妖精王の双剣-愛する兄弟のために身売りした呪われは妖精王に溺愛される

大田ネクロマンサー

文字の大きさ
上 下
77 / 80
第6章 シュトラウス家の紋章

第17話 指南 ※

しおりを挟む
俺は慌てて前を触っていたシーバルの手を握った。体中から汗が滴り落ちて、シーバルの手に伝い落ちていく。


「アンドリュー、リノはもう限界みたい。その腕だと、後ろからの方が楽かな?」

「リノの顔を見ながらがいい」


アンドリューは子どものような率直さでシーバルにお願いをする。


「じゃあ、リノをちゃんと寝かせた方がいいかな。アンドリューもそろそろ服を脱ぎなよ。リノだけが裸でかわいそうだ」


シーバルは俺を挟んでいた足をどかして横に移動する。その間にアンドリューは前を開けて服を脱ぎはじめたが、右手に巻かれた木と包帯に引っ掛かって、片方だけ脱げずにいた。

シーバルは少し笑いながらアンドリューの袖を引っ張り、そしてついでに履き物に手をかけた。まるでサーガがカインとタルムーに甲冑を脱がされているような既視感。そこから現れた現実の肉体は、限界が近い俺の目には毒でしかなかった。


「本当に大丈夫? こっち側の腕で体を支えるの?」

「ああ、シーバル、ちょっと手を貸してくれ。リノを下敷きにしてしまう」


シーバルに支えられながらアンドリューがどんどんと俺に覆い被さってくる。そして怪我をした方の肘を俺の横に沈めたら、熱い素肌が俺の前面を覆い尽くした。


「あぁ……リノ……」

「あ、アンドリュー。これ自分にも塗ってね。そうするとリノも痛くないから」


アンドリューの肌は時々、波打つ。さっきから心臓に悪い位置で絡み合った視線も、表情も、離れたくないと俺に訴えかけていた。


「俺が……塗ってもいい……?」


どちらに向けたかもわからない問いに、シーバルは答えなかった。


「触ってもらたいんだが……我慢が……」


近い距離で、眉を下げて笑うアンドリュー。こんな顔を人生で一度も見たことはなかった。あるいは、彼が見せないようにしてきたのか。真っ赤な顔がその真実味を証明しているようで、湧き上がる愛おしさで発狂しそうなくらいだった。

シーバルが差し出した乳鉢から練った薬草を掬う。


「……っ、ぁ……リノ……ダメ、だ……」


アンドリューに塗るやいなや、震えだし、そしてズルズルと腰が引けていく。そして蒸気が立ちそうなほど熱せられたそれは俺の手をスルッと抜け出し、俺の両足の付け根を擦り付けながら下がっていった。

反り返り制御の効かないそれに、アンドリューはもどかしげに息を荒らげる。その必死なまでの息遣いに、授与式の風景が重なる。

そしてあの日、アンドリューの唇が俺の手を求めたように、俺の窄まりにアンドリューの熱源が押し当てられた。


「……っ、ァ……ンドリュー……」


片腕が固定されていて思うように動けないのか、アンドリューは苦心していた。顔を俺の肩に埋めたアンドリューは自由な左腕に俺の片足を引っ掛けた。


「シーバル……もう片方の足を……」


横に寝転がっていたシーバルは嬉しそうに起き上がり、そして──。


「ダ……ダメ……シーバル……それは……」

「だってアンドリューに頼まれたんだよ?」


シーバルは俺の足を持ち上げるだけでは飽き足らず、腿に唇を寄せる。さらにアンドリューが荒ぶる熱源を渾身の力で押し入れ、その感触が頭の先まで駆け抜けた。


「ぃあああああぁぁぁ────ッ!」


宙に舞った自分自身の白濁が、時間差で腹に降りかかる。


「ああっ、アン……ドリュー! アンドリュー!」

「アンドリュー、練習の甲斐があったね。リノとても気持ちよさそう。腹側はすぐに出ちゃうから、奥を優しく押してあげて」

「あぁ……リノ……うまくできているか……?」


グッと腰を突き入れながら、アンドリューの顔が近づいてくる。俺は必死に頷きながらも抗議する。


「シーバル……それ、やめ……!」


その抗議を遮ったのは予想外にもアンドリューの唇だった。そしてピッタリとくっついたアンドリューの腹筋が引き締まる度、果てても疼く前が擦れ、腹の奥に甘い疼きが蓄積されていく。


