妖精王の双剣-愛する兄弟のために身売りした呪われは妖精王に溺愛される

大田ネクロマンサー

文字の大きさ
上 下
28 / 80
第4章 鎺に鞘

第3話 不意

しおりを挟む

「シーバルは今日、全然汗をかかなかったね」


嫉妬とも羨望ともいえぬ他愛もない言葉を無視して、シーバルは俺を裸のままベッドに横たわらせる。


「薬草を塗るからちょっと待って」

「そんなにしなくたって大丈夫だよ」

「明日も馬上槍試合ごっこするんでしょ? そんなんだと明日、体中痛くなって動けなくなるよ」


自分でお願いした手前、そう言われてしまっては従う他ない。理不尽さを納得に変えていると、シーバルの熱い手のひらが俺の腕を掴んだ。ぬめりのある油のようなものだが、塗られたところがとても温かくなる。それに、手の力加減が絶妙で、俺の腕を搾り上げる時、血の流れる速度がはやまった気がした。


「シーバル、気持ちいい……ありがとう」

「腕はパンパンだね。明日はこんなになる前にやめよう。そんなに急がなくてもリノはちゃんと強くなっていくから」

「アンドリューがやろうって言いだしてから知ったんだ、馬上槍試合。でも実際の試合は見たことない……。シーバルは見たことある?」

「うん、ある。自分の動いてる姿って自分で見られないから、人の動きを見るとすごく勉強になるよ」


手首から肩にかけてぎゅーっと絞り上げられる。そしてパッと手が離れた時、とても気持ちがいい。


「本当は来月から国営の試合があるんだけど、来週あたりに前哨戦でも見に行ってみる?」

「ええ!? 行きたい! 行ってもいいの?」

「うん! よく来賓で呼ばれてるんだけど、人族同士の試合ってあんまり面白くないし……しかも観覧してると出場したくなっちゃうから、ずっと断ってたんだけど。リノと一緒だったらすごく楽しそう!」

「すごい……すごく楽しみ!」


シーバルは顔を紅潮させて笑うと、俺の片足を持ち上げた。


「いっ……」

「痛い!? 腕もすごいパンパンだったけど、足の方が疲労してるね……ちょっと我慢して、これは痛い?」


シーバルはゆっくり俺の片足を持ち上げて、自身の肩にかけた。動かすと痛いが、そうでなければ痛みはない。


「大丈夫、単なる筋肉痛だと思う」

「そっか、よかった」


なんてことはない。今までのシーバルの行動を考えれば、何気ない動作だった。シーバルは肩にかけた俺の片足を見るために顔を傾けた。プラチナブロンドの前髪が顔を傾けた拍子にサラサラと流れ、俺の片足に安堵の息が吹きかかる。

その時、体中がカッと熱くなってそれが急激に下半身に集まった。俺は慌てて手で前を隠そうとするが、自分が思っている以上に動きが遅い。

唐突に動きだした気配を不審に思ったシーバルの視線とぶつかる。その瞬間今度は顔が沸騰するほど熱くなった。
しおりを挟む
口なしに熱風| ふざけた女装の隣国王子が我が国の後宮で無双をはじめるそうです

幽閉塔の早贄 | 巨体の魔人と小さな生贄のファンタジーBL

皇帝に追放された騎士団長の試される忠義

口なしの封緘
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】雨降らしは、腕の中。

N2O
BL
獣人の竜騎士 × 特殊な力を持つ青年 Special thanks illustration by meadow(@into_ml79) ※素人作品、ご都合主義です。温かな目でご覧ください。

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~

乃ぞみ
BL
※ムーンライトの方で500ブクマしたお礼で書いた物をこちらでも追加いたします。(全6話)BL要素少なめですが、よければよろしくお願いします。 【腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者】 エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。 転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。 エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。 死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。 「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」 「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」 全体的に結構シリアスですが、明確な死亡表現や主要キャラの退場は予定しておりません。 闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったります。 本編ド健全です。すみません。 ※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。 ※ 攻めがまともに出てくるのは五話からです。 ※ タイトル変更しております。旧【転生先がバトル漫画の死亡フラグが立っているライバルキャラだった件 ~本筋大幅改変なしでフラグを折りたいけど、何であんたがそこにいる~】 ※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

不本意にも隠密から婚約者(仮)にハイスピード出世をキメた俺は、最強執着王子に溺愛されています

鳴音。
BL
東方のある里より、とある任務遂行の為カエラム王国を訪れたヨト。 この国の王子である、ルークの私室に潜り込んだものの、彼はあっさりと見つかってしまう。 捕縛されてしまったヨトは「密告者として近衛兵に渡される」「自分の専属隠密になる」どちらか好きな方を選べという、究極の選択に迫られた。 更にヨトを気に入ったルークは、専属隠密では飽き足らず、速攻で彼を婚約者へとしてしまう。 「常に傍に居ろ」というルークからの積極的なアプローチが不思議と落ち着く⋯そんなカエラム王国での平和な第2の人生生活を送っていたヨト。 そんな時、ヨトがこのカエルムに派遣された理由でもある「奇跡の鉱物タルスゼーレ」をめぐって、何やら良からぬ行動を取る連中が現れたという。 幼少期の因縁の相手でもある「黒龍」が召喚され、平和だったヨトの生活は、この先どうなってしまうのか⋯!?

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

左遷先は、後宮でした。

猫宮乾
BL
 外面は真面目な文官だが、週末は――打つ・飲む・買うが好きだった俺は、ある日、ついうっかり裏金騒動に関わってしまい、表向きは移動……いいや、左遷……される事になった。死刑は回避されたから、まぁ良いか! お妃候補生活を頑張ります。※異世界後宮ものコメディです。(表紙イラストは朝陽天満様に描いて頂きました。本当に有難うございます!)

悪辣と花煙り――悪役令嬢の従者が大嫌いな騎士様に喰われる話――

BL
「ずっと前から、おまえが好きなんだ」 と、俺を容赦なく犯している男は、互いに互いを嫌い合っている(筈の)騎士様で――――。 「悪役令嬢」に仕えている性悪で悪辣な従者が、「没落エンド」とやらを回避しようと、裏で暗躍していたら、大嫌いな騎士様に見つかってしまった。双方の利益のために手を組んだものの、嫌いなことに変わりはないので、うっかり煽ってやったら、何故かがっつり喰われてしまった話。 ※ムーンライトノベルズでも公開しています(https://novel18.syosetu.com/n4448gl/)

処理中です...