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2部 焼け落ちる瑞鳥の止まり木
第26話 ノアのこと(ルイス視点)
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ジルは僕の中に性液を吐き出して震えていた。まだ足りないのか、僕の唇を何度も奪い、その度にボタボタと汗が降ってくる。ハァハァと、荒い息を整えるその表情から、後悔に苛まれているのが手に取るようにわかった。
「ジル、今日はおじいちゃんに見つからないように鍵をかけて一緒に寝ましょう」
この体格差だ。僕は兄様たちと一緒に寝て何度か肩を脱臼したことがある。それからというもの、使用人のハンスは夜中、兄様と僕の部屋を巡回するようになった。
「ぅ……イス……ルイス……」
「今日は絵本ではなく、僕の話を聞いてもらえませんか? 途中で寝てしまっても大丈夫です」
ジルは黙って僕の胸に耳を押し当てる。その大きな頭を腕に抱いて僕は話し始めた。ノアのことだった。
「先日僕が遅く出勤すると、ノアがつまみ食いをしてたんです。アシュレイの父親が亡くなったことをどうやって伝えようかと道中悩んで行ったのに、塔の扉を開けたらノアがびっくりしてパンを落としたんですよ? それがすごくおかしくて、おかしくて、絶対泣かないって決めてたのに、ボロボロ涙を落としてしまいました」
ジルは話が予想外だったのか、腕の隙間から僕の顔を覗いた。
「塔に来た頃は、ノアは何もかもに怯えていて、僕が守ってあげなきゃって、そう思っていたんです。でもそう思えば思うほど……上手くいかなくて」
ジルはなにか勘違いをしたのか僕の背に手を回しギュッと抱き寄せた。僕がジルに聞いてもらいことはなにも悲しいことではないと頭を抱きなおす。
「ノアはすごく好奇心旺盛で、でもそれを隠したりもひけらかしたりもせず……。とても我慢強く、そして真っ直ぐな子です。この前なんか、アシュレイにもっと愛されたいから、我慢ができる方法を教えてくれって、真顔でお願いされたんですよ? 兄様、僕にそんなことを言われたらどうしますか?」
ジルはふふっと笑って、それは困ってしまうな、と呟いた。
「僕はノアに兄として頼って欲しいと思ってたし、僕が守ってあげたいと思ってました。でも……」
僕は言葉に詰まってしまったが、別に悲しいからではない。真実が僕の胸を震わせてた。
「ノアは僕がどう思おうと関係なかったんです。僕が頼りなくても、ノアは友達として、僕が泣き終わるまでずっと抱きしめてくれました。嬉しかった……。生涯の友達になるって、その時思えたのです」
ジルが体を起こしたから、僕は腕を解いて、彼の頬を撫でた。
「ノアの兄でいるのはすごく大変なことだって、塔の一本道で食材を拾い集めた日に痛感しました。ジルに奮い立たされなければ心が折れていたと思う。でもノアはそんなこと望んでなかった」
頬を撫でていた手を、ジルが握った。その手はすごく熱くて少し震えていた。
「だから、ジルも僕を恋人として愛してくれませんか? 今日みたいに、たまには兄様を休んで、僕を恋人にしてください」
ジルが大きく目を見開いて、みるみるうちにそれが潤んでいく。ジルが眉間にシワを寄せて俯いた。
「ルイスの兄様でいたい。でも愛しているんだ」
「ジルも、それからルークも。兄様を辞めても、恋人を辞めても、どちらかでいてくれたら僕は悲しんだりしません。兄様たちよりずっと僕は兄様たちを愛してます」
ジルは僕を押し倒し、胸の中で震えていた。
「今日ジルがあんな風に抱いてくれて、すごく嬉しかった……」
ジルは嗚咽を堪えて、体中を震わせていた。しばらく頭を撫でていたけど、もう僕は眠気に勝てなくなってきた。絵本を読んであげる、と誘き出してジルの部屋に2人向かう。
