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1部 ヤギと奇跡の器
第1話 屈辱の序章 ※
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この日、僕は思い知った。自分がいかに楽観的な人間なのかを。
この世界を構成する感情を。
「ノア、無理に暴れないで」
「なにを……するんですか……!」
先刻、体の自由を奪う薬を打った「世話役」のルイスは、悲しみをたたえた瞳で僕を見る。その表情で僕はこの先、酷いことをされるのだと悟った。
体の自由を奪われ、ひどくベッドに沈み込む。視界の半分を覆うシーツ、その先に見えるアシュレイが、眉一つ動かさず僕を見つめていた。
「アシュレイ……。ノアはまだ成熟していない。この3日できることはやったし、きちんと教育もした」
ルイスにそう咎められたアシュレイは身動ぎせずに言い放つ。
「生贄の世話役はルイス、お前だ。この始末をつけるか、生贄を交換するか、お前が選べばいい」
アシュレイは表情ひとつ変えず冷酷に言い放つ。沈黙の後、僕の視界にいないルイスのため息が響き、動く気配がした。
「ノア、薬を使ったりしてごめん。こうしなければ苦しいと思って。でももしノアがお務めを放棄してこの塔を去るのならば、これ以上なにもしない」
この塔に来てからルイスは僕の務めについて、優しく教えてくれた。この塔にいる限り食事も寝床も与えてもらえるが、務めを果たさなければその権利を剥奪され、追い出されるということも。
「行くあてが……ないんです……」
都合のいいことを言っているのはわかっている。ルイスは模型を使って体の構造や手淫の方法を事細かに教えてくれた。その務めを果たせるよう1人の時間をたっぷり与えてもらった。しかしそれができないから今こうやって薬を打たれ、この塔を管轄する武官が訪れているのだ。
「ノア、ごめん。僕もアシュレイもこれが仕事なんだ。痛くしないから、少し辛抱してね」
ルイスはそう言い、僕の服の裾をめくった。
「な……なにをするの……?」
「大丈夫。男の子はみんな普通にすることだから」
普通、その言葉に落伍者の烙印を押し当てられたようだった。自分の下半身が冷たい空気にさらされ、羞恥心が体中の血液を沸騰させる。
「じ……自分で……できます……」
そう言いながらも、さっき打たれた薬で指一本動かせない。見かねたルイスがうつ伏せの僕の体を横向きに起こした。僕の局部がアシュレイに向けられる。その時にアシュレイの眉が動いた。
「歳は16で成人していると聞いたが……」
その言葉に答えたのはルイスだった。
「精通もまだだそうだよ……」
その答えにアシュレイは目を伏せて少し笑った。
「さぞかし大切に育てられたのでしょうな」
視線の先の武官、アシュレイの声色が侮蔑の色を滲ませる。例えようもない羞恥に、胸が押しつぶされそうだった。そしてこの塔に来るまでに感じた様々な違和感が納得に変わる。
僕は孤児院で育った。孤児院は通常16歳の成人までしか入所できない。職業訓練の機会もなく、魔法も使えない僕に、院長はこの塔の職務応募を勧めた。その時の院長の目の意味を、狂おしい羞恥の中で知る。
ルイスが尻を割って、ぬめりのあるものを塗布する。そして次の瞬間、今まで味わったこともない違和感が尻の穴から頭の先まで駆け上がった。
「あぁっ……なにを……やめて! やめてぇっ!」
「ノア、大丈夫。すぐに終わるから」
そう言いながらルイスは僕の陰茎を掴んだ。
「ルイス……汚いから……あっあぁっ……やめて! やめてぇっ!」
「ノア大丈夫だから、僕に任せて」
そしてルイスが僕の腹の中の1箇所を柔らかく押した瞬間。
「ああああぁぁぁああああっ!!」
そのあまりの衝撃で羞恥が吹き飛び大声が飛び出す。
「あっああっ! やめてっ! おかしいっ! おかしくなっちゃうっ!」
目の前にアシュレイがいる。こんなみっともない自分を見られたくなくて、顔を覆いたいのに体が動かない。衝撃の波に揉まれ息が上がり自分の口から涎が垂れるのを感じた。
「怖い……! ああぁっ……ルイス……やめて、怖いよ……!」
「ノア、大丈夫。ほら集中して……」
ルイスは掴んでいた僕の陰茎を扱きはじめる。後ろと前の表現し難い感覚に翻弄され、涙も涎も流しっぱなしで、口から細い声しか出せない。
「あっ、あっ……おかし、く……なる……みな、いで……アシュ……」
彼の名を呼ぼうとした瞬間、意識が急激に閉じて、目の前が真っ白になる。そして自分の体の中にこんな感覚があったのかと思えるほど痛々しい快感が押し寄せ、それが下半身から吐き出されるのを感じた。
「ああ、ノア。見えるかい? 吐精をするとこうやって消えていくんだ。それがこの国の魔力を支えるんだよ……」
激しい疲労感と、さっき吹き飛んだ羞恥が押し寄せ、喉の奥が締められたように苦しい。そして蕩々と涙が流れて止まらなかった。
「泣くほどよろしかったですか? しかしルイスは元来、貴殿に奉仕するための要員ではございません。明日からはお一人で責務を果たせれますよう」
アシュレイは険のある声色で慇懃無礼に言い放つ。僕の中のなにかがビリビリに破かれる音がした。背後のルイスが何かを言おうと息を吸う音を遮り、嗚咽を堪え、声を振り絞る。
「申し訳、ございま、せん……明日より……1人で責務を……果たします……」
