システムエンジニアがとんでもない開発をはじめました。

まちがった尿道開発で世界線変わったんだけど質問ある？

俺は責任を全うする

俺が肩を貸し諜報部員を店の外まで連れ出すと、長谷さんとハンティングスイーツの2人がいた。
女ぁ！ 長谷さんはうちの会社に好きな人はいないって言ってただろうが！ 何をやってるんだ！ お前は！

「あ、大丈夫ですか？ 私一緒の方向なんでタクシーで連れて帰ります！」

とハンティングスイーツが言った。
長谷さんではなく俺に。正確には諜報部員に。

女ぁ……今までひどいこと言ってすまんかった……。
本当にすまんかった……！
見直したぜ……！

「みんなひどいですよねー、知らん顔で帰っていきましたよ！ 長谷さんだけですよ心配してたの！ あ、タクシー来ました！」

諜報部員はハンティングスイーツと共にタクシーに乗せられて帰っていった。


思わぬ状況で長谷さんと2人きりになってしまう。長谷さんは多分路線からいって俺とは逆の方向だ。長谷さんはタクシーの走って行った方を見ていた。

「長谷さん」

意を決して話しかける。
長谷さんは振り返って俺を見た。

「この前のこと、忘れてください、というのは都合がいいことはわかってます」

長谷さんは少し驚いている。

「ただ、それについてどう償えばいいかわからないんです」

これは俺の本心だ。

「長谷さんの仕事を本当に尊敬してて……これからも一緒に働きたいと思うのは身勝手だということもわかります」

これも本心だ。

「心情的に許せないのであれば、転職も考えます」

さっき歓迎会だったけど。
長谷さんは黙ってる。確かに突然すぎた。

「今日この場で解決する問題じゃないってこともわかってます」

少し間が空いたが、長谷さんに誠意は伝わっただろうか。

「周防の希望は、お互いあのことを忘れて、仕事は続けたいってこと？」

俺の希望……考えてなかった。
でも要約するとそうなのか。長谷さんが俺を許してくれて、また一緒に働きたい……身勝手すぎるけど……。

「……はい」

自分でもよくわからず俯いてしまった。
本当はあの日に戻ってなかったことにしたい。それはどんな犯罪者だってそう思ってるだろう。
長い無言が俺の精神を蝕んでいく。
もう……話すことも嫌になったかな……と思ったその時長谷さんが言った。

「それは、できない」

その言葉で咄嗟に顔を上げる。
長谷さんは、ものすごく苦しそうな表情だった。

足元から崩れ落ちそうだった。

でも……。

俺は……俺は、責任を全うする。

今の一瞬で、いろんな保身に逃げ出しそうになったけど。

俺は、責任を全うするんだ。

「わかりました。本当に申し訳ございませんでした！」

俺は深々と礼をして、そのまま踵を返し駅まで走った。
明日の納品が終わったら、土日で転職活動に入ろう。迷惑がかからないように来週から引継書を作ろう。抱えているプロジェクトの割り振りを考えよう。

走りながら生きることばかりを考えたけど駅に着いたらポツリと思った。

長谷さんをずっと好きでいよう。