31 / 43
第30話 幾人かの魔法使い
しおりを挟む
鎌倉に着く頃にはもう日が傾いていた。前に来た時はいろいろ寄り道や観光をしていたから、この時間だと玲音は自力で前の契約者の家を探し出している可能性が高かった。
俺と母は北鎌倉で電車を降りて、記憶のないまま通った道を遡って歩いた。焦燥感に駆られ早歩きになってしまい、何度か母に咎められた。
そして目星をつけていたあたりになって、この1週間ずっと悩まされていた胸の痛みが伝わってくる。近くに玲音がいる。
和風だか洋風だかわからない屋敷のような家があった。あたりは夕闇に包まれていてはっきり見えなかったが、玄関先に誰かが立っているような気がした。
俺が玲音、と呼ぼうと息を吸い込んだ瞬間、母は後ろから手を伸ばし俺の口を塞ぐ。
母はそのまま俺を引きずって玄関の近くまで移動した。
「お父さん……」
玲音の声が聞こえる。なんて声を出してるんだ! 怒りだか悲しみだかわからない感情が俺の顔を熱くした。
玄関先の門柱の陰から玄関を見る。母は信用していないことがわかるくらい、きつく俺の腕を掴んでいた。
「玲音、新しい飼い主に捨てられたから戻ってきたのか?」
玄関先の男は嘲笑するかのように玲音に言った。
玲音は俯いて、何も言わず立ち尽くしていた。
「もうお父さんは玲音のお父さんじゃないんだよ。娘ができたんだ。この前見ただろう、もう玲音はいらないんだよ」
この言葉を玲音がどんな気持ちで聞いてるのか、そう思うと胸が張り裂けそうだった。
その時玲音が急に門の方に振り返った。
「冬馬……?」
なんで玲音は俺がいることわかったんだ、そこから絶対見えねーだろ!
俺は変な汗が一気に噴き出す。そんな俺に構わず母が立ち上がる。
「どうも、うちの玲音がご迷惑をおかけしたようで」
母の口調は社交辞令とわかるくらい丁寧かつ怒りに満ちていた。母が門をくぐりツカツカと歩き出す。さっき俺の腕を掴んでた母とは別人のようだった。
「玲音、役に立たないばかりか、魔法使いまで連れてきたのか?」
男が悪辣に言うがそれを遮って母が言う。
「ええ、2人も」
母は俺を見て立つように促す。どんなかっこ悪い登場だよ、これ。俺は立って玲音を見たが、玲音はこっちを見なかった。
「玲音の契約を解除していただけるかしら」
母は怒りを抑え、でも割と大きな声で言い放った。
男はナチュラルに笑い出す。正直ここで俺は久遠さんのことを思い出した。もしかして普通の大人なのかもしれない。でもそれは間違っているとすぐにわかった。
「玲音、お父さんと暮らしたいなら魔法使いを殺しなさい」
見た感じから普通の大人じゃないことはわかっていた。殺しなさいとか、この法治国家でいい大人が言うことではない。
玲音は動かないし、さっきまで大声張り上げてた母も黙った。俺は違う心配をしていた。いないのだ、あの不気味な女が。
俺の気が逸れている間に起こした玲音の行動に、俺も、母も息を飲んだ。
玲音は男の腹から武具を取り出した。
「玲音、やめなさい。約束を破る気なの?!」
母が叫ぶ。玲音が取り出した武具は、俺から出したバールとは比べられないくらい、立派な剣だった。俺たちとは一時も目を合わさず、剣をゆっくり構える所作で、何度も魔法使いと戦ってきたきたことが容易に想像できた。
母が足を後ろに引いたのを見た時、玲音が母に襲いかかってきた。
俺は風の魔法で玲音を牽制しようとするが、それは解除された。後ろの男が不履行にしている、そう気がついた時に、俺は全力で後ろの男に魔法を履行した。
その時母に玲音の剣が振り下ろされる。
当然防ぐだろうと思っていた母がなんの魔法も履行しなかったことにびっくりして母を見たが、母は腕で剣を止めていた。よく見ると母も玲音も青白く光っていて、2人とも同じスタイルで戦っていることに気がついた。
母は恐ろしい速度で玲音に肉弾戦を仕掛ける。
母は格闘技でもやっていたのかとんでもない速さで玲音との間合いを詰めていた。
俺は男に牽制攻撃をしていた。男は微動だにせず俺の魔法を不履行にしながら冷笑している。
なにかがおかしい。
このまま無意味に攻撃をしていても何も解決しない、そう思い、俺は一気に男に走り出した。
「冬馬!」
母が後ろで叫んでいたがもう止まれなかった。男に近づくたびにとんでもない手数の魔法を浴びたが無効にできないほどの数ではない。それに的外れな位置に履行される魔法が多かった。
俺が男に近寄った、その時男は表情を少し変え少し後ずさった。
やっぱりそうだ!
