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第14章 -勇者side火の国ヴリドエンデ編-
†第14章† -08話-[ユグノース王家の双子]
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10分後から決闘を開始する。それまでは控室で待機をお願いします。
そう言われて案内された場所は訓練場の端にあるテーブルや椅子が申し訳程度に用意された空間で部屋とはとても言えない。案内人の兵士が去ると俺たちはすぐさま視線を交わして集まった。
「マジか?」
「マジだろう。実際に遭遇したわけだし」
「ごめんなさい。私が何も答えられなくて……」
「いや、あれはミリエステに問題は無いだろ。俺も噂には聞いていたがアレは無いわな」
各々が愕然とした様相で双子の酷さを口にする。
アスペラルダやユレイアルドの王族や上層部を知っているからこそアレには驚いた。そんな動揺で心を乱している場合じゃない。これから制限プレイを強いられのだから勝てる方法を考えなければならない。
とはいえ、剣禁止は俺とマクラインが。精霊禁止は全員が。火魔法禁止はミリエステが。そもそもSランク冒険者禁止でクライヴさんは参加出来ない。
「勝てる?」
「「「………」」」
双子殿下の方向へ視線を巡らすと殿下達の護衛が10名ほど。さらに取り巻きの護衛が合計10名。さらにさらにその辺に居た訓練中の兵士も殿下の命令で参加するので合計50名ほどに膨れ上がっていた。
あれにガチガチに制限された俺達3人だけで果たして……。
「お困りの様だな諸君」
「「「え?」」」
「尊師!?」
突如すぐ側から聞こえた声に反応して全員がバッ!と振り向くが、そこには誰も居ない。ただただ影が広がっている壁があるだけだ。
しかし誰の声が聞こえたのかは判明した。最近のミリエステのハマり様が凄まじい人物。そう!
「……水無月さん?」
「こっち見んな。魔法で姿消して技術で気配を消してんだから。
メイドからピンチと聞いたから様子見に来たけど、アレの我儘に直接接触したくないからここでメリオ達にはしっかり教育してもらいたい」
「しかし尊師!」
「尊師言うな。俺が対人戦において無敵という話は知っているな?」
とりあえず言われた通りに再び4人で向き合いつつ水無月さんとの会話を続ける。
「そんな噂は聞いた記憶はあるが……無敵とは具体的にどういう意味なのですか?」
「私もマクラインと同程度の噂しか聞き覚えはありません」
「俺は知らない」
「俺はそもそも<万彩>と接点があまり無いからな。当然知らん」
対人戦において無敵。
魔物やモンスター相手よりも苦労するのが思考や技術を駆使して来る対人戦だ。レベル差だってほとんど無いだろう火の国の兵士達を相手に3人で相手取るなんて現実的じゃない。それでも勝てると言うのか……。
「人は浮遊精霊の鎧というもので守られている。だから火の魔法で火傷したり斬撃で裂傷を負う事は無い。HPが減るだけだな。ただしその防御を抜くほどの攻撃力なら直接骨を折れるし獅子を吹き飛ばせる」
「それは知っています」
「俺は精霊使いとして優秀です」
「というよりは先駆者ですよね? 尊師は他の追随を許してませんよ?」
「尊師言うなて。その浮遊精霊を命令ひとつで剥がすことが出来ます」
へぇそりゃ凄い。
——???????????
「「「「え!?」」」」
「つまり殴れば青タン出来るし捻挫や骨折もやり放題。魔法なら電撃で麻痺に出来るし冷気で凍死させることも出来る。
だから戦闘が始まったらメリオは腕を振るってくれ。それを合図に命令で浮遊精霊を散らせるから。ミリエステは広範囲に中級魔法の[ホワイトフリーズ]で掛け続けろ。他二人は適当に殴ってりゃ終わる。じゃあな。《影転移》」
「え?あ、ちょっと……水無月さん……」
「行ったな。ひとまずこの決闘に俺は不参加確定だからな。言われた通りにすれば良いんじゃねぇか?楽に潰せるぞ」
* * * * *
結果。決闘は一方的な阿鼻叫喚の地獄に変わった。
そもそも俺のイメージする決闘って一対一なんだけどこれって本当に決闘?というか、この一方的な展開は決闘?