「んっ、んぅっ、ぁっ、んっ」


シーバルは俺の震える足に舌の這った跡を残していく。俺の意思なんて及ばない2人の欲望に、なす術などなかった。


「んっ、んっ、あっ、んぅっ!」


せめて声を聴かれないように、アンドリューの耳を塞ぎたかった。両手が、臆病に辿々しく彼の真っ赤な耳に届いた時、俺の腹の中の質量が増した。


「ぁ……リノ……!」


細く掠れた声とともに、アンドリューの顔から水滴が数粒落ちてきた。それが汗だと断定できないほど歪められた顔に、胸が焦がされる。


「アンドリュー……アンドリュー!」

「ぁ……はっ……リノッ──!」


腰が反るほど激しく突き入れられたと思ったら、アンドリューは震える息を吐き出して、動かなくなった。


「リノ、アンドリューが限界そうだから。もうちょっと足を上げるよ。アンドリュー、そっちの足も上げた方がやりやすいでしょ」

「優しくして……あげたい……」


泣きだしそうなほど切実に、アンドリューは我慢をしていた。そんな彼の汗に濡れた髪をすいて、シーバルは祝福を落とす。


「優しくできてるよ。ちゃんと愛せてる。リノも気持ちがいいよね?」

「気持ち……いい……! あっ……アンドリュー!」


アンドリューは不自由な腕を支えに体を起こし、宙ぶらりんになった俺の片方の手にキスをする。そして強靭な芯のみになった彼の昂りは、俺のすべての意識をさらって突き上げられていく。


「アンドリュー……! あっ、アアアアァ────!」


俺の中の彼が膨らみ、その質量があの色のない夜を呼び覚ます。


「……っ! リノ……!」


絞り出すかのような声とともに、アンドリューは俺の中に熱を注ぐ。きっと無理をしていたのだろう。彼は腕から崩れ落ち、顔から俺の胸に突っ伏した。
しおりを挟む
口なしに熱風| ふざけた女装の隣国王子が我が国の後宮で無双をはじめるそうです

幽閉塔の早贄 | 巨体の魔人と小さな生贄のファンタジーBL

皇帝に追放された騎士団長の試される忠義

口なしの封緘
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】雨降らしは、腕の中。

N2O
BL
獣人の竜騎士 × 特殊な力を持つ青年 Special thanks illustration by meadow(@into_ml79) ※素人作品、ご都合主義です。温かな目でご覧ください。

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~

乃ぞみ
BL
※ムーンライトの方で500ブクマしたお礼で書いた物をこちらでも追加いたします。(全6話)BL要素少なめですが、よければよろしくお願いします。 【腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者】 エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。 転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。 エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。 死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。 「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」 「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」 全体的に結構シリアスですが、明確な死亡表現や主要キャラの退場は予定しておりません。 闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったります。 本編ド健全です。すみません。 ※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。 ※ 攻めがまともに出てくるのは五話からです。 ※ タイトル変更しております。旧【転生先がバトル漫画の死亡フラグが立っているライバルキャラだった件 ~本筋大幅改変なしでフラグを折りたいけど、何であんたがそこにいる~】 ※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

さよならの向こう側

よんど
BL
''Ωのまま死ぬくらいなら自由に生きようと思った'' 僕の人生が変わったのは高校生の時。 たまたまαと密室で二人きりになり、自分の予期せぬ発情に当てられた相手がうなじを噛んだのが事の始まりだった。相手はクラスメイトで特に話した事もない顔の整った寡黙な青年だった。 時は流れて大学生になったが、僕達は相も変わらず一緒にいた。番になった際に特に解消する理由がなかった為放置していたが、ある日自身が病に掛かってしまい事は一変する。 死のカウントダウンを知らされ、どうせ死ぬならΩである事に縛られず自由に生きたいと思うようになり、ようやくこのタイミングで番の解消を提案するが... 運命で結ばれた訳じゃない二人が、不器用ながらに関係を重ねて少しずつ寄り添っていく溺愛ラブストーリー。 (※) 過激表現のある章に付けています。 *** 攻め視点 ※当作品がフィクションである事を理解して頂いた上で何でもOKな方のみ拝読お願いします。 扉絵  YOHJI@yohji_fanart様

不本意にも隠密から婚約者(仮)にハイスピード出世をキメた俺は、最強執着王子に溺愛されています

鳴音。
BL
東方のある里より、とある任務遂行の為カエラム王国を訪れたヨト。 この国の王子である、ルークの私室に潜り込んだものの、彼はあっさりと見つかってしまう。 捕縛されてしまったヨトは「密告者として近衛兵に渡される」「自分の専属隠密になる」どちらか好きな方を選べという、究極の選択に迫られた。 更にヨトを気に入ったルークは、専属隠密では飽き足らず、速攻で彼を婚約者へとしてしまう。 「常に傍に居ろ」というルークからの積極的なアプローチが不思議と落ち着く⋯そんなカエラム王国での平和な第2の人生生活を送っていたヨト。 そんな時、ヨトがこのカエルムに派遣された理由でもある「奇跡の鉱物タルスゼーレ」をめぐって、何やら良からぬ行動を取る連中が現れたという。 幼少期の因縁の相手でもある「黒龍」が召喚され、平和だったヨトの生活は、この先どうなってしまうのか⋯!?

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

左遷先は、後宮でした。

猫宮乾
BL
 外面は真面目な文官だが、週末は――打つ・飲む・買うが好きだった俺は、ある日、ついうっかり裏金騒動に関わってしまい、表向きは移動……いいや、左遷……される事になった。死刑は回避されたから、まぁ良いか! お妃候補生活を頑張ります。※異世界後宮ものコメディです。(表紙イラストは朝陽天満様に描いて頂きました。本当に有難うございます!)

処理中です...