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2. というわけで婚約破棄させて頂きます
しおりを挟む「…というわけでお父様。私、エレノア・ビクターは、リアム・コックス公爵との婚約をなかったことにさせて頂きたいのです」
屋敷に戻った私は、先程までの経緯を一部始終父親であるトーマス・ビクター伯爵並びに私の誕生日を祝いに訪れていたリアムの両親であるコックス公爵夫妻にぶちまけた。
えぇ。そりゃ、もう洗いざらい。
「何ということだ…」
私の話を最後まで聞いた父はワナワナと怒りで肩を震わせている。
「リ、リアムがそんなまさか…」
リアムの母親、リリィ公爵婦人の顔からはサーッと血の気が引いていく。
そんな婦人の肩を支えるのは、リアムの父親であるバスティーユ公爵だ。
「…エレノア嬢、先ほどの話は全て真実なのですか」
「…はい。私も信じたくはありませんがリアム様はシャーロットと…。申し訳ありませんが私もそんな光景を見せつけられてこのまま何もなかったことにはできません」
ギュッと握りしめた手を震わせ、私は必死に訴える。
「……」
私のそんな様子を見て、バスティーユ公爵も口を閉ざした。
その時。
「エレノア!待ってくれ、まだ話は…」
屋敷の扉が勢いよく開き、焦ったような表情を浮かべたリアムが入ってくる。
「…リアム様」
彼の登場にその場の空気が凍りついた。
あらあら、またなんてタイミングで…。
と、思ったのも束の間、
バシッ。
鈍い音が響く。
「…リアム・コックス。話は全てエレノア嬢から聞いたぞ…お前はなんて恥知らずなことを」
バスティーユ公爵が、息子のリアムの頬を殴りつけたのだ。
「…ち、父上…違うんです…!」
信じられないといった表情で父親を見つめるリアム。
そんな打ちひしがれる彼に追い打ちをかけるように。
「コックス公爵、今回のエレノアとの婚約はなかったことにしてもらう」
私の父、ビクター伯爵からも冷たい言葉を浴びせられる。
「ビクター伯爵待ってください。私は…エレノアとの婚約をなかったことにしたくはないのです。エレノアと話し合いの場を頂けないかと…」
チラッと、私を見つめリアムは、食い下がった。
…ありえないわ。
往生際が悪いとはまさにこのこと。
どこからまだ婚約続行のチャンスはあると言う、自信が湧いてくるのか。
いや、おそらくリアムは、気づいてたのだろう。
私が彼のことを本気で好きだったと言うことに。
だから、シャーロットとの浮気ぐらいで問題になることはないと高を括っていたのだろうが…。
一瞬で冷めてしまった恋心はもう修復不可能なのよ。
「悪いが君の意見を聞く必要はない」
お父様、素敵!
ピシャリと、言い放つ父に心の中でガッツポーズをする私。
「そ、そんな…エレノア」
すがるような視線を私に向けるリアムに鳥肌が立つ。
私は小さくため息をつくと。
「リアム様、私と話をする前にまず先に話をしなくてはいけない相手がいるんじゃありませんか?」
と、言って彼の後ろに視線を向けた。
リアムは、私の視線をたどるように振り返る。
そこには…。
泣きはらし、小さく下を向くシャーロットの姿があった。
「リアム様、彼女とはもっと話し合う必要がありますでしょう?……私はこれで失礼させて頂きますので、ごゆっくり」
最後に優雅にお辞儀をすると私はシャーロットが佇む扉に向かってゆっくり歩き出す。
すれ違いざま。
「お姉様…わたくし…」
シャーロットは震える声で話しかけてきた。
しかし、そんな彼女に一瞥もくれず、私はスッと真横を通り過ぎる。
シャーロット…。
貴女も自分がしたことの重大さをしっかりわからないと…。
正直、生まれた時から一緒にいる可愛い妹のようなシャーロットを無視することに少しだけ良心が痛む。
けれど、彼女からされた仕打ちを考えると同情する気にはなれなかった。
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