兵士が振り下ろした剣をマクラインが盾で弾いただけで剣を取りこぼす。
そのままシールドバッシュで吹き飛ばせば良く飛びめちゃくちゃ咳き込む。ミリエステは水無月さんに言われた通りに[ホワイトフリーズ]を双子殿下勢力へ掛け続けていた。最初こそ飛んでくる魔法を走り回って避けていたけれど時機に攻撃の手は届かなくなった。何故なら兵士の半数以上が唇を紫に染め手足は震え蹲ってしまったからだ。その中には妹殿下の姿もある。
俺は盾で対処しつつ魔法を使えば面白いように吹き飛んでいくので本当に。ほんっとうに苦労なく決闘に勝利した。
「何故だ!? これほどの戦力が揃って何故勝てなかったのだっ!?」
「お、お兄様……それよりも、暖かい……所へ、クチュン!移動、致しましょうよぉ……」
「両殿下。これで約束通り火精を諦めてもらえますね?」
「それだけじゃなくてこっちは決闘に勝ったんだ。何か貰っても良いんじぇねえか?」
なるほど、クライヴさんの言う通りだ。
賭けの対象は火精フォデールだった訳だけどそれは双子殿下が望んだからだ。俺達が勝ったときの話はする暇すら与えられなかったからな。後出しだけど言うだけ言ってみよう。
「じゃあ……生き方を改めてください」
「それはどういう事だ!俺様は王族だぞ!たかが勇者がずいぶんと分不相応な願いを口にするものだな!」
「お兄様、暖かい所……」
「ですが、後日私達よりも容赦の無い方々が国王に謁見に参ります。城が原型を留めているだけでも満足してください」
何を言っているんだコイツは。顔は口ほどにものを言うなぁ。
凍えている王女殿下ですら胡乱な視線を向けて来る始末だ。俺は貴方達のことを思って言葉にしているというのに。
「改めて火精は諦めていただけますね?」
「ちっ。仕方ないな……。今回は負けを認めてやろう。次回は容赦しないからな」
「次が無い事を願います。また、先ほど伝えた忠告を胸に刻んでくださる事を願っております。では」
水無月さんはもう居ないだろうな。感謝を伝えたかったけど今度会った時に改めて伝えよう。
いや、自分達にあの我儘が降りかかる前の露払いに俺達を利用したと考えれば素直に感謝を伝えるのも何だかなぁ。
元の廊下へ戻る道すがらドラウグド=ユグノース陛下が複数人を連れて通り掛かった。
「む、勇者殿。もう終わったのか?」
「はい、両殿下だけでなく協力した兵士たちにもそれなりにお仕置きさせていただきました」
「それは重畳。最近は政務が忙しくあまり様子を見る事が出来なくてな。手を焼いていたのだ」
「不躾ながら進言致します。アスペラルダの至宝、王女殿下が来られた際に同じ事が起これば陛下が想像を絶する被害をもたらす可能性がございます。十分に注意をしてくださいませ」
廊下で膝を折り陛下へ直訴する。
本来は許されないだろうが迷惑を掛けられた直後なのでこの辺までなら許してくれるのだろう。陛下の側近たちも何も注意をして来ない。俺の進言にしばし無言で眉根を寄せた陛下は口を開いた。
「進言に感謝する。彼の姫の名声はこちらにも届いている故、対応には慎重を期そう」
「アルカンシェ様は王族ですから自制が効きます。問題は護衛隊長なのですがNGワードを口にしなければ温和で協力的な御仁です」
「あいわかった。その人物についても対応は気を付けると約束する。勇者殿はこのまま城を出るのか?」
「はい、これで下城させていただきます。陛下から依頼された件もありますので」
そのまま陛下は訓練場へと向かって行った。
陛下と側近たちが角を曲がり失せた所で俺達も再び進み始める。これ以上余計な騒動が起こる前に城を脱出したい。
