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第9話 奉仕 ※

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 夕食をご馳走になったが、あれから少年ダーニャを見かけなかった。ダーニャは人族だったことから犯罪者の末裔なのだろうが……。

 用意された客用の寝室でごろりと横になる。そして森で出会った魚の化け物や、活気ある街、それに街の家賃は高いというミオの言葉を一気に思い出した。

 この大陸で人族の親が死亡したり蒸発した場合、残されたこどもは体を売るしか生き残る術がないのだろう。体格や運に恵まれたものならば他に生き方があるかもしれない。しかしミオやダーニャのようなか弱き子は、選べる術も少なかろう。

 少し開いた窓から風が吹き込みカーテンが柔らかく揺れる。その時階下から物音がした。ドタバタと廊下を歩く音だったが、ただごとではなさそうな気配だ。ベッドから起き上がり、階下に急ぐ。

 階段を後3段残したところで、サニアに引きずられるダーニャが見えた。ダーニャは体を反対側に倒して抵抗するがズルズルと玄関に引きずられている。

「サニア、こんな時間にどこへ行くのです」

「ああ、レジー。起こしてしまったかい? すまないね。普段はこんな駄々をこねないんだけど。ダーニャ、ご褒美だよ」

「ダーニャをどこへ連れて行こうとしているのです」

「仕事だよ。ほら、ダーニャ。離れたところでご褒美がもらえるよ。いい子だから」

「今日はサニア、貴方がダーニャを使うのですか?」

 サニアはダーニャを引っ張っていた手を止めて俺を見つめた。そして美しい瞳が弧を描く。

「レジーには関係のないことだ」

 確かに。俺には関係のないことだし、今日止めたところで、一生の責任を取れるわけでもない。しかし、ダーニャはあまりに幼すぎ、小さな体で必死に抵抗している。

「もし、サニアが必要ならば、俺が奉仕をします。仕事ならば、その者の元へ俺を連れて行ってください」

 サニアはキョトンとした後、クスクスと笑いだした。そして窓の外を見た後、ダーニャの手を離す。

「ああ、レジー。そんなに色気のない誘い文句は初めてだよ。今日の昼間に人族の統治について教えてもらったが、そんなことまで教えてくれるのかい?」

 ダーニャが部屋に戻ったことを確認すると、サニアはゆらりと服をなびかせて階段を登ってきた。客用の寝室に2人は吸い込まれ、後から入ったサニアが扉の施錠をする。

「人族と交わるのは初めてだ。人族の奉仕とは?」

「そちらに座ってください」

 ゆったりとした木の椅子に座るように言い、そしてベッドからシーツを引き抜いた。サニアがなにやら不思議そうに見ている間に、俺はそれを頭からすっぽり被る。そして、腰掛けたサニアの太腿を割って跪き、まだ熱を持っていない足の付け根の中心を手で撫でた。

 サニアは察してか、長い衣の随分上の方から、服を2つに開いて、雄の象徴を空気に晒した。エルフの性器を初めて見るが、人とあまり形の違いはない。違うといえば色が極端に薄いことと、体毛がないということだけだった。

 俺はシーツがずり落ちないように、サニアの雄を咥える。そして舌で丹念に濡らした。頭の上から息が漏れる音がする。

「あぁ……あ、あぁ、レジー、エルフもそうやって……愛撫をするが……レジー……とても気持ちがいいよ……」

 だんだんと芯を持ちはじめた雄が俺の口の中を圧迫していく。

「んっ、はぁ……ああ、そうか、皇帝にも、そうやって奉仕を……」

 サニアの息づかいと言葉で、皇帝の寝室の空気が体を染めていく。若き皇帝の息づかいで部屋を埋め尽くす光景。

 先先代の皇帝は厳粛で高潔な人だった。しかしその子息である先代の皇帝は奔放であった。それは帝国内が安泰であったことが災いしたのかもしれない。酒に溺れ、女に溺れ、汚職は横行し、国は荒れ、退廃の限りを尽くした。貴族がこぞって生娘を献上したお陰で、体面を保つために急遽後宮が造られたほどに。しかし、派手に遊ぶ割に熱望された男子を授かることがなかった。後宮に詰め込まれた100人を超える妃で男子を授かったのはただの1人。

 先代皇帝は酒で内臓が傷み、現皇帝が玉座に上がったのは若干10歳。皇帝の母は後宮の政治で痩せ細ってしまう。その母を救い、先代の浪費により逼迫した財政を立て直すには、後宮を取り壊すほかなかった。そう進言した手前、皇帝に奉仕するのは当然のことだった。

「なにか考え事をしているのか……? それに……なぜシーツを被るのだ? 皇帝にそうするように言われたのか?」

 シーツを剥ぎ取られそうになり、両手でそれを掴んだ。シーツに気を取られている間に、サニアの足がスッと俺の股間にあてがわれた。

「ああ、そうか。人族の中でもレジーは雄々しいものな。皇帝に雄に奉仕させていると認識させないためにシーツを被っていたのか」

 サニアの足がいつの間にか熱を持った俺の足の付け根をやわやわと撫でる。

「でも、シーツを被って隠したかったことはそれだけかな? ほら、ここが膨らんでいる」

「んうっ……!」

 強く踏まれ、サニアを咥える口の隙間から声が漏れ出してしまう。

「称号も名誉もある立派な雄なのに、皇帝の雌になりたかったのか」

 サニアの言葉に顔に血液が集まり、視界が急に狭くなった。その隙を突かれ、俺はなされるがまま後ろに押し倒される。

「レジー、口の奉仕だけでは物足りない。レジーが嫌だったらダーニャに仕事をさせるよ。こんなにさせたのはレジー、君がとても可愛いからなのに」
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