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第2話 兄の涙※

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 兄の涙を初めて見た。それは今まで眺めていた兄弟という拒絶の内側から染み出しているようだった。その内側に何があるのかを暗示しているようにも思うが、俺はこの帳のような拒絶の前で十分立ち尽くしてきた。この先どうなっても後悔はしない。こんな涙を見て夜が同じ思いをしないように、何があっても俺はこんな涙を流さない、そう誓って夜の涙を唇ですくった。

「夜……好き……」

 夜と好きを交互に言って体中にキスをする。俺の手の平が夜の白い肌を滑り落ち、下の服を脱がす。そして内腿から指の先まで舌を這わせ、嫌がるところを丹念に唾液で濡らした。もう拒絶することも諦め、触れれば息を漏らし肌が震えるようになったら一番嫌がる足の付け根を執拗に濡らす。その中心の熱源は吹きこぼれる寸前のように痙攣をして熱を逃そうとしていた。

「夜……気持ちいい……?」

 指でその熱い中心をなぞり、先端の割れ目から流れる液をその周りになすりつける。

「んっ……あぁっ……あ、あかる……やめて……」

 俺の質問に答えもせず、俺の気持ちも見ないフリをする。兄はどこまで兄でいられるのか、そんな好奇心に駆られ、俺は夜の熱源を口に含んだ。

「ああぁっ……ダメ……あかるっ……やめて……!」

 じゅっと音が部屋に響く。もう一度奥まで咥えた時に、夜の薄らとした茂みから石鹸の匂いがした。その兄らしさに脳の奥が痺れて、周りの音が一瞬遠のいた。夜は走っているかのように短い息をして時々太腿を硬らせる。その腿をゆっくり揉みしだき、摩って付け根をさわさわと愛撫する。口の中に夜の味が広がる。何度目かにそれを感じた時にゆっくり咥えていたものを吐き出して上体を上げた。そして自分の反り勃ったそれを半ば強引に下に向け、夜のそれに重ねた。

「俺がなんでこんなになってるかわかる? 夜があんなこと言うからだよ。ずっと我慢してきたのに。でも夜はやめてって言う」

 重ね合わせた夜と自分のそれを手に包んでゆっくり上下に動かす。

「やめて……灯……」

「俺は我慢ができないよ、でもやめてって言うなら、我慢して。我慢ができたらもうこんなこと2度としない」

 夜は小刻みに首を振る。その怯えきった視線から逃れるように、胸の先端に吸いついた。一気に夜の息が弾む。逃れようと腰をずらしても執拗に腰を押しつけ、夜と自分を擦る手は絶対に止めない。

「我慢して……夜……」

 夜の唇を奪い舌を口に入れた時に少し意識が遠のいた。苦しいのか少し開いた夜の口を内側から暴いて、左手で夜の耳を撫で回す。右手で擦っていた夜のそれが急激に硬くなり、重ねた唇から声にならない声と、激しい息が漏れ出した瞬間、腹に熱い飛沫を感じた。動かしてた手を緩め、ゆっくり上体を起こす。夜の性器はドクドクと脈打ちその管からまだ白濁を溢し続けている。最後まで出し切れるようゆっくり絞るように扱いた。

「ああ……我慢できなかったの、夜」

 眼下に広がる光景に安堵と歓喜とが入り混じり、一気に限界が来た。でも腰を離して、我慢ができず精液を漏らした夜のそれに労いのキスをする。

「もう……やめてぇ……!」

 夜の悲痛な声を遠くで聞きながら、夜の白濁を余さず舐める。ぐちゃぐちゃになった夜の性器も綺麗に舌で拭き取る。

「は……ぁ……あ……もう……さわら……ないで……」

「大丈夫だよ、今日はもうこれ以上しないから……」

 触れるたびに体をのけ反らせる夜に他意はないと安心させたかった。でも次に見た夜の表情はもっと恐怖に慄いていた。その表情と視線が俺の胸を破くように刺さった。

「でも我慢ができなかったのは夜だからね」

 俺は我慢ができたのだと証明するように、夜の胸に顔を埋め、下半身を押し当てた。夜の胸からは懐かしい匂いがする。子どもの頃はよく無邪気に抱きしめてくれた、その時の懐かしい匂いと熱だった。今はベッドに括り付けられ俺を抱きしめてはくれない。そう思った時に心の奥底から後悔と罪悪感が押し寄せた。

 脱ぎ捨てた自分の服を手早く着て、強引に脱がした夜の下着と夜着を履かせた。夜はさっきから一言も、物音も立てずただじっとしていて、夜着を着せる時も素直に従った。

「明日はもっと我慢できるようにしないとね」

 そう言いながらベッドに括り付けた夜着を解いた。長い時間縛っていたから痺れているのか、夜はなかなか腕を動かせないようだった。

「夜、痛くない?」

 肩から腕をゆっくり揉みながら腕を下ろす。力が入っていない腕は異様に重く、腰の横に下ろすまで思いの外重労働だった。あまりに動かないので心配になり、脇に手を入れて夜を抱え起こす。そして痺れが取れるよう腕を持ち上げ揉んでいる時に頬に強い衝撃が走った。後から部屋に響き渡った音を聞いた気がした。
 強制的に顔を背ける形になったが、何をされたのかは夜の顔を見なくてもわかった。頬を打たれたはずなのに、胸が痛い。

「どんなに打たれても、明日も明後日も、ずっとするんだからね」

 顔を背けたままベッドを降りる。もう一度だけ夜の顔を見たくて振り返ろうとしたけど、その時に夜の怒りで空気が震えたのがわかった。だから俺はそのままゆっくり立ち上がり、部屋を後にした。
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