスが眉毛が少し動いたのを見て、僕は失敗したと思った。ハンスは怒る時少し眉毛が動くのだ。
「ごめんなさい。昨日遅かったみたいだから、少し心配だったんです。もし兄様が僕より前に帰ってきたら、僕が会いたがってたと伝えてください」
ハンスはそこからうんともすんとも言わなくなった。仕方がないので身支度しようと部屋に戻りかける。その時ハンスは咳払いをして呟いた。
「早く帰ってくれば会えるかもしれません」
「ありがとうおじいちゃん、大好き!」
今日僕が上手く話を聞いてこれたら、兄様たちは出征しなくても済むかもしれない。僕は部屋に引っ込み支度をする。今日は早めに塔に赴き、食事や掃除を手早く終わらせて宮殿で聞き込みをしよう。
朝日がじわじわと空の端を燃やして、塔が逆光で輪郭以外黒い。塔の一本道は通る度に印象が変わる。大事な時には塔は見えない。食材を拾い集めた夜も、今日の朝も。
木枯らしが水面を滑って僕の襟元に纏わりつく。そういえば今日はアシュレイもいるのだった。朝食は2人分作ってあげよう。塔の鍵を開けて、台所に今日の食材を下ろす。
「ルイス……?」
「ノア!? おはよう、早いね! アシュレイはまだ寝ているの?」
「うん、昨日……あの……」
「ふふっ、ちゃんと我慢できるようになった?」
「アシュレイが、昨日は我慢しちゃダメだって。手を掴まれて我慢をさせてもらえなかった」
僕は魔力計器の針を見る。振り切れているから正確な日数はわからないが、きっと4日は責務を果たさず暮らせるだろう。
「アシュレイは本当に、ノアが大好きなんだね」
「ルイスみたいにキレイに愛されてるかな?」
ノアの言いたいことがわからずに聞き返してしまう。
「兄様に愛されてるルイスがすごくキレイだったから。僕もアシュレイから見たらあんな風にキレイだって思ってくれるかなって」
「そっかぁ……」
嬉しい、恥ずかしい。そんなこそばゆい感情が僕の心をくすぐる。
「ノア、アシュレイに朝ごはん作ってあげよう、きっとアシュレイ喜ぶよ?」
ノアは大きく頷いたら、タタッと走って朝食の用意に取り掛かる。だから僕も朝食と、ノアの昼食の作り置きをはじめた。
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