33 / 47
第32話 自由な大地
しおりを挟む
ミオは宝物を棚に並べている。こだわった棚の割に質素で、それがとてもミオらしい。
「ミオ、そろそろ寝るぞ」
「うん、ちょっと待って」
いつものやりとりに少しだけ心が安らぐ。しかし、この平穏を壊してでも、言わなければならないことがある。
「ミオ、その宝物は明日は置いていかないか?」
「え? なんで?」
「なくしてしまうかもしれないだろ」
「なくしてしまわないようにいつも持ち歩くんだよ。レジーはなんにもわかってないな」
ミオは最後の宝物を棚に置いたのか、サスペンダーを外しはじめた。
「それに……レジーがあっちの大陸に残りたいって言い出すかもしれないだろ」
唐突な鋭利な言葉と、視線を向けられ、俺は一瞬たじろぐ。
「そんなことにはならない」
「そうならないように、俺にそんなこと言うんだろ」
ミオの目は、竜神の目だった。二百年程度生きているという、様々な不条理を見つめてきた目。
「ユキは、メアを残して死ぬ。そして悲しみの中で生き抜くメアを見送って、俺とレジーは生きていかなければならない。アデルにしてもそうだ。そして例えレジーが皇帝と結ばれようとも、レジーは皇帝を見送って生き続けなければならない」
達観した、悲しい真実を突きつけるミオの目に憂いはなかった。
「でもユキにメアを愛することをやめさせることなんて誰にもできない。アデルが兄と和解したいと願う心を誰も止められることなんてできない。そしてレジー。レジーが皇帝と対峙した時、彼に愛されたいと願うことなんて誰にも止めることはできないんだ」
「ミオ、俺はもう……」
「レジーにこんな悲しい運命を背負わせたんだ。たかだか何十年かくらい、レジーのことを待つなんて大したことないよ。でも俺は絶対に離れない。帝国の山で静かに暮らして、レジーの側から絶対に離れないよ」
執着や、嫉妬、そんなことを超越した愛に、俺はひとつ息を吐いた。ミオの目から竜神の気配が抜け、いつものように肌着になって走ってくる。そうしていつもの唇をくすぐるようなキスをした。
「レジー?」
肌着を片手で辿々しく脱がしにかかった俺を、ミオの幼い目が咎める。
「毎回破いてしまっては不経済だろ?」
俺の片手に痺れをきらしたミオが、自分で肌着を脱ぐ。それを労うように俺は丁寧にキスをした。
「レジーは、レジーは。こういうことって、あんまりしたくない人なんだと思ってた」
ミオは不平を零しながら、どんどんと竜神に変化する。そのフカフカな胸に顔を埋め、片手を首に手を回し、顔を手繰り寄せる。
「ミオは、俺のことをちっともわかっていないな。どうしたらミオにわかってもらえるのだ?」
「レジーのことはもうなんでも知ってるよ! レジーの気持ちがいいところを知っているのは俺だけなんだ!」
「じゃあなんでさっきのようなことを言うのだ? ミオ、俺を手放さないでくれ。あんなことを言わないでくれ。またこの自由な大地に帰ってきて、たくさん悲しんで、たくさん笑う。どんな不条理に感情が振り回されようと、ミオと一緒がいいんだ」
「レジー……」
「今日もミオの宝物にしてくれ。片手が戻ってきたら、ミオにもらった分だけ愛を返す」
「あぁ……なんで……」
言葉を詰まらせ、今日も竜神が俺を抱く。竜神は俺さえ知らない体をこじ開け、秘密を暴いていく。激しい抽送に体は濡れ、最後の咆哮で大地が濡れる。
そしてその雨に濡れない2人は、まるで石のように耳をそばだて、ひっそりと眠るのだ。
「ミオ、そろそろ寝るぞ」
「うん、ちょっと待って」
いつものやりとりに少しだけ心が安らぐ。しかし、この平穏を壊してでも、言わなければならないことがある。
「ミオ、その宝物は明日は置いていかないか?」
「え? なんで?」
「なくしてしまうかもしれないだろ」
「なくしてしまわないようにいつも持ち歩くんだよ。レジーはなんにもわかってないな」
ミオは最後の宝物を棚に置いたのか、サスペンダーを外しはじめた。
「それに……レジーがあっちの大陸に残りたいって言い出すかもしれないだろ」
唐突な鋭利な言葉と、視線を向けられ、俺は一瞬たじろぐ。
「そんなことにはならない」
「そうならないように、俺にそんなこと言うんだろ」
ミオの目は、竜神の目だった。二百年程度生きているという、様々な不条理を見つめてきた目。
「ユキは、メアを残して死ぬ。そして悲しみの中で生き抜くメアを見送って、俺とレジーは生きていかなければならない。アデルにしてもそうだ。そして例えレジーが皇帝と結ばれようとも、レジーは皇帝を見送って生き続けなければならない」
達観した、悲しい真実を突きつけるミオの目に憂いはなかった。
