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5.4人目の部員
しおりを挟む翌日の昼休み。
「ねぇ。何で、隣のクラスの真田くんと御井さんが一緒にいるのかな?そもそもうちのクラスに何しに…?」
「うんうん。誰に用事なんだろう…」
ヒソヒソと聞こえてくるのは、隣のクラスの子たちのそんなささやき声。
そりゃそうだ。
学校でも目立つ真田くん。
そして、クラスで浮いた存在の私がなぜか一緒に隣のクラスにやってきたわけだから噂をするのも当然だろう。
ちなみにグラフィティ部のメンバーである(らしい)鈴城くんは本日不参加。
先ほど一応声はかけたのだが…。
「そういうのは俺じゃなくて、唯月担当。御井ちゃんもサポートよろしくね~」と、全く相手にしてくれなかった。
というわけで、現在私は真田くんと2人で隣のクラスに来ている。
目的はもちろん…。
「ねぇ!岸 陽飛いる?」
「え、岸?いるけど…。おーい。岸、隣のクラスのヤツが用事みたいだぞ」
昨日、図書室で話していたグラフィティ部の最後のメンバー候補、岸くんの勧誘のためだ。
真田くんが廊下側に立っていた男子生徒に声をかけ、岸くんを呼んでもらう。
そう言えば、私、噂だけでしか岸くんのことを知らないなぁ…。
気になって、その男子生徒が呼んでいる方向に、私も視線を向ける。
「あーもう。休み時間なのにうるっさいなぁ…。何?」
すると、窓際の席で机に突っ伏して眠っていた男子生徒が不機嫌そうに低い声をあげた。
こちらをギロッと睨みつける顔を見て、私は思わずカチンと固まってしまう。
サラサラな黒髪に、透き通るような白い肌。
まつ毛はくるんと上向きカールしていて、目力も半端ない。
…か、可愛い!男の子だよね?なんかお姫様みたい…。
そこにいたのは、まごうことなき美少年。
普通ならそれだけで物怖じしてしまうのに。
「お!お前が岸 陽飛?俺は隣のクラスの真田唯月。よろしくな」
真田くんは、全く動じずツカツカと岸くんが座る席に向かって歩み寄った。
私も慌ててその後に続く。
「…真田?あぁ、お前が……鈴城と仲良いっていう」
「俺のこと知ってくれてんの?岸に知ってもらってんの光栄だな」
面倒くさそうに、自分の席の前に立つ真田くんを見据える岸くん。
私は、そんな真田くんの近くでハラハラとその状況を見守ることしかできない。
「で、その真田がボクに何の用?」
「単刀直入に言うと、実は俺と宙、そして、ここにいる御井で部活を立ち上げようとしてるんだ。メンバーが4人以上いるんだけど、ぜひ、岸に入って貰いたいなって。今日の放課後にでも、詳しく話しをしたいからよかったら俺に時間くれない?」
「は?意味わかんないんだけど。それ放課後わざわざボクが残らないといけないわけでしょ?それ話を聞くメリットがボクにあるわけ?そもそも部活なんて入る気ないし。時間のムダ」
爽やかな笑顔の真田くんと、あからさまに嫌そうな顔で反論する岸くん。
あまりにも対照的な2人に、ハラハラしたのはきっと、私だけじゃないはず。
その証拠にクラス内も、2人のやり取りに注目しているようで、シンと静まり返っていた。
その時。
パチッ。
面倒くさそうに真田くんから視線をそらした岸くんと、偶然目が合ってしまう。
「つか、御井って学年1位だろ?勉強命のガリ勉って認識だったからボクと同じでこの手の部活は興味ないと思ってたんだけど…。あ!もしかして真田に良いように言いくるめられた?それとも、アンタ、真田か鈴城のどっちか狙ってるとか?」
「な…」
突然の強い物言いに開いた口が塞がらない私。
岸くんは可愛い顔に似合わず、かなりハキハキとした性格のようだ。
フッと不敵な笑みをこぼし、机に頰杖をつくと、私を興味深そうに見つめてくる。
「…っ。そんなくだらない理由じゃないよ。私は、単純に真田くんがつくる部活に興味を持って、自分の意思で入部を決めたの。言いくるめられたとか、狙ってるとかバカにしないで」
思っていたよりも、ハッキリと自分の気持ちを伝えることができた。
人を小馬鹿にしたような態度の岸くんに若干、イラッとして思わず本音が出てしまう。
「へぇ?言うじゃん」
あ、ヤバい。もしかして私、言い過ぎた…?
岸くんの声色が低くなったのを察し、内心ギクリとしたが、すでに後の祭り。
言ってしまった言葉は取り消せないわけで…。
もしかして怒らせちゃったかな?
そう感じた私は、心の中でゴクリと息を呑む。
「…あ、あの」
とりあえず謝ったほうがいいだろうと、おそるおそる彼に向かって声をかけた時。
「まぁ、いいよ。放課後、話聞くだけなら」
「え!?いいの?」
意外にもあっさり承諾してくれた岸くんに私は目を見張る。
「あんたにそこまで言わせる真田の部活、ボクもちょっと興味湧いた。一応言っとくけど、まだ入るってわけじゃないからね。話聞くだけだから。てか、目的果たしたならサッサと自分の教室戻りなよ。いつまでここに居る気?邪魔なんだけど」
そこまで言い放ち、視線をそらした岸くんは、自分の鞄から菓子パンと牛乳を取り出すとパクパクと食べ始めた。
どうやらお昼ご飯タイムらしい。
「…御井、俺達も戻ろうか。それじゃ、岸、また放課後な」
真田くんの言葉にコクリと頷いた私も「またあとで」と岸くんに声をかける。
そして、真田くんに続いて教室をあとにしたのだったー…。
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