LΛMBDΛ::ドローン兵器は英雄をメス堕ちさせる野望を抱く

大田ネクロマンサー

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本編

第21話 代弁者

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<ラムダお帰りぃ! お前がどっか行ってからカイはショックでうまく喋れなくなっちゃったぞ! どうやって仕事してるか謎なくらいだぜ。会話以外のコミュニケーションをと思ってな、腕の他に偽装性液をサービスしとくぜぇ! カイも変な意地張ってねーで、今日は一晩中可愛がってもらえよな!>

「カイ、修復技師ドローンも来たようなのでソファを借りてもいいですか」

「あ……」

 僕が待って、と言う前にラムダは僕から離れソファに向かう。ソファの端に座ったラムダの腕に、勝手に入ってきた宅配兼技師ドローンが走り寄る。円柱状の技師ドローンから様々な触媒が飛び出て、ラムダのパッチを剥がして作業に取りかかった。

 ラムダは僕においで、と片手をあげて僕を胸に誘う。僕が動けずにいると、ラムダは思いつめた顔をする。だからゆっくり近づいたら急に腕を引っ張られ、昔みたいにラムダの膝の上に座らされた。僕が首筋にすり寄ると、ラムダはいい子をしてくれる。

「な、な、なん……なんで……」

「なんであの日あんなことをしたのか? ですか?」

 言いたいことは全てお見通しだとラムダは僕の頭を撫でながら質問してくれる。僕はコクコクと頷く。あの日のラムダの本心を知りたかった。ラムダがどこかで僕の状況を聞いて、自分を犠牲にしているのではないかと案じていた。

「あの日私は好奇心から映像修復処理の暴走を止めなかった。そうしている間にカイが倒れた。あんなに洞察力のあるカイが、私の行動で、あの映像でどれだけ狼狽して、注意力が低下していたか、その時に思い知らされました。私はカイを傷つけ、そして私のせいで銃弾に倒れた。私は自身の存在意義を自問し、これから1人でカイを守り抜くことに限界を感じました」

「な、なに、なん……なん」

「カイはすでに今見えているものとだけ対峙しているわけではない、それを実感しました。そして私が見せた2つの映像でカイの運命を変えたとも考えました」

「ち、ち、ちあ、ちが」

「私はその責任を全うすべく、隣国へ赴き内戦を止めることを決意しました」

「あぅ……ラムダ……」

「それがこんなにカイを傷つけるとも、私自身もカイと離れることがこんなにつらいものだとも、思いませんでした。でも離れたら、カイが私に教えてくれたことをとても理解できるようになりました」

「ラムダは……」

「あの映像の約束も大切なものかもしれませんが、カイへの愛はそれ以上です。内戦も終わらせましたし、私がどれだけカイを愛しているかわかっていただけましたか?」

 ラムダが僕の顔を覗き込む。僕はとてつもなく壮大なラムダの策略に呻き声すら出せなかった。

「ダイナマートの”おいたん“は騙せても、カイはあのくらいじゃないと騙せないと思ったんです。それは反省しています。もしカイに新しい恋人がいればそれを受け入れるつもりで来ました」

「う、うう、う」

「でも私にキスをくれた」

 ラムダが首の頸椎部分を掴んで僕を引き寄せた。そして技師ドローンの作業時間のカウンターを横目で見る。

「カイ、私にキスをして、お風呂に入ってきてください。言っている意味がわかりますか?」

 言っている意味はわかるが、僕は躊躇いラムダの胸に当ててた手を強く握った。

「いい子はできますね?」

 やや強い語気でラムダは言い放つ。僕はなんとかごまかせるだろうかと漠然とした疑問を持ちながらも、おずおずとラムダにキスをして、風呂に向かった。


 こんなに隅々まで体を洗ったのは、以前までのような楽しみだからという理由ではなかった。何度も何度も悔やんだ最後のセックスを思い出す。ラムダを満足させられなかった最後のセックスを。
 直接的に何の関係もない事柄でも、記憶に根差したそれは、自信を失わせるには十分だった。もうこのままのぼせたと言って、うやむやにできないだろうか。
 しかし、僕は見誤っていたのだ。

「カイ、のぼせていますか? 心配なので開けますね」

 風呂に一緒に入るという習慣が途絶えて久しいのに、ラムダは迷わず風呂に乱入してきた。風呂の縁に腰を落とし、修復が終わった腕を見せびらかす。

「どうですか? カイのお気に入りのキズは無くなってしまいましたが、感覚は以前と同じです! カイ、もう出ますよ」

「ままま、ま、ままって」

「待てません」

 そう言って湯船の中から僕をすくうように持ち上げる。許容というものを知らないのだ。

「あらあら、こんな状態のカイのペニスを見るのは子どもの時以来ですね。初めて勃起した時のことがまるで昨日のことのようです。普通の男の子なら隠すのにカイはとても素直に私に報告してくれて……もちろん私の大事なコレクションに入っていますよ。あの時の顔っていったら……ふふふ」

 映像を見るまでもないくらいラムダはペラペラと思い出を語り、僕をびしょびしょのまま洗面台に乗っけた。ラムダは僕をバスタオルで包んだらそのまま持ち上げてベッドルームまで担ぐ。ファジーという概念がないのだ。
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