「でもユキにメアを愛することをやめさせることなんて誰にもできない。アデルが兄と和解したいと願う心を誰も止められることなんてできない。そしてレジー。レジーが皇帝と対峙した時、彼に愛されたいと願うことなんて誰にも止めることはできないんだ」
「ミオ、俺はもう……」
「レジーにこんな悲しい運命を背負わせたんだ。たかだか何十年かくらい、レジーのことを待つなんて大したことないよ。でも俺は絶対に離れない。帝国の山で静かに暮らして、レジーの側から絶対に離れないよ」
執着や、嫉妬、そんなことを超越した愛に、俺はひとつ息を吐いた。ミオの目から竜神の気配が抜け、いつものように肌着になって走ってくる。そうしていつもの唇をくすぐるようなキスをした。
「レジー?」
肌着を片手で辿々しく脱がしにかかった俺を、ミオの幼い目が咎める。
「毎回破いてしまっては不経済だろ?」
俺の片手に痺れをきらしたミオが、自分で肌着を脱ぐ。それを労うように俺は丁寧にキスをした。
「レジーは、レジーは。こういうことって、あんまりしたくない人なんだと思ってた」
ミオは不平を零しながら、どんどんと竜神に変化する。そのフカフカな胸に顔を埋め、片手を首に手を回し、顔を手繰り寄せる。
「ミオは、俺のことをちっともわかっていないな。どうしたらミオにわかってもらえるのだ?」
「レジーのことはもうなんでも知ってるよ! レジーの気持ちがいいところを知っているのは俺だけなんだ!」
「じゃあなんでさっきのようなことを言うのだ? ミオ、俺を手放さないでくれ。あんなことを言わないでくれ。またこの自由な大地に帰ってきて、たくさん悲しんで、たくさん笑う。どんな不条理に感情が振り回されようと、ミオと一緒がいいんだ」
「レジー……」
「今日もミオの宝物にしてくれ。片手が戻ってきたら、ミオにもらった分だけ愛を返す」
「あぁ……なんで……」
言葉を詰まらせ、今日も竜神が俺を抱く。竜神は俺さえ知らない体をこじ開け、秘密を暴いていく。激しい抽送に体は濡れ、最後の咆哮で大地が濡れる。
そしてその雨に濡れない2人は、まるで石のように耳をそばだて、ひっそりと眠るのだ。
0
お気に入りに追加
131
あなたにおすすめの小説
帝国皇子のお婿さんになりました
クリム
BL
帝国の皇太子エリファス・ロータスとの婚姻を神殿で誓った瞬間、ハルシオン・アスターは自分の前世を思い出す。普通の日本人主婦だったことを。
そして『白い結婚』だったはずの婚姻後、皇太子の寝室に呼ばれることになり、ハルシオンはひた隠しにして来た事実に直面する。王族の姫が19歳まで独身を貫いたこと、その真実が暴かれると、出自の小王国は滅ぼされかねない。
「それなら皇太子殿下に一服盛りますかね、主様」
「そうだね、クーちゃん。ついでに血袋で寝台を汚してなんちゃって既成事実を」
「では、盛って服を乱して、血を……主様、これ……いや、まさかやる気ですか?」
「うん、クーちゃん」
「クーちゃんではありません、クー・チャンです。あ、主様、やめてください!」
これは隣国の帝国皇太子に嫁いだ小王国の『姫君』のお話。
【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?
との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」
結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。
夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、
えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。
どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに?
ーーーーーー
完結、予約投稿済みです。
R15は、今回も念の為
えぇ、死ねばいいのにと思ってやりました。それが何か?
真理亜
恋愛
「アリン! 貴様! サーシャを階段から突き落としたと言うのは本当か!?」王太子である婚約者のカインからそう詰問された公爵令嬢のアリンは「えぇ、死ねばいいのにと思ってやりました。それが何か?」とサラッと答えた。その答えにカインは呆然とするが、やがてカインの取り巻き連中の婚約者達も揃ってサーシャを糾弾し始めたことにより、サーシャの本性が暴かれるのだった。
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる