91 / 240
2部 焼け落ちる瑞鳥の止まり木
第10話 宵の訪問(ルーク視点)
しおりを挟む
ジルベスタの学友はレオ=キルステンという。父君が急逝したため若くして爵位を賜った2世である。ジルと同じ学年ということはつまりはアシュレイとも同じという計算になる。体は細く男にしては筋肉が無いことから病弱に見えて、留年した年長者かと思ったほどだ。また物静かな性格から年齢よりも大分上にみえた。
「ジル、いらっしゃい。お兄様もお久しぶりです。相変わらずお2人とも精悍で美しい」
使用人ではなく本人が玄関の扉を開け、やや長めの亜麻色の髪が首をかしげた拍子にサラサラと流れる。
「レオ、久しぶり。せっかくジルとの逢瀬に、邪魔者がついてきてしまって申し訳ない。私たち弟のことで聞き出したいことがあってな。許してくれ」
「いいえ、ジルの心は固く、どちらにせよ僕の愛は届きません。邪魔者などそんなことを言わないでください」
栗色のつぶらな瞳を一層大きくして、私の謝罪を受け流す。
「レオ、今日は友人として頼みに来たのだ。後でお前を傷つけるようなことがあってはならない。その点を最初に確認させてくれ」
ジルとレオの間に少し沈黙が訪れる。しかしレオは慣れた笑顔で招き入れる。
「そういうところが素敵なんです。友人としてでも頼ってもらえるのは嬉しい。さあ、上がってください」
屋敷は質素で使用人もいないのか、エントランスはやけに静かだった。客間に通され、ソファを勧められる。
「この屋敷には使用人はいないのか?」
「夜の間はおりません。大抵面会を申し出る方は夜を好むので……」
「しかし、屋敷と牢獄は別だろうに。不便ではないのか?」
「この屋敷の地下から牢獄に繋がっているのです。大抵の場合には地上から案内しますが、今回はジルの頼みともあって特別です」
ブランデーを差し出しながら、レオはニッコリ笑う。彼は幾度となくジルに迫っていると聞く。生計を立てる貴重な収入源も惜しみなく差し出す。その甲斐甲斐しさに憐憫すら感じるのだ。
「ジルは強情だからな……。しかし君も強情か。ジルのなにがそんなに良いのだ? 可憐で美しいのに」
本心だった。ジルは決して揺らぐことはない。それを知りながら恋慕で消費する人生に、哀れみを感じたのだ。
レオはキョトンとして、俯く。
「ささ、途中までご案内します。面会時の会話は秘匿をお約束いたします」
そそくさと立ち上がる彼の耳が赤かった。違和感を感じたが、何はともあれメルヒャー卿の面会が優先だ。来る道すがらジルと念入りに打ち合わせをした。
口を割るとも思えないが……最善を尽くす他ない。
「ジル、いらっしゃい。お兄様もお久しぶりです。相変わらずお2人とも精悍で美しい」
使用人ではなく本人が玄関の扉を開け、やや長めの亜麻色の髪が首をかしげた拍子にサラサラと流れる。
「レオ、久しぶり。せっかくジルとの逢瀬に、邪魔者がついてきてしまって申し訳ない。私たち弟のことで聞き出したいことがあってな。許してくれ」
「いいえ、ジルの心は固く、どちらにせよ僕の愛は届きません。邪魔者などそんなことを言わないでください」
栗色のつぶらな瞳を一層大きくして、私の謝罪を受け流す。
「レオ、今日は友人として頼みに来たのだ。後でお前を傷つけるようなことがあってはならない。その点を最初に確認させてくれ」
ジルとレオの間に少し沈黙が訪れる。しかしレオは慣れた笑顔で招き入れる。
「そういうところが素敵なんです。友人としてでも頼ってもらえるのは嬉しい。さあ、上がってください」
屋敷は質素で使用人もいないのか、エントランスはやけに静かだった。客間に通され、ソファを勧められる。
「この屋敷には使用人はいないのか?」
「夜の間はおりません。大抵面会を申し出る方は夜を好むので……」
「しかし、屋敷と牢獄は別だろうに。不便ではないのか?」
「この屋敷の地下から牢獄に繋がっているのです。大抵の場合には地上から案内しますが、今回はジルの頼みともあって特別です」
ブランデーを差し出しながら、レオはニッコリ笑う。彼は幾度となくジルに迫っていると聞く。生計を立てる貴重な収入源も惜しみなく差し出す。その甲斐甲斐しさに憐憫すら感じるのだ。
「ジルは強情だからな……。しかし君も強情か。ジルのなにがそんなに良いのだ? 可憐で美しいのに」
本心だった。ジルは決して揺らぐことはない。それを知りながら恋慕で消費する人生に、哀れみを感じたのだ。
レオはキョトンとして、俯く。
「ささ、途中までご案内します。面会時の会話は秘匿をお約束いたします」
そそくさと立ち上がる彼の耳が赤かった。違和感を感じたが、何はともあれメルヒャー卿の面会が優先だ。来る道すがらジルと念入りに打ち合わせをした。
口を割るとも思えないが……最善を尽くす他ない。
0
お気に入りに追加
493
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛され末っ子
西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。
リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。
(お知らせは本編で行います。)
********
上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます!
上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、
上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。
上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的
上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン
上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。
てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。
(特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。
琉架の従者
遼(はる)琉架の10歳上
理斗の従者
蘭(らん)理斗の10歳上
その他の従者は後々出します。
虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。
前半、BL要素少なめです。
この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。
できないな、と悟ったらこの文は消します。
※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。
皆様にとって最高の作品になりますように。
※作者の近況状況欄は要チェックです!
西条ネア
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる