妖精王の双剣-愛する兄弟のために身売りした呪われは妖精王に溺愛される

大田ネクロマンサー

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第6章 シュトラウス家の紋章

第16話 舞い上がる火の粉 ※

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「もうっ。極端すぎるんだよ。そのくらいでリノは痛がらないよ」

「違……」

「やり方がわからない?」


俺の頭上を大きな手が通過したと思ったら、シーバルはそのままアンドリューを引き寄せた。そして俺の頭上で、アンドリューとシーバルが熱烈なキスをする。


「えぇ……」


思わず声を漏らしてしまうほど激しい舌の絡み合い。時々見え隠れする舌は赤く、漏れる息は荒々しかった。


「ね。アンドリューも気持ちいいでしょ? リノにやってあげなよ」

「わかった」


妙に従順なアンドリューは俺の頬を片手で掴んで、さっきからは考えられないほどあっさり唇を寄せた。そして、さっきまざまざと見せつけられた、赤く燃える舌が口に割り入れられる。

驚いて閉じ忘れた目に、アンドリューのまつ毛が焼き付けられる。舌が触れあう度に断続的に襲う甘い痺れ、心の端を焦がす積年の憧憬。それを感覚だけで味わいたくて、瞳を閉じた。

深く、浅く、何度も啄まれているうちに、夢中になって、もっともっとと息が弾む。


「……っ、ア……ンドリュー……」


声に出さなければいいのに。それでも溢れた言葉にタガが外れて、目頭が熱くなる。


「あぁ、リノ気持ちがいいね。アンドリュー、片腕じゃ無理そうだから俺がリノの準備するよ」


俺が伸ばした舌を吸いながら、アンドリューは離れてしまう。


「準備?」

「そう。キスでそんな調子じゃ、知らないのも無理ないよ。これをすると、リノが痛くならないんだよ」

「俺はどうすればいい?」

「リノはここも好きだから、キスしてあげて」


シーバルの両手が俺の脇から差し入れられて、両方の胸の尖りを摘んだ。


「あんっ……! そこ、イヤだって言ってるだろ!」

「嫌がってるぞ」

「女みたいで嫌なんだって」


シーバルが無邪気に、俺とアンドリューとの溝を深めていく。俺はこの空気を知っている。後ろから抱かれていてもわかるこの空気。

俺は視線を恐る恐る上げて、アンドリューの顔色を窺う。今日のこの日まで彼がどんな顔をして俺を軽蔑しているのか知らなかったのだ。

しかし俺が視線を上げるよりもはやく、アンドリューは俺の胸に吸いついた。そしてシーバルはシーバルでアンドリューにどかされた手で、薬草を掴みにかかる。

アンドリューの赤い舌が時々見え隠れする光景が眼下で繰り広げられる。たまらずに少し声を漏らしたら、唇が少し離れた。


「リノ、気持ちよくないか?」


俺が黙っていると、アンドリューは真っ赤な顔で俺を見上げる。そして自由の利く方の手が俺の頬に伸びてきた。そして触っていいかを躊躇うように、空気を掴んだり離したりしている。

あの白けた空気が充満する中で、アンドリューは俺に触れようかどうかを迷っていた。それが俺の本当の欲望を押し上げた。


「もっと……触って……!」


その言葉ごと唇を塞がれ、さっきよりも荒々しく舌が口内を這い回る。アンドリューに求められる度に、あの色のない日々が次々に照らされていくかのようだった。


「ほら、アンドリュー、そんなに乱暴にしないの。さっきのところにキスしてあげて」


シーバルに額を押されたアンドリューは、荒々しい息を吸っては吐いて、俺の首筋を下っていく。鎖骨を伝って肩口に舌を這わせ、そして上半身で1番敏感な尖りににじり寄っていく。

シーバルはシーバルで、俺の前も後ろもほぐしはじめて、あらゆる方向からの刺激に溢れだしそうな声。シーバルの耳を探して俺の手が空中を彷徨った。


「リノ、2人とも顔を見てないから大丈夫だよ」

「んっ、こ……声……イヤだ……」


アンドリューが俺の胸の先端を吸い上げながら離れる。心配そうな顔に胸が焦がれて、シーバルの耳を何度も触ってしまう。


「アンドリュー大丈夫だよ。リノはあまり声を聴かれたくないだけだから」

「声……?」

「そう、かわいいのにさ」


急にシーバルは俺が弱い場所を指でかき混ぜた。


「アァ──ッ! やめ……んっ! んん──っ!」


背けた顔の頬に、アンドリューの左手が添えられる。そして親指が何度も何度も俺の泣き袋を撫でた。心配させているだろうか、そう思って背けた顔を戻すと、思いがけずアンドリューの笑顔に遭遇する。

耳まで真っ赤にしながら、その色に似つかわしくない純朴な笑顔。


「聴いてみたい。リノ。俺にも聴かせてくれ」

「シ、シーバル、やめっ、アアアァ──ッ! あっ、やめてっ!」


シーバルにいつもの優しさはなかった。俺がどんな状態か知りながら、容赦なく攻めあげる。まるで奇声をあげる見せ物のようになった俺の唇に、アンドリューは何度もキスを落としては顔を離す。そして嬉しそうに微笑む顔が俺を急激に限界に追いやるのだ。

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