96 / 240
2部 焼け落ちる瑞鳥の止まり木
第15話 優しさと愛(ルーク視点)
しおりを挟む
ジルに後ろから抱かれているからか、レオは落ち着きを取り戻した。しかし私が近づくと喚き散らし呼吸困難になってしまうため、両手を上げて3歩下がったところで膠着状態に陥った。
「レオ、今日聞いたことは決して口外しないことを誓う。ただ一つ答えてもらいたいことがあるんだ」
「お前に答えることなど何もない!」
時間も時間で、早々に切り上げ父に聞きたいこともあった。しかしこんな状態でレオを放り出すわけにもいかず、焦りが口をカラカラにする。そんな私の焦燥を感じてか、ジルがレオを抱き寄せ囁いた。
「俺の友人はメルヒャー卿に深く傷つけられた。だから彼の公判に必ず赴き、追ってきたのだ。今日、あのクズ野郎が繰り広げた演技は俺が考えたものだ。だから、軽蔑するのであれば……」
ジルが囁いている間から嗚咽の息が漏れ、話の後半ではレオは号泣してしまっていた。
胸が痛かった。ジルは知らずのうちに残酷なことを囁いてしまった。メルヒャーに陵辱され続けた彼が、どんな気持ちで聞いているのか心中計り知れない。
「ジルの友人とは、お前も知っているであろうアシュレイだ。話せば長くなるから言わないでおくが、今日はそういったことを聞き出したくてきたわけではないんだ」
「お前に話すことなど……」
さっきのジルの言葉を思い出してか、レオは私に言いかけて再び泣きじゃくった。
「レオ。すまない、おそらく明後日には私もジルも出征する。だから今日はこれで失礼するよ。改めて今日のお礼とお詫びを……」
「出征……?」
私の言葉に、レオはジルの顔を見上げる。涙の筋を顔中に作って、痛々しいほどだった。
「ジルは……帰ってきますよね……?」
「心配させたくないのだが……こればっかりは約束ができない」
レオがジルの腕を力一杯握る。
「出征前に今回の件を聞き出したかったのだ。友人として……」
「ジル、もうやめろ」
ジルがびっくりして私を見る。ジルは優しく強い。しかしそれを相手に求めるきらいがある。
「レオ。さっき約束した通り、今回の件は決して口外しないことを誓う。それに今日聞き出したかったことについて迷惑もかけない。ただ一つ。その木偶の坊の兄として言わせて欲しいことがある」
レオが戸惑いながら私を見た。
「レオは美しい。木偶の坊は目が節穴なだけだ」
これ以上のことを言えなかった。他に言葉を付け加えたなら、たちまちジルに秘密を知られてしまう。ジルを見やり、帰ろうと合図を送ったその時。レオの顔がみるみる紅潮し、そして怒りに満ち溢れていく。
「ジルを愛する資格がないと言っているのか!?」
レオがまた唐突に逆上する。
「すまない、そういう意味で言ったわけでは……」
「私が汚れている、そう言いたいのだろう! 愛する資格も、愛される資格も無いと、そう言いたいのだろう!」
「レオ、今日聞いたことは決して口外しないことを誓う。ただ一つ答えてもらいたいことがあるんだ」
「お前に答えることなど何もない!」
時間も時間で、早々に切り上げ父に聞きたいこともあった。しかしこんな状態でレオを放り出すわけにもいかず、焦りが口をカラカラにする。そんな私の焦燥を感じてか、ジルがレオを抱き寄せ囁いた。
「俺の友人はメルヒャー卿に深く傷つけられた。だから彼の公判に必ず赴き、追ってきたのだ。今日、あのクズ野郎が繰り広げた演技は俺が考えたものだ。だから、軽蔑するのであれば……」
ジルが囁いている間から嗚咽の息が漏れ、話の後半ではレオは号泣してしまっていた。
胸が痛かった。ジルは知らずのうちに残酷なことを囁いてしまった。メルヒャーに陵辱され続けた彼が、どんな気持ちで聞いているのか心中計り知れない。
「ジルの友人とは、お前も知っているであろうアシュレイだ。話せば長くなるから言わないでおくが、今日はそういったことを聞き出したくてきたわけではないんだ」
「お前に話すことなど……」
さっきのジルの言葉を思い出してか、レオは私に言いかけて再び泣きじゃくった。
「レオ。すまない、おそらく明後日には私もジルも出征する。だから今日はこれで失礼するよ。改めて今日のお礼とお詫びを……」
「出征……?」
私の言葉に、レオはジルの顔を見上げる。涙の筋を顔中に作って、痛々しいほどだった。
「ジルは……帰ってきますよね……?」
「心配させたくないのだが……こればっかりは約束ができない」
レオがジルの腕を力一杯握る。
「出征前に今回の件を聞き出したかったのだ。友人として……」
「ジル、もうやめろ」
ジルがびっくりして私を見る。ジルは優しく強い。しかしそれを相手に求めるきらいがある。
「レオ。さっき約束した通り、今回の件は決して口外しないことを誓う。それに今日聞き出したかったことについて迷惑もかけない。ただ一つ。その木偶の坊の兄として言わせて欲しいことがある」
レオが戸惑いながら私を見た。
「レオは美しい。木偶の坊は目が節穴なだけだ」
これ以上のことを言えなかった。他に言葉を付け加えたなら、たちまちジルに秘密を知られてしまう。ジルを見やり、帰ろうと合図を送ったその時。レオの顔がみるみる紅潮し、そして怒りに満ち溢れていく。
「ジルを愛する資格がないと言っているのか!?」
レオがまた唐突に逆上する。
「すまない、そういう意味で言ったわけでは……」
「私が汚れている、そう言いたいのだろう! 愛する資格も、愛される資格も無いと、そう言いたいのだろう!」
0
お気に入りに追加
491
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる