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第26話 魔法使い総火力演習(3)
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「最後の最後にホシを引くなんてな」
真下は誰もいなくなった森を見ながら要に言う。
要と真下は幻術を破り、吊るしていた中年男性の縄を解いた。中年男性は真下の指示通り下の小屋の手下とは合流せず、国道のほうに歩いて行った。下の小屋には真下の手配した警察が到達しており、身柄を拘束されているからだ。
「お前の探偵業は儲かってないのか? 金なんて請求して」
「目には目を、金には金をだ。関連があったにせよ本命でもなし、単なる会社の横領だ。ああいう輩は金を没収されるのが1番こたえるんだよ」
真下はそう言い放って少し歩き出す。要と真下は幻術の中での拷問の末、中年男性が探していた人物ではないことを悟った。
「そんなことより円華への言い訳をどうするんだ。テンパってあんなこと言い出して。私に両親などいないぞ?」
「今日の演習で最後って決めたのに、こんな時に限ってイレギュラーなことばかりだ。円華もそうだが、藤堂さんに殺される」
真下は振り返って要を見る。
「あの2人のお母さんだよ」
「へぇ……どんな人?」
要は少し考え込むが、ため息をつく。
「円華と……お前に似てるな。愛情深い肝っ玉かーちゃんだ」
「ははっ、それはつまり、演習は私の両親の仇にしろってことか?」
「物わかりが良くて助かるよ」
「そのかーちゃんに言われたのか? もうこんなことはやめろって」
要は黙った。真下にも同じことを忠告され続けていたからだ。要自身今日まで決心がつかない部分があった。
「お前の言葉を軽んじてたわけじゃない」
真下は吹き出してまた歩き出した。
「お前が納得できたならよかったよ。そういう小さなわだかまりが人生の道筋を作っていくんだ。もういい加減観念しろ」
「なにをだよ?」
要は真下に食い下がるが、その質問だけには答えなかった。
要と真下が到着するなり円華が飛び出してきた。
「お父さん! 真下さんの仇は取れたの?」
その後に続くように藤堂家の2人が車から降りた。
要は真下を見る。その無責任さに真下は辟易した顔で円華に近づく。
「円華、今まで黙っててごめん。まさか円華の友達が来る時に限ってこんなことになるとは思わなかったんだ……」
円華は藤堂家の2人がいる手前、そんなことはないと無下に言えない様子だった。真下は自分の下に敷いてあった上着を愛おしそうに撫でたあと、名残惜しそうに円華に返した。
「仇は取れた。両親のことは……」
そう言うと真下はボロボロ涙を流し始めた。円華はそれをオロオロと見守っていた。
「お前、なに泣いてんだよ!?」
真下に両親などいない。演技にしては大袈裟すぎて、バレるのを恐れた要は駆け寄って肩を抱いた。円華に聞こえないように小声で言う。
「もう、そういうのいいからさっさと撤収しろ」
真下は要の腕を払って立ち上がる。
「お前らと会う口実がなくなるから悲しくなるんだろうが! 用が済んだら使い捨てか?」
際どい暴露に要は慌てふためく。
「別に今生の別れとは言ってないだろ! 今日は早く帰れって言ってんだよ!」
「はいはい、円華! これで演習は終わりだが、一流の魔女は幻術に自分の魂を入れられる。それができるまでは修行は終わらんぞ!」
「うるせーよ、なにが魔女だ! 警察待たせてんだろ! 親の仇を引き渡してこい!」
真下は何かを言いかけたが、観念して黙った。流石にこれ以上は円華も不審に思うと感じたのだろう。円華の不安そうな顔を見て要もはやく真下の退場を願った。
真下は一瞬円華を見る。涙を拭って森の中へ歩き出す。
「じゃあね」
