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番外編 ―ワンライ・SSなど―
暴れる邪心と初詣(イラスト付き)
しおりを挟む「長谷さん、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いしますね」
先に起きて裸でパソコンに向かう長谷さんに俺は挨拶をする。今日は長谷さんと暮らし始めて2回目の正月だ。長谷さんは何かを作っていて俺の言葉に気がつかない。俺は長谷さんの止まり木であるパソコンデスクまで歩いて行き、長谷さん後ろから抱きしめた。
「長谷さん、今日は何作ってるんですか?」
「おはよう、すおー」
そう言って長谷さんは俺に振り返って上目遣いをする。今話しかけられたくないのかな?
「長谷さん、それ終わったら一緒に初詣行きませんか? 長谷さんが去年美味しいって言ってた甘酒もらえますよ?」
去年、長谷さんを家から出すのにめちゃくちゃ苦労した。根本的に面倒くさがりの上、超絶インドアなのだ。モノで釣らないと長谷さんを動かすことはできない。
「周防、今年の予定ができたからちょっと時間いい?」
突然の業務口調に俺は抱きしめてた手を戻して、はい、と返事をした。
「まず、アメリカ研修の時周防も暇だろうから日常会話程度の英語はできるようにして。2人で行きたいセミナーと、参加したいハッカソンもピックアップしたから、後で共有フォルダで確認してもらっていいかな。それから……」
「ちょっと待ってください! すみません、俺、全然英語喋れません! 1ヶ月で英語喋れるようになるなんて無理ですよ!」
長谷さんは何度か海外研修行っているかもしれないけど、俺はプライベートでも海外に行ったことがない。それに学生の頃から英語はからっきしダメだ、体が受け付けない。軽い旅行気分で長谷さんの研修について行こうとしていた俺にとっては、長谷さんが口にしたスケジュールは過酷過ぎた。なんだセミナーって。百歩譲ってセミナーはいい。ハッカソンは無理ゲーすぎるだろ。
「英語は俺が教えるよ。今日から日常会話を英語にしよう」
「どこぞのECサイト運営会社ですか……。無理ですって……それに長谷さんそんなに英語が堪能なんですか?」
「小学校の頃、親の仕事の関係で上海のインターナショナルスクールにいたから。訛りはあるかもしれないけど、英語自体はすおーに教えられるよ」
さらっととんでもない情報をぶっ込んでくる。長谷さんの常識が狂っているのは海外仕込みなのか!?
「長谷さんは教えられるかもしれないですけど……俺は無理ですよ……」
「そう、ベッドでも英語にしようと思ったけど」
「英語覚えます。めちゃくちゃ頑張ります。今日から英語にしましょう」
長谷さんの言葉を遮って俺は高らかに宣言する。やばい、長谷さんの英語のベッドシーンとか考えるだけで下半身が爆ぜそう。我慢ができなくなって、俺は長谷さんに濃厚なキスをする。唇を離しても興奮冷めやらない俺の鼻息を感じたのか、長谷さんは俺を上目遣いで見て言う。
「すおー、じゃあ今日の夜からにしよ。初詣帰ってきたら残りの予定も確認してね」
「はい、こんなにウキウキする正月は初めてです。長谷さん大好きすぎて最悪の場合死に至る」
「初詣行く?」
俺の死を無視して長谷さんは質問を叩き込んでくる。このまま長谷さんの英語教室を開講してもらいたいが、甘酒を堪能する可愛い長谷さんも見たい。うーんと悩む俺を置いて長谷さんはクローゼットに歩き出した。俺は慌ててさっき聞いてもらえなかった挨拶をリピートする。
「長谷さん、今年もよろしくお願いします」
「俺の方こそよろしくね、すおー大好き」
俺は走って長谷さんを捕まえて、そのままベッドに押し倒した。毎日こんなんじゃダメだってわかっていても、長谷さんがかわいすぎて抑えられない。今年はこの邪心をどうにか折り合いつけられるように、後で初詣行ったら祈願しようと思う。
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