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1部 ヤギと奇跡の器
第37話 生贄の責務(アシュレイ視点)
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部屋に紅茶の匂いが立ち込め、俺の前にティーカップが置かれた時、ルイスがポツリと言った。
「ノアが吐精をしなければならないのは、ノアの仕事でしょ」
ルイスに言われて、それはそうだと思う。
「しかし男にも欲情するのならば話は別だ」
ルイスは視線を上に向けて、また言葉を選んでいるようだった。
「男を好きになるのは気持ちが悪い?」
「そういうことを言ってるのではない! なにかあってからでは……」
「さっきもノアが言ってたでしょ。頼んだことはないって。初めてノアに吐精させた時、僕があんな強引なことをしなければ、ノアだって知らずにいたんだ。それを責めるならその責任は僕にあるよ」
「なにを、言って……」
「アシュレイは僕に選択を委ねた。世話役が決めろと。僕はノアを不憫に思い、あの快感を教えてしまったんだ。普通に生きてたら知り得ない、手っ取り早く吐精できる方法を。アシュレイだって知らない快感だよ」
ルイスがなにを言っているのか心底わからなくなる。なぜ今そんなことを言い出すのかわからなかった。俺を責めているかのような論法に疑問を抱く。
「わからないって顔をしているからはっきり言うけど、僕が意思をもってノアを犯さなければそういう間違いは起きない。僕も兄様たちから犯される側で、僕がノアに欲情することも、ノアが僕に欲情することもない」
簡潔で的を得た回答でストンと心が整理された。
「そうか……すまん……ルークとジルとも同じことで論争になって、彼らは怒られたのだな……」
「ごめん、僕もその辺のこと詳しく話さなかったから……」
「しかし、ノアに施しをするのは行きすぎた行為だとは思うのだが、それは本当にもうしていないのだな?」
「うん、僕はそれにすごく責任を感じているよ。快感や意味を教えながら、ノアには我慢を強いなければならないんだから……」
今日、ブラウアー兄弟はこの塔に足を踏み入れなかった。お茶くらい飲む時間はあっただろうと不思議に思っていたが、そういうことかと納得する。
「アシュレイは……その……」
ルイスがなにか言いたげにしていたので黙っていたが、そのまま長い沈黙が訪れた。だからどうしても確かめねばならないことを聞いた。
「またノアに頼まれた時に、ルイスは断ることができるのか?」
ルイスはポカンと口を開けたまま動かなくなった。このことだけがブラウアー兄弟に呵責を感じることだったから、ハッキリさせたかった。しかしルイスは何かを言いかけ、息を吸っては吐くだけだった。
ルイスはジルに似て優しい男だ。これは多分断れないのだろうし、断る時に呵責を感じるのだろうと思った。
「模型があると言ってたな」
「え……!?」
「それは代用にはならないか?」
「そんな……ノアはもうあれから僕に頼んでいないんだよ? これからだって……」
「絶対などない。ノアにどんなに懇願されてもお前が非情に断れるというのであれば、この話はなかったことにする。お前に暇を出す話もだ」
ルイスはしばらく黙った後、おずおずと男性器の模型を取り出してきた。
「あと、これ……男の子は……これがないと入れられないから……」
模型とともに薬の容器のようなものをルイスに手渡される。
至れり尽くせりだな。生贄にしては好待遇だとも感じ、またよくわからない怒りが込み上げた。
「ノアが吐精をしなければならないのは、ノアの仕事でしょ」
ルイスに言われて、それはそうだと思う。
「しかし男にも欲情するのならば話は別だ」
ルイスは視線を上に向けて、また言葉を選んでいるようだった。
「男を好きになるのは気持ちが悪い?」
「そういうことを言ってるのではない! なにかあってからでは……」
「さっきもノアが言ってたでしょ。頼んだことはないって。初めてノアに吐精させた時、僕があんな強引なことをしなければ、ノアだって知らずにいたんだ。それを責めるならその責任は僕にあるよ」
「なにを、言って……」
「アシュレイは僕に選択を委ねた。世話役が決めろと。僕はノアを不憫に思い、あの快感を教えてしまったんだ。普通に生きてたら知り得ない、手っ取り早く吐精できる方法を。アシュレイだって知らない快感だよ」
ルイスがなにを言っているのか心底わからなくなる。なぜ今そんなことを言い出すのかわからなかった。俺を責めているかのような論法に疑問を抱く。
「わからないって顔をしているからはっきり言うけど、僕が意思をもってノアを犯さなければそういう間違いは起きない。僕も兄様たちから犯される側で、僕がノアに欲情することも、ノアが僕に欲情することもない」
簡潔で的を得た回答でストンと心が整理された。
「そうか……すまん……ルークとジルとも同じことで論争になって、彼らは怒られたのだな……」
「ごめん、僕もその辺のこと詳しく話さなかったから……」
「しかし、ノアに施しをするのは行きすぎた行為だとは思うのだが、それは本当にもうしていないのだな?」
「うん、僕はそれにすごく責任を感じているよ。快感や意味を教えながら、ノアには我慢を強いなければならないんだから……」
今日、ブラウアー兄弟はこの塔に足を踏み入れなかった。お茶くらい飲む時間はあっただろうと不思議に思っていたが、そういうことかと納得する。
「アシュレイは……その……」
ルイスがなにか言いたげにしていたので黙っていたが、そのまま長い沈黙が訪れた。だからどうしても確かめねばならないことを聞いた。
「またノアに頼まれた時に、ルイスは断ることができるのか?」
ルイスはポカンと口を開けたまま動かなくなった。このことだけがブラウアー兄弟に呵責を感じることだったから、ハッキリさせたかった。しかしルイスは何かを言いかけ、息を吸っては吐くだけだった。
ルイスはジルに似て優しい男だ。これは多分断れないのだろうし、断る時に呵責を感じるのだろうと思った。
「模型があると言ってたな」
「え……!?」
「それは代用にはならないか?」
「そんな……ノアはもうあれから僕に頼んでいないんだよ? これからだって……」
「絶対などない。ノアにどんなに懇願されてもお前が非情に断れるというのであれば、この話はなかったことにする。お前に暇を出す話もだ」
ルイスはしばらく黙った後、おずおずと男性器の模型を取り出してきた。
「あと、これ……男の子は……これがないと入れられないから……」
模型とともに薬の容器のようなものをルイスに手渡される。
至れり尽くせりだな。生贄にしては好待遇だとも感じ、またよくわからない怒りが込み上げた。
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