そう言われて案内された場所は訓練場の端にあるテーブルや椅子が申し訳程度に用意された空間で部屋とはとても言えない。案内人の兵士が去ると俺たちはすぐさま視線を交わして集まった。
「マジか?」
「マジだろう。実際に遭遇したわけだし」
「ごめんなさい。私が何も答えられなくて……」
「いや、あれはミリエステに問題は無いだろ。俺も噂には聞いていたがアレは無いわな」
各々が愕然とした様相で双子の酷さを口にする。
アスペラルダやユレイアルドの王族や上層部を知っているからこそアレには驚いた。そんな動揺で心を乱している場合じゃない。これから制限プレイを強いられのだから勝てる方法を考えなければならない。
とはいえ、剣禁止は俺とマクラインが。精霊禁止は全員が。火魔法禁止はミリエステが。そもそもSランク冒険者禁止でクライヴさんは参加出来ない。
「勝てる?」
「「「………」」」
双子殿下の方向へ視線を巡らすと殿下達の護衛が10名ほど。さらに取り巻きの護衛が合計10名。さらにさらにその辺に居た訓練中の兵士も殿下の命令で参加するので合計50名ほどに膨れ上がっていた。
あれにガチガチに制限された俺達3人だけで果たして……。
「お困りの様だな諸君」
「「「え?」」」
「尊師!?」
突如すぐ側から聞こえた声に反応して全員がバッ!と振り向くが、そこには誰も居ない。ただただ影が広がっている壁があるだけだ。
しかし誰の声が聞こえたのかは判明した。最近のミリエステのハマり様が凄まじい人物。そう!
「……水無月さん?」
「こっち見んな。魔法で姿消して技術で気配を消してんだから。
メイドからピンチと聞いたから様子見に来たけど、アレの我儘に直接接触したくないからここでメリオ達にはしっかり教育してもらいたい」
「しかし尊師!」
「尊師言うな。俺が対人戦において無敵という話は知っているな?」
とりあえず言われた通りに再び4人で向き合いつつ水無月さんとの会話を続ける。
「そんな噂は聞いた記憶はあるが……無敵とは具体的にどういう意味なのですか?」
「私もマクラインと同程度の噂しか聞き覚えはありません」
「俺は知らない」
「俺はそもそも<万彩>と接点があまり無いからな。当然知らん」
対人戦において無敵。
魔物やモンスター相手よりも苦労するのが思考や技術を駆使して来る対人戦だ。レベル差だってほとんど無いだろう火の国の兵士達を相手に3人で相手取るなんて現実的じゃない。それでも勝てると言うのか……。
「人は浮遊精霊の鎧というもので守られている。だから火の魔法で火傷したり斬撃で裂傷を負う事は無い。HPが減るだけだな。ただしその防御を抜くほどの攻撃力なら直接骨を折れるし獅子を吹き飛ばせる」
「それは知っています」
「俺は精霊使いとして優秀です」
「というよりは先駆者ですよね? 尊師は他の追随を許してませんよ?」
「尊師言うなて。その浮遊精霊を命令ひとつで剥がすことが出来ます」
へぇそりゃ凄い。
——???????????
「「「「え!?」」」」
「つまり殴れば青タン出来るし捻挫や骨折もやり放題。魔法なら電撃で麻痺に出来るし冷気で凍死させることも出来る。
だから戦闘が始まったらメリオは腕を振るってくれ。それを合図に命令で浮遊精霊を散らせるから。ミリエステは広範囲に中級魔法の[ホワイトフリーズ]で掛け続けろ。他二人は適当に殴ってりゃ終わる。じゃあな。《影転移》」
「え?あ、ちょっと……水無月さん……」
「行ったな。ひとまずこの決闘に俺は不参加確定だからな。言われた通りにすれば良いんじゃねぇか?楽に潰せるぞ」
* * * * *
結果。決闘は一方的な阿鼻叫喚の地獄に変わった。
そもそも俺のイメージする決闘って一対一なんだけどこれって本当に決闘?というか、この一方的な展開は決闘?