アシュレイは笑いで僕の謝罪を一蹴し、背を向け歩き出す。そして聞こえる音量の侮蔑を吐き捨て戸を押した。
「いい気なもんだ」
この世界を構成する感情を。
「ノア、無理に暴れないで」
「なにを……するんですか……!」
先刻、体の自由を奪う薬を打った「世話役」のルイスは、悲しみをたたえた瞳で僕を見る。その表情で僕はこの先、酷いことをされるのだと悟った。
体の自由を奪われ、ひどくベッドに沈み込む。視界の半分を覆うシーツ、その先に見えるアシュレイが、眉一つ動かさず僕を見つめていた。
「アシュレイ……。ノアはまだ成熟していない。この3日できることはやったし、きちんと教育もした」
ルイスにそう咎められたアシュレイは身動ぎせずに言い放つ。
「生贄の世話役はルイス、お前だ。この始末をつけるか、生贄を交換するか、お前が選べばいい」
アシュレイは表情ひとつ変えず冷酷に言い放つ。沈黙の後、僕の視界にいないルイスのため息が響き、動く気配がした。
「ノア、薬を使ったりしてごめん。こうしなければ苦しいと思って。でももしノアがお務めを放棄してこの塔を去るのならば、これ以上なにもしない」
この塔に来てからルイスは僕の務めについて、優しく教えてくれた。この塔にいる限り食事も寝床も与えてもらえるが、務めを果たさなければその権利を剥奪され、追い出されるということも。
「行くあてが……ないんです……」
都合のいいことを言っているのはわかっている。ルイスは模型を使って体の構造や手淫の方法を事細かに教えてくれた。その務めを果たせるよう1人の時間をたっぷり与えてもらった。しかしそれができないから今こうやって薬を打たれ、この塔を管轄する武官が訪れているのだ。
「ノア、ごめん。僕もアシュレイもこれが仕事なんだ。痛くしないから、少し辛抱してね」
ルイスはそう言い、僕の服の裾をめくった。
「な……なにをするの……?」
「大丈夫。男の子はみんな普通にすることだから」
普通、その言葉に落伍者の烙印を押し当てられたようだった。自分の下半身が冷たい空気にさらされ、羞恥心が体中の血液を沸騰させる。
「じ……自分で……できます……」
そう言いながらも、さっき打たれた薬で指一本動かせない。見かねたルイスがうつ伏せの僕の体を横向きに起こした。僕の局部がアシュレイに向けられる。その時にアシュレイの眉が動いた。
「歳は16で成人していると聞いたが……」
その言葉に答えたのはルイスだった。
「精通もまだだそうだよ……」
その答えにアシュレイは目を伏せて少し笑った。
「さぞかし大切に育てられたのでしょうな」
視線の先の武官、アシュレイの声色が侮蔑の色を滲ませる。例えようもない羞恥に、胸が押しつぶされそうだった。そしてこの塔に来るまでに感じた様々な違和感が納得に変わる。
僕は孤児院で育った。孤児院は通常16歳の成人までしか入所できない。職業訓練の機会もなく、魔法も使えない僕に、院長はこの塔の職務応募を勧めた。その時の院長の目の意味を、狂おしい羞恥の中で知る。
ルイスが尻を割って、ぬめりのあるものを塗布する。そして次の瞬間、今まで味わったこともない違和感が尻の穴から頭の先まで駆け上がった。
「あぁっ……なにを……やめて! やめてぇっ!」
「ノア、大丈夫。すぐに終わるから」
そう言いながらルイスは僕の陰茎を掴んだ。
「ルイス……汚いから……あっあぁっ……やめて! やめてぇっ!」
「ノア大丈夫だから、僕に任せて」
そしてルイスが僕の腹の中の1箇所を柔らかく押した瞬間。
「ああああぁぁぁああああっ!!」
そのあまりの衝撃で羞恥が吹き飛び大声が飛び出す。
「あっああっ! やめてっ! おかしいっ! おかしくなっちゃうっ!」
目の前にアシュレイがいる。こんなみっともない自分を見られたくなくて、顔を覆いたいのに体が動かない。衝撃の波に揉まれ息が上がり自分の口から涎が垂れるのを感じた。
「怖い……! ああぁっ……ルイス……やめて、怖いよ……!」
「ノア、大丈夫。ほら集中して……」
ルイスは掴んでいた僕の陰茎を扱きはじめる。後ろと前の表現し難い感覚に翻弄され、涙も涎も流しっぱなしで、口から細い声しか出せない。
「あっ、あっ……おかし、く……なる……みな、いで……アシュ……」
彼の名を呼ぼうとした瞬間、意識が急激に閉じて、目の前が真っ白になる。そして自分の体の中にこんな感覚があったのかと思えるほど痛々しい快感が押し寄せ、それが下半身から吐き出されるのを感じた。
「ああ、ノア。見えるかい? 吐精をするとこうやって消えていくんだ。それがこの国の魔力を支えるんだよ……」
激しい疲労感と、さっき吹き飛んだ羞恥が押し寄せ、喉の奥が締められたように苦しい。そして蕩々と涙が流れて止まらなかった。
「泣くほどよろしかったですか? しかしルイスは元来、貴殿に奉仕するための要員ではございません。明日からはお一人で責務を果たせれますよう」
アシュレイは険のある声色で慇懃無礼に言い放つ。僕の中のなにかがビリビリに破かれる音がした。背後のルイスが何かを言おうと息を吸う音を遮り、嗚咽を堪え、声を振り絞る。
「申し訳、ございま、せん……明日より……1人で責務を……果たします……」
アシュレイは笑いで僕の謝罪を一蹴し、背を向け歩き出す。そして聞こえる音量の侮蔑を吐き捨て戸を押した。
「いい気なもんだ」
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