もしかしたら、着くなりジルは眠ってしまうかもしれない。それでもこの幸せな気分なままジルの寝顔を見られるのは、僕には十分すぎるほどの贅沢だった。
「ジル、今日はおじいちゃんに見つからないように鍵をかけて一緒に寝ましょう」
この体格差だ。僕は兄様たちと一緒に寝て何度か肩を脱臼したことがある。それからというもの、使用人のハンスは夜中、兄様と僕の部屋を巡回するようになった。
「ぅ……イス……ルイス……」
「今日は絵本ではなく、僕の話を聞いてもらえませんか? 途中で寝てしまっても大丈夫です」
ジルは黙って僕の胸に耳を押し当てる。その大きな頭を腕に抱いて僕は話し始めた。ノアのことだった。
「先日僕が遅く出勤すると、ノアがつまみ食いをしてたんです。アシュレイの父親が亡くなったことをどうやって伝えようかと道中悩んで行ったのに、塔の扉を開けたらノアがびっくりしてパンを落としたんですよ? それがすごくおかしくて、おかしくて、絶対泣かないって決めてたのに、ボロボロ涙を落としてしまいました」
ジルは話が予想外だったのか、腕の隙間から僕の顔を覗いた。
「塔に来た頃は、ノアは何もかもに怯えていて、僕が守ってあげなきゃって、そう思っていたんです。でもそう思えば思うほど……上手くいかなくて」
ジルはなにか勘違いをしたのか僕の背に手を回しギュッと抱き寄せた。僕がジルに聞いてもらいことはなにも悲しいことではないと頭を抱きなおす。
「ノアはすごく好奇心旺盛で、でもそれを隠したりもひけらかしたりもせず……。とても我慢強く、そして真っ直ぐな子です。この前なんか、アシュレイにもっと愛されたいから、我慢ができる方法を教えてくれって、真顔でお願いされたんですよ? 兄様、僕にそんなことを言われたらどうしますか?」
ジルはふふっと笑って、それは困ってしまうな、と呟いた。
「僕はノアに兄として頼って欲しいと思ってたし、僕が守ってあげたいと思ってました。でも……」
僕は言葉に詰まってしまったが、別に悲しいからではない。真実が僕の胸を震わせてた。
「ノアは僕がどう思おうと関係なかったんです。僕が頼りなくても、ノアは友達として、僕が泣き終わるまでずっと抱きしめてくれました。嬉しかった……。生涯の友達になるって、その時思えたのです」
ジルが体を起こしたから、僕は腕を解いて、彼の頬を撫でた。
「ノアの兄でいるのはすごく大変なことだって、塔の一本道で食材を拾い集めた日に痛感しました。ジルに奮い立たされなければ心が折れていたと思う。でもノアはそんなこと望んでなかった」
頬を撫でていた手を、ジルが握った。その手はすごく熱くて少し震えていた。
「だから、ジルも僕を恋人として愛してくれませんか? 今日みたいに、たまには兄様を休んで、僕を恋人にしてください」
ジルが大きく目を見開いて、みるみるうちにそれが潤んでいく。ジルが眉間にシワを寄せて俯いた。
「ルイスの兄様でいたい。でも愛しているんだ」
「ジルも、それからルークも。兄様を辞めても、恋人を辞めても、どちらかでいてくれたら僕は悲しんだりしません。兄様たちよりずっと僕は兄様たちを愛してます」
ジルは僕を押し倒し、胸の中で震えていた。
「今日ジルがあんな風に抱いてくれて、すごく嬉しかった……」
ジルは嗚咽を堪えて、体中を震わせていた。しばらく頭を撫でていたけど、もう僕は眠気に勝てなくなってきた。絵本を読んであげる、と誘き出してジルの部屋に2人向かう。
もしかしたら、着くなりジルは眠ってしまうかもしれない。それでもこの幸せな気分なままジルの寝顔を見られるのは、僕には十分すぎるほどの贅沢だった。
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