俺はすぐさま上を見た。そして魔法を上と男の両方に履行した。
その瞬間、あの不気味な女が2階の窓から飛び出して、軒下の男に命中しそうだった俺の魔法を不履行にした。女が着地する前に俺は男に走り出した。
魔法使いは物理に弱い。でも多分こいつは魔法使いではない。
渾身の力で掌底を喰らわそうと手を引いた瞬間、とてつもない風に体ごと持っていかれて宙に浮いたところにとんでもない手数の火が降り注いだ。
魔法を解除しようとするが方向感覚が失われてよくわからないまま、地面に叩きつけられてしまった。息ができない中、降ってくる魔法を回避しようと上を見たが、母が魔法を解除してくれていた。その時に、母と、そして母への攻撃を止めた玲音と目が合った。
「お父さん! あの犬やっぱり帰ってこないんだよ!」
女が甲高い声で叫ぶ。そこで以前の不気味な違和感があたり一体に立ち込める。
「お父さん、あの犬殺すから!」
そう言い終わる前に屋敷と門柱の間の地面が光り出した。
「みんなぶっ殺すから!」
女の叫び声と共に玄関までの石畳が砕けながら一気に宙に浮いた。母は俺に駆け寄りながら男と女に火の魔法を履行した。
女は魔法を解除しながらも自らも宙に浮き、さっき砕いた石を俺と母めがけて打ち込んできた。石は火で消えない、風の魔法でも重力には逆らえず石を全て防ぐことなんて到底できない。どうすればいいんだよ! 片膝をつき、立ち上がることもためらう俺の上に玲音が飛び出してきた。そして母はとんでもない量の水の魔法を履行した。
玲音は石を剣で砕き俺と母を守ってくれた。母の放った水は女の右横の石を拐い自重で屋敷の屋根に落ちた。
「玲音!」
母はそう言い、玲音に風の魔法を履行する。玲音は母の魔法で瞬時に女のところへ到達し、剣を振り上げた。
俺はこの時に、勝った気でいたんだと思う。
だから魔法が使えないと思っていた男の方を見た。
男は母に向かって、多分風の魔法を履行していた。母に岩と言っていいほどのいくつかの石が向かっていた。母の後ろから。
俺はこんな圧倒的な悪意に触れたことがなかった。男の悪意で俺は我を失ってしまい、気がついた時には母の後ろに飛び出していた。風の魔法を履行するが全然間に合わず、石の1つが俺の左胸を打ち付け、体の中から軋む音やら折れる音がした。
俺は石の衝撃で空中に投げ出され母の横を通過した。そのまま母の前に背中から倒れ、弾みで頭を強打した。まだ足りないのか地面にバウンドして横を向く形で止まった。俺のずいぶん先に不気味な女が地面に叩きつけられるのを見た気がした。その後にさっき宙に巻き上げられていただろう石があちこちに落ちてきた。
「冬馬!」
悲鳴に近い声で母が叫ぶ。俺は息を吸おうと思った。そこで電源が落ちたようにプッツリ視界が暗転した。
俺と母は北鎌倉で電車を降りて、記憶のないまま通った道を遡って歩いた。焦燥感に駆られ早歩きになってしまい、何度か母に咎められた。
そして目星をつけていたあたりになって、この1週間ずっと悩まされていた胸の痛みが伝わってくる。近くに玲音がいる。
和風だか洋風だかわからない屋敷のような家があった。あたりは夕闇に包まれていてはっきり見えなかったが、玄関先に誰かが立っているような気がした。
俺が玲音、と呼ぼうと息を吸い込んだ瞬間、母は後ろから手を伸ばし俺の口を塞ぐ。
母はそのまま俺を引きずって玄関の近くまで移動した。
「お父さん……」
玲音の声が聞こえる。なんて声を出してるんだ! 怒りだか悲しみだかわからない感情が俺の顔を熱くした。
玄関先の門柱の陰から玄関を見る。母は信用していないことがわかるくらい、きつく俺の腕を掴んでいた。
「玲音、新しい飼い主に捨てられたから戻ってきたのか?」
玄関先の男は嘲笑するかのように玲音に言った。
玲音は俯いて、何も言わず立ち尽くしていた。
「もうお父さんは玲音のお父さんじゃないんだよ。娘ができたんだ。この前見ただろう、もう玲音はいらないんだよ」
この言葉を玲音がどんな気持ちで聞いてるのか、そう思うと胸が張り裂けそうだった。
その時玲音が急に門の方に振り返った。
「冬馬……?」
なんで玲音は俺がいることわかったんだ、そこから絶対見えねーだろ!