兵士が振り下ろした剣をマクラインが盾で弾いただけで剣を取りこぼす。
そのままシールドバッシュで吹き飛ばせば良く飛びめちゃくちゃ咳き込む。ミリエステは水無月さんに言われた通りに[ホワイトフリーズ]を双子殿下勢力へ掛け続けていた。最初こそ飛んでくる魔法を走り回って避けていたけれど時機に攻撃の手は届かなくなった。何故なら兵士の半数以上が唇を紫に染め手足は震え蹲ってしまったからだ。その中には妹殿下の姿もある。
俺は盾で対処しつつ魔法を使えば面白いように吹き飛んでいくので本当に。ほんっとうに苦労なく決闘に勝利した。
「何故だ!? これほどの戦力が揃って何故勝てなかったのだっ!?」
「お、お兄様……それよりも、暖かい……所へ、クチュン!移動、致しましょうよぉ……」
「両殿下。これで約束通り火精を諦めてもらえますね?」
「それだけじゃなくてこっちは決闘に勝ったんだ。何か貰っても良いんじぇねえか?」
なるほど、クライヴさんの言う通りだ。
賭けの対象は火精フォデールだった訳だけどそれは双子殿下が望んだからだ。俺達が勝ったときの話はする暇すら与えられなかったからな。後出しだけど言うだけ言ってみよう。
「じゃあ……生き方を改めてください」
「それはどういう事だ!俺様は王族だぞ!たかが勇者がずいぶんと分不相応な願いを口にするものだな!」
「お兄様、暖かい所……」
「ですが、後日私達よりも容赦の無い方々が国王に謁見に参ります。城が原型を留めているだけでも満足してください」
何を言っているんだコイツは。顔は口ほどにものを言うなぁ。
凍えている王女殿下ですら胡乱な視線を向けて来る始末だ。俺は貴方達のことを思って言葉にしているというのに。
「改めて火精は諦めていただけますね?」
「ちっ。仕方ないな……。今回は負けを認めてやろう。次回は容赦しないからな」
「次が無い事を願います。また、先ほど伝えた忠告を胸に刻んでくださる事を願っております。では」
水無月さんはもう居ないだろうな。感謝を伝えたかったけど今度会った時に改めて伝えよう。
いや、自分達にあの我儘が降りかかる前の露払いに俺達を利用したと考えれば素直に感謝を伝えるのも何だかなぁ。
元の廊下へ戻る道すがらドラウグド=ユグノース陛下が複数人を連れて通り掛かった。
「む、勇者殿。もう終わったのか?」
「はい、両殿下だけでなく協力した兵士たちにもそれなりにお仕置きさせていただきました」
「それは重畳。最近は政務が忙しくあまり様子を見る事が出来なくてな。手を焼いていたのだ」
「不躾ながら進言致します。アスペラルダの至宝、王女殿下が来られた際に同じ事が起これば陛下が想像を絶する被害をもたらす可能性がございます。十分に注意をしてくださいませ」
廊下で膝を折り陛下へ直訴する。
本来は許されないだろうが迷惑を掛けられた直後なのでこの辺までなら許してくれるのだろう。陛下の側近たちも何も注意をして来ない。俺の進言にしばし無言で眉根を寄せた陛下は口を開いた。
「進言に感謝する。彼の姫の名声はこちらにも届いている故、対応には慎重を期そう」
「アルカンシェ様は王族ですから自制が効きます。問題は護衛隊長なのですがNGワードを口にしなければ温和で協力的な御仁です」
「あいわかった。その人物についても対応は気を付けると約束する。勇者殿はこのまま城を出るのか?」
「はい、これで下城させていただきます。陛下から依頼された件もありますので」
そのまま陛下は訓練場へと向かって行った。
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