妖精王の双剣-愛する兄弟のために身売りした呪われは妖精王に溺愛される

大田ネクロマンサー

文字の大きさ
上 下
14 / 80
第2章 花王の庭

第5話 大人の恋愛

しおりを挟む

シーバルは昼食を持った使用人とともに戻ってきて、食事に昔話の花が咲く。でもかつての馬上槍試合ごっこだけでは間がもたなくなって、自然と俺とアンドリューの5年間の話になっていった。


「なんだか……大人の恋愛って感じだね……」

「恋愛って……使用人にも大失敗って笑われたよ」

「なんで? アンドリューはきっとリノを取り返しにくるよ」

「シーバルにライバル心を燃やしていても、そんなことまでしないよ」


確かに昨日、馬上槍試合ごっこのくだりでアンドリューは異常なほど怒りだしたが、それは俺への敵意であって、いつまでもそんなことを引き合いにだすほど執念深くはないだろう。子どもの頃の話だ。


「でも甲冑か……。アンドリューはそんな態度だったかもしれないけど心の中ではきっと喜んでたよ。甲冑をもらうなんて、男は誰でも憧れるからな……。すごく、大人なプレゼントだよ……」

「そうだといいな……」


温かな陽気も相まって予期せずあくびをしてしまう。その口元を見てシーバルは笑った。


「昨日、あんまり寝てないんでしょ。少し横になりなよ」


また俺は宙に浮いてベッドに寝かされる。


「すごい大きなベッドだ。これ、シーバルのベッドなの?」

「う、うん」

「じゃあ一緒に昼寝しよう」

「お、俺は大丈夫」

「そっか……なんかひとりじめ、してるみたいで……」


まだ日が高いのに、今日までの疲労でスッと眠りに落ちてしまった。今日まで、と区切るには長い間重いものを引きずってきた気がする。祝福されるような光の中で微睡むことなんて、この5年間たった一度もなかった。


次に目覚めた時はすっかり日も暮れていて、その背徳感から夕食が喉を通らなかった。心配したシーバルが寝るまでそばにいると聞かなかったから、寝たふりをしてみたが、やっぱりこうやって夜中に目が覚めてしまう。

部屋を見渡してみると、さっきまでいたシーバルがいない。瞬間的に眠ってしまったのだろうか。それにしてもなぜシーバルは自分のベッドで寝ないのか不思議でならない。俺に遠慮しているのならば申し訳ないような気がして、ベッドを抜け出し探しに歩いた。

屋敷はとても広いのだが、夜ともあってか人っ子ひとりいない。普通、使用人くらいいそうなものだが、王の住まいともなると眠りを妨げないために夜は締め出されるのだろうか。

仕方なしに開け放たれたままの扉を通過して、今朝到着した庭園に足を向ける。空を見上げれば結界とやらに区切られた満月が煌々と輝き、やはりこれは作り物の天井ではない、と思い知らされた。


「リノ様?」


愛称と敬称が入り混じる不思議な呼びかけに立ち止まる。目の前には朝に別れた運転手が心配そうにこちらを窺っていた。
しおりを挟む
口なしに熱風| ふざけた女装の隣国王子が我が国の後宮で無双をはじめるそうです

幽閉塔の早贄 | 巨体の魔人と小さな生贄のファンタジーBL

皇帝に追放された騎士団長の試される忠義

口なしの封緘
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

【完結】雨降らしは、腕の中。

N2O
BL
獣人の竜騎士 × 特殊な力を持つ青年 Special thanks illustration by meadow(@into_ml79) ※素人作品、ご都合主義です。温かな目でご覧ください。

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

この道を歩む~転生先で真剣に生きていたら、第二王子に真剣に愛された~

乃ぞみ
BL
※ムーンライトの方で500ブクマしたお礼で書いた物をこちらでも追加いたします。(全6話)BL要素少なめですが、よければよろしくお願いします。 【腹黒い他国の第二王子×負けず嫌いの転生者】 エドマンドは13歳の誕生日に日本人だったことを静かに思い出した。 転生先は【エドマンド・フィッツパトリック】で、二年後に死亡フラグが立っていた。 エドマンドに不満を持った隣国の第二王子である【ブライトル・ モルダー・ヴァルマ】と険悪な関係になるものの、いつの間にか友人や悪友のような関係に落ち着く二人。 死亡フラグを折ることで国が負けるのが怖いエドマンドと、必死に生かそうとするブライトル。 「僕は、生きなきゃ、いけないのか……?」 「当たり前だ。俺を残して逝く気だったのか? 恨むぞ」 全体的に結構シリアスですが、明確な死亡表現や主要キャラの退場は予定しておりません。 闘ったり、負傷したり、国同士の戦争描写があったります。 本編ド健全です。すみません。 ※ 恋愛までが長いです。バトル小説にBLを添えて。 ※ 攻めがまともに出てくるのは五話からです。 ※ タイトル変更しております。旧【転生先がバトル漫画の死亡フラグが立っているライバルキャラだった件 ~本筋大幅改変なしでフラグを折りたいけど、何であんたがそこにいる~】 ※ ムーンライトノベルズにも投稿しております。

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

不本意にも隠密から婚約者(仮)にハイスピード出世をキメた俺は、最強執着王子に溺愛されています

鳴音。
BL
東方のある里より、とある任務遂行の為カエラム王国を訪れたヨト。 この国の王子である、ルークの私室に潜り込んだものの、彼はあっさりと見つかってしまう。 捕縛されてしまったヨトは「密告者として近衛兵に渡される」「自分の専属隠密になる」どちらか好きな方を選べという、究極の選択に迫られた。 更にヨトを気に入ったルークは、専属隠密では飽き足らず、速攻で彼を婚約者へとしてしまう。 「常に傍に居ろ」というルークからの積極的なアプローチが不思議と落ち着く⋯そんなカエラム王国での平和な第2の人生生活を送っていたヨト。 そんな時、ヨトがこのカエルムに派遣された理由でもある「奇跡の鉱物タルスゼーレ」をめぐって、何やら良からぬ行動を取る連中が現れたという。 幼少期の因縁の相手でもある「黒龍」が召喚され、平和だったヨトの生活は、この先どうなってしまうのか⋯!?

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

左遷先は、後宮でした。

猫宮乾
BL
 外面は真面目な文官だが、週末は――打つ・飲む・買うが好きだった俺は、ある日、ついうっかり裏金騒動に関わってしまい、表向きは移動……いいや、左遷……される事になった。死刑は回避されたから、まぁ良いか! お妃候補生活を頑張ります。※異世界後宮ものコメディです。(表紙イラストは朝陽天満様に描いて頂きました。本当に有難うございます!)

処理中です...