俺は変な汗が一気に噴き出す。そんな俺に構わず母が立ち上がる。
「どうも、うちの玲音がご迷惑をおかけしたようで」
母の口調は社交辞令とわかるくらい丁寧かつ怒りに満ちていた。母が門をくぐりツカツカと歩き出す。さっき俺の腕を掴んでた母とは別人のようだった。
「玲音、役に立たないばかりか、魔法使いまで連れてきたのか?」
男が悪辣に言うがそれを遮って母が言う。
「ええ、2人も」
母は俺を見て立つように促す。どんなかっこ悪い登場だよ、これ。俺は立って玲音を見たが、玲音はこっちを見なかった。
「玲音の契約を解除していただけるかしら」
母は怒りを抑え、でも割と大きな声で言い放った。
男はナチュラルに笑い出す。正直ここで俺は久遠さんのことを思い出した。もしかして普通の大人なのかもしれない。でもそれは間違っているとすぐにわかった。
「玲音、お父さんと暮らしたいなら魔法使いを殺しなさい」
見た感じから普通の大人じゃないことはわかっていた。殺しなさいとか、この法治国家でいい大人が言うことではない。
玲音は動かないし、さっきまで大声張り上げてた母も黙った。俺は違う心配をしていた。いないのだ、あの不気味な女が。
俺の気が逸れている間に起こした玲音の行動に、俺も、母も息を飲んだ。
玲音は男の腹から武具を取り出した。
「玲音、やめなさい。約束を破る気なの?!」
母が叫ぶ。玲音が取り出した武具は、俺から出したバールとは比べられないくらい、立派な剣だった。俺たちとは一時も目を合わさず、剣をゆっくり構える所作で、何度も魔法使いと戦ってきたきたことが容易に想像できた。
母が足を後ろに引いたのを見た時、玲音が母に襲いかかってきた。
俺は風の魔法で玲音を牽制しようとするが、それは解除された。後ろの男が不履行にしている、そう気がついた時に、俺は全力で後ろの男に魔法を履行した。
その時母に玲音の剣が振り下ろされる。
当然防ぐだろうと思っていた母がなんの魔法も履行しなかったことにびっくりして母を見たが、母は腕で剣を止めていた。よく見ると母も玲音も青白く光っていて、2人とも同じスタイルで戦っていることに気がついた。
母は恐ろしい速度で玲音に肉弾戦を仕掛ける。
母は格闘技でもやっていたのかとんでもない速さで玲音との間合いを詰めていた。
俺は男に牽制攻撃をしていた。男は微動だにせず俺の魔法を不履行にしながら冷笑している。
なにかがおかしい。
このまま無意味に攻撃をしていても何も解決しない、そう思い、俺は一気に男に走り出した。
「冬馬!」
母が後ろで叫んでいたがもう止まれなかった。男に近づくたびにとんでもない手数の魔法を浴びたが無効にできないほどの数ではない。それに的外れな位置に履行される魔法が多かった。
俺が男に近寄った、その時男は表情を少し変え少し後ずさった。
やっぱりそうだ!