要は円華を注意深く見ていた。円華が真下を引き止めたそうに思いつめた顔をしていたからだ。しかし円華は一言も発せず、森の中に消えていく真下を見守っていただけだった。
真下は誰もいなくなった森を見ながら要に言う。
要と真下は幻術を破り、吊るしていた中年男性の縄を解いた。中年男性は真下の指示通り下の小屋の手下とは合流せず、国道のほうに歩いて行った。下の小屋には真下の手配した警察が到達しており、身柄を拘束されているからだ。
「お前の探偵業は儲かってないのか? 金なんて請求して」
「目には目を、金には金をだ。関連があったにせよ本命でもなし、単なる会社の横領だ。ああいう輩は金を没収されるのが1番こたえるんだよ」
真下はそう言い放って少し歩き出す。要と真下は幻術の中での拷問の末、中年男性が探していた人物ではないことを悟った。
「そんなことより円華への言い訳をどうするんだ。テンパってあんなこと言い出して。私に両親などいないぞ?」
「今日の演習で最後って決めたのに、こんな時に限ってイレギュラーなことばかりだ。円華もそうだが、藤堂さんに殺される」
真下は振り返って要を見る。
「あの2人のお母さんだよ」
「へぇ……どんな人?」
要は少し考え込むが、ため息をつく。
「円華と……お前に似てるな。愛情深い肝っ玉かーちゃんだ」
「ははっ、それはつまり、演習は私の両親の仇にしろってことか?」
「物わかりが良くて助かるよ」
「そのかーちゃんに言われたのか? もうこんなことはやめろって」
要は黙った。真下にも同じことを忠告され続けていたからだ。要自身今日まで決心がつかない部分があった。
「お前の言葉を軽んじてたわけじゃない」
真下は吹き出してまた歩き出した。
「お前が納得できたならよかったよ。そういう小さなわだかまりが人生の道筋を作っていくんだ。もういい加減観念しろ」
「なにをだよ?」
要は真下に食い下がるが、その質問だけには答えなかった。
要と真下が到着するなり円華が飛び出してきた。
「お父さん! 真下さんの仇は取れたの?」
その後に続くように藤堂家の2人が車から降りた。
要は真下を見る。その無責任さに真下は辟易した顔で円華に近づく。
「円華、今まで黙っててごめん。まさか円華の友達が来る時に限ってこんなことになるとは思わなかったんだ……」
円華は藤堂家の2人がいる手前、そんなことはないと無下に言えない様子だった。真下は自分の下に敷いてあった上着を愛おしそうに撫でたあと、名残惜しそうに円華に返した。
「仇は取れた。両親のことは……」
そう言うと真下はボロボロ涙を流し始めた。円華はそれをオロオロと見守っていた。
「お前、なに泣いてんだよ!?」
真下に両親などいない。演技にしては大袈裟すぎて、バレるのを恐れた要は駆け寄って肩を抱いた。円華に聞こえないように小声で言う。
「もう、そういうのいいからさっさと撤収しろ」
真下は要の腕を払って立ち上がる。
「お前らと会う口実がなくなるから悲しくなるんだろうが! 用が済んだら使い捨てか?」
際どい暴露に要は慌てふためく。
「別に今生の別れとは言ってないだろ! 今日は早く帰れって言ってんだよ!」
「はいはい、円華! これで演習は終わりだが、一流の魔女は幻術に自分の魂を入れられる。それができるまでは修行は終わらんぞ!」
「うるせーよ、なにが魔女だ! 警察待たせてんだろ! 親の仇を引き渡してこい!」
真下は何かを言いかけたが、観念して黙った。流石にこれ以上は円華も不審に思うと感じたのだろう。円華の不安そうな顔を見て要もはやく真下の退場を願った。
真下は一瞬円華を見る。涙を拭って森の中へ歩き出す。
「じゃあね」
要は円華を注意深く見ていた。円華が真下を引き止めたそうに思いつめた顔をしていたからだ。しかし円華は一言も発せず、森の中に消えていく真下を見守っていただけだった。
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