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裸族の常識と生態調査について

誰がためのシステム

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あの巨大なシステムはそのために作ったの!?
あれサービスとして成り立つレベルだったぞ!

その時、あのチグハグな退職理由のことを思い出した。

本当は一緒に仕事ができて嬉しいです! みたいな反応をされると思ったのに、まさか副業のことで問い詰められるとも思ってなかったんだろう。

前日俺が風邪を引くっていう失態を犯したせいで長谷さんの中の予定が狂ったんだ。なんか上手いことやって自然に一緒に仕事をするはずが、あんな唐突になって、副業してるみたいな流れになってしまった。そして取ってつけたように副業の言い訳を考えたから、退職理由がおかしなことになったんだ。

俺は……なんて失礼なことをしたんだ……!
ついでにさっさと終わらせてセックスしたいとか言ったぞ!!

黙ってた山田さんが意を決したように突然喋り出した。

「正直長谷さんが言ってることよくわからなかったんですけど、周防さんは家にいる時の長谷さんが嫌いなんですか?」

「え、同じこと言われたんだけど! 何が原因でそう思われてるのかわからないんだよ!」

「ありのままに話すと……周防さんが会社にいる時みたいなことをさせる……って。あ、あのコスプレとかは全然平気なんで、もうそういうくだらないことでいちいち落ち込まないでください。恋人同士の話なんて驚きもないので」

なんで俺がコスプレさせてるみたいになってるんだよ……。そもそも家で長谷さん服なんか着てないぞ……。

って、ああああああああああああ!

あのガウンか!? 
そんなにあのガウンが憎いのか!?

「山田さん、今心の底から思い当たることがあった。ありがとう、帰ったら燃やす」

「多分違いますよ」

え?
お前本当にシャーマンかなんかなの?

「長谷さん、会社での立場上周防さんに甘えられないんじゃないでしょうか」

家で長谷さんは甘ったれた声で俺のこと呼びますー。ついでに裸だし家事もしませんー。お前の知らない顔いっぱい知ってますー。

「本当はこうしたいっていうの、年上だとなかなか言いづらいんじゃないですかね。転職理由もそれが大きい気がしましたよ」

思わず、え? と小さい声が漏れ出してしまった。

「もっと一緒にいたいのに立場上言うこともできず、本当は仕事も手伝いたいのにチームも違うから手伝えず、家では変なコスプレでオフィスプレイを強要されて」

最後のは違うが否定なんてしてる場合じゃなかった。

「別に周防さんの願いを叶えるためだったら、あんな巨大なシステム作る必要ないじゃないですか。一緒に仕事したかったのは長谷さんの方だったんじゃないですかね?」

「本気で言ってること分からねぇから、日本語で言ってくれ。長谷さんはどうしてもらいたいんだ?」

ちょっと語気が強くなってしまったせいで山田さんが怯んでしまった。

「そういうふうに、なりふり構わないちゃんとした本音が聞きたいんじゃないですか? 仕事上尊敬してるとか、そういうの抜きに」

わからない。

「わからないって顔してますけど、それを長谷さんにぶつけてみてはいかがでしょうか? すみません、パンケーキ食べていいですか?」

山田さんは俺が混乱してる前で、スイーツらしくインスタ撮ってパンケーキを食べはじめた。

山田さんは俺の分のパンケーキもペロリと食べて、見ているこっちが胸焼けした。帰り道、山田さんに取り乱したことを謝った。その迷惑料はランチ代で清算されたので大丈夫ですと清々しい回答をもらった。

「別に今のままもどかしい感じでもいいじゃないですか、まだ付き合って1年経ってないんですよね?」

山田さんがランチバッグをぶらぶらさせながら聞いてきた。俺は心が晴れなかった。それがなんでだかよくわからなかったがついポロっと言ってしまう。

「でも長谷さんが転職しちゃう」

「そうそう、そういうのちゃんと長谷さんに言った方がいいですよ」

「なんで長谷さんは山田さんなんかに相談するんだ」

「心の声がはみ出してますが、そういうのは私じゃなくて長谷さんに言ってくださいね」

「山田さんは彼氏とうまくいってるの?」

「少なくとも周防さんよりは悩みはないでーす」

「山田さんの彼氏が俺みたいだったら何ていうの?」

「そういうことは人に聞かず私に言えって言いまーす」

山田さんと長谷さんは似ている。だからこの心のモヤモヤの原因を探そうと押し問答をオフィスに着くまでやり続けた。

最終的にわからないことは長谷さんにちゃんと聞け、しか言われなかった。
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