俺はすぐさま上を見た。そして魔法を上と男の両方に履行した。
その瞬間、あの不気味な女が2階の窓から飛び出して、軒下の男に命中しそうだった俺の魔法を不履行にした。女が着地する前に俺は男に走り出した。
魔法使いは物理に弱い。でも多分こいつは魔法使いではない。
渾身の力で掌底を喰らわそうと手を引いた瞬間、とてつもない風に体ごと持っていかれて宙に浮いたところにとんでもない手数の火が降り注いだ。
魔法を解除しようとするが方向感覚が失われてよくわからないまま、地面に叩きつけられてしまった。息ができない中、降ってくる魔法を回避しようと上を見たが、母が魔法を解除してくれていた。その時に、母と、そして母への攻撃を止めた玲音と目が合った。
「お父さん! あの犬やっぱり帰ってこないんだよ!」
女が甲高い声で叫ぶ。そこで以前の不気味な違和感があたり一体に立ち込める。
「お父さん、あの犬殺すから!」
そう言い終わる前に屋敷と門柱の間の地面が光り出した。
「みんなぶっ殺すから!」
女の叫び声と共に玄関までの石畳が砕けながら一気に宙に浮いた。母は俺に駆け寄りながら男と女に火の魔法を履行した。
女は魔法を解除しながらも自らも宙に浮き、さっき砕いた石を俺と母めがけて打ち込んできた。石は火で消えない、風の魔法でも重力には逆らえず石を全て防ぐことなんて到底できない。どうすればいいんだよ! 片膝をつき、立ち上がることもためらう俺の上に玲音が飛び出してきた。そして母はとんでもない量の水の魔法を履行した。
玲音は石を剣で砕き俺と母を守ってくれた。母の放った水は女の右横の石を拐い自重で屋敷の屋根に落ちた。
「玲音!」
母はそう言い、玲音に風の魔法を履行する。玲音は母の魔法で瞬時に女のところへ到達し、剣を振り上げた。
俺はこの時に、勝った気でいたんだと思う。
だから魔法が使えないと思っていた男の方を見た。
男は母に向かって、多分風の魔法を履行していた。母に岩と言っていいほどのいくつかの石が向かっていた。母の後ろから。
俺はこんな圧倒的な悪意に触れたことがなかった。男の悪意で俺は我を失ってしまい、気がついた時には母の後ろに飛び出していた。風の魔法を履行するが全然間に合わず、石の1つが俺の左胸を打ち付け、体の中から軋む音やら折れる音がした。
俺は石の衝撃で空中に投げ出され母の横を通過した。そのまま母の前に背中から倒れ、弾みで頭を強打した。まだ足りないのか地面にバウンドして横を向く形で止まった。俺のずいぶん先に不気味な女が地面に叩きつけられるのを見た気がした。その後にさっき宙に巻き上げられていただろう石があちこちに落ちてきた。
「冬馬!」
悲鳴に近い声で母が叫ぶ。俺は息を吸おうと思った。そこで電源が落ちたようにプッツリ視界が暗転した。
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説

フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

【完結】初恋は、
は
BL
アンダーグラウンドで活躍している顔良しスタイル良しの天才ラッパー、雅。しかしいつもお決まりの台詞で彼女にフラれてしまっていたのだが、ある日何の気なしに訪れた近くのカフェで、まさかのまさか、一人の男性店員に一目惚れをしてしまうのだった。
ラッパー×カフェ店員の、特に何も起こらないもだもだほっこり話です。
※マークは性表現がありますのでお気をつけください。
2022.10.01に本編完結。
今後はラブラブ恋人編が始まります。
2022.10.29タイトル変更しました。
幼馴染は僕を選ばない。
佳乃
BL
ずっと続くと思っていた〈腐れ縁〉は〈腐った縁〉だった。
僕は好きだったのに、ずっと一緒にいられると思っていたのに。
僕がいた場所は僕じゃ無い誰かの場所となり、繋がっていると思っていた縁は腐り果てて切れてしまった。
好きだった。
好きだった。
好きだった。
離れることで断ち切った縁。
気付いた時に断ち切られていた縁。
辛いのは、苦しいのは彼なのか、僕なのか…。
お弁当屋さんの僕と強面のあなた
寺蔵
BL
社会人×18歳。
「汚い子」そう言われ続け、育ってきた水無瀬葉月。
高校を卒業してようやく両親から離れ、
お弁当屋さんで仕事をしながら生活を始める。
そのお店に毎朝お弁当を買いに来る強面の男、陸王遼平と徐々に仲良くなって――。
プリンも食べたこと無い、ドリンクバーにも行った事のない葉月が遼平にひたすら甘やかされる話です(*´∀`*)
地味な子が綺麗にしてもらったり幸せになったりします。
夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト
春音優月
BL
真面目でおとなしい性格の藤村歩夢は、武士と呼ばれているクラスメイトの大谷虎太郎に密かに片想いしている。
クラスではほとんど会話も交わさないのに、なぜか毎晩歩夢の夢に出てくる虎太郎。しかも夢の中での虎太郎は、歩夢を守る騎士で恋人だった。
夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト。夢と現実が交錯する片想いの行方は――。
2024.02.23〜02.27
イラスト:かもねさま

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
たまにはゆっくり、歩きませんか?
隠岐 旅雨
BL
大手IT企業でシステムエンジニアとして働く榊(さかき)は、一時的に都内本社から埼玉県にある支社のプロジェクトへの応援増員として参加することになった。その最初の通勤の電車の中で、つり革につかまって半分眠った状態のままの男子高校生が倒れ込んでくるのを何とか支え抱きとめる。
よく見ると高校生は自分の出身高校の後輩であることがわかり、また翌日の同時刻にもたまたま同じ電車で遭遇したことから、日々の通勤通学をともにすることになる。
世間話をともにするくらいの仲ではあったが、徐々に互いの距離は縮まっていき、週末には映画を観に行く約束をする。が……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる