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第17話 魔法使いたちの昼休み

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玲音はフラフラしてたので、冷凍うどんを解凍して焼うどんを作ってあげた。
玲音はうまいうまいと秒で平らげたが、それでも元気がなかったので、俺の部屋のベッドに横たわらせる。途中まだ練習すると抵抗されたので、俺が家事をする間だけ休んでもらうことにした。

一通り家事を済ませて玲音を見に行ったら、玲音はすっかり眠ってしまっていた。休日も早起きな玲音の寝顔をこんなに明るいうちから見られるのは珍しい。

玲音の前に座って玲音の顔を撫でる。以前にも同じことをしたことがあるのを思い出した。あの時は指の腹で玲音の唇を撫でて、ひどく罪悪感を覚えた。俺は起こさないようにそっと顔を近づけて玲音の唇にキスをする。顔を離した時に、玲音の見開かれた目と視線がぶつかり、軽く悲鳴を上げた。

「冬馬は俺が寝てる時いつもそんなことしてるのかよ」

玲音が乱暴に起き上がる。俺は起こしてしまった罪悪感から思わずごめん、と謝ってしまう。

「何謝ってんだよ……寝てない時にしてほしいって言ってんだよ」

さっき俺より昼飯を選んだくせに……!

喉元まで出かかったがなんとか飲み込んだ。俺は立ち上がり玲音の横に座る。俺が急に動いたから玲音はびっくりしてる様子だった。

玲音をそのまま俺の膝に沈めて、膝枕をした。持ってたスマホを取り出して、円華ちゃんとの個別チャットルームから通話をした。円華ちゃんが応答したのでスピーカーにして玲音にも聞こえるようにする。

「冬馬さん? 玲音? どうしたんですか? 珍しいですね、通話なんて」

円華ちゃんの声を聞いて玲音が飛び起きようとするが、俺が玲音の肩を押さえつけてそのままじっとしているように諭す。

「円華ちゃん、今家で玲音と魔法の練習をしてたんだけどさ、一つ教えてもらいたいことがあって」

「なぁ冬馬、俺も円華と話したい」

「玲音、玲音の声も聞こえてるから大丈夫よ。冬馬さん、教えてもらいたいことってなんですか?」

玲音は円華ちゃんに自分の声も届いてると知って、嬉しそうに肩をすぼめる。それがかわいかったので玲音の頭を撫でながら円華ちゃんに質問した。

「魔法の不履行について聞きたいことがあって。玲音が不履行自体できるようになったんだけど、大きい魔法を不履行にした時に玲音が倒れちゃって……」

「え……!? 玲音大丈夫なの!?」

「大丈夫だよ円華、冬馬が大袈裟なんだよ。さっきから起き上がらせてくれないんだよ?」

「やっぱり2人とも素敵……! 不履行についてはお父さんに教えた時にも同じことがあったから、心当たりがあるわ」

やっぱ大魔法使い円華先生は違うな……! 厨二病というより、厨二が憧れるスタイルを地でいってるからな……!

「現象魔法系の魔法使いと違って、魔法代謝系の不履行は魔力を消費しやすいんだと思います。魔法そのものの大きさを測れてないから無駄に魔力を消費するんです」

「なるほど、確かに大きい炎を不履行にしようとして最初の何回かは失敗してた。その後不履行にした途端倒れたから……」

俺は自分の感覚でやっていて、不履行の時にも魔力を消費することを玲音に伝えてなかった。

「ありがとう、円華ちゃん。俺感覚でやってたことを玲音にうまく伝えられてなかった」

「いえいえ、こんなことでよければいつでも連絡ください。玲音? 魔法の不履行に慣れてきたら、御褒美にまたシャンプーの試供品あげる!」

「本当に!? 午後また頑張る! 円華は今何してたの?」

「お父さんの誕生日に何するか考えながら、庭のお手入れをしてたところよ!」

庭のお手入れ……その優雅な響き。庭でキャンプファイヤーやってた俺たちとはえらい違いだな、と思って吹き出してしまった。

「円華、久遠さんの誕生日はいつなの?」

「もうすぐよ、来週の水曜日。もちろん冬馬さんと、玲音と作った法具がメインディッシュよ!」

来週の水曜日ってことは、演習の次の日か……。そういや、演習のことってもう円華ちゃんは知ってるのかな? でも母から課題が出ていることを考えると、まだ伝わってないだろうし、これで玲音にプレッシャーをかけるわけにもいかないし、と遂にこのことは話し出せなかった。

「誕生日のレポートお願いね、円華ちゃん。またわからないことあったら連絡するね」

「円華、ありがとな」

「いえいえ、2人とも休日を楽しんでくださいね、ごきげんよう」

ごきげんよう……。最後の締めの言葉に俺と玲音は目を合わせる。厨二と思春期の仮面を被った生粋のお嬢様なんだな、と玲音と笑った。

玲音の笑顔を見ながら髪を撫でてたら、玲音が急に真顔になった。

「どうして俺たちが演習参加するかもって円華に言わなかったの? 言ったら円華喜んだよ」

「玲音だって言わなかっただろ」

「俺がプレッシャー感じると思ったの?」

玲音がまたよくわからないことを言い出した。円華ちゃん絡みになると、途端に玲音の言ってることがわからなくなる。俺を見縊ってるのか? とも受け取れるけど、本気でよくわからなかったから、うん、とだけ答えた。

「冬馬は、そうやっていつも俺にバレないように気を使ってるの?」

「え? いつもってなに?」

本当にわからなくて少し険のある聞き方になってしまった。玲音は少し寂しそうな顔をしたのでこっちが不安になってきた。

「今日は冬馬が甘える予定だったのに……ごめん……」

そう言って玲音は俺の服を引っ張り、腹に顔を埋める。玲音の髪を撫でていたら、突然玲音が立ち上がり、練習の続きをしよう、と言いながら部屋を出て行った。
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