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閑話休題 -|霹靂《へきれき》のナユタ討伐祝い休暇-
閑話休題 -99話-[亡命のナユタの民。新天地にて。④]
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◆——聖女クレシーダside
詳しく話を聞けばやっぱり私達の勘違いであった事が確定事項となった。
サーニャも己の勘違いを知って別の意味で真っ赤になってしまったけれど話が進まないので今はアナザー・ワンを管理しているNo.1のクレチアを呼びに行かせ到着を待っている所。
コンコンッ。
「サーニャでございます。クレチア様をお連れ致しました」
「入ってください」
ノックに反応して雑談の手を止めるとサーニャが外から声を掛けて来た。
許可を出し入室するサーニャに続いて「失礼いたします」と断って入って来たのはクレチア=ホーシエム。教皇様のアナザー・ワンにしてアナザー・ワンの教育などの責任者も一任されている女傑。続いてピースしながら入室するのはプリマリア=クルルクス。
え? あれ? 呼んでないのにどうしてトーニャ達の母親が付いて来ているの?
良く見ればサーニャとクレチアの顔に影が差している気がする……。
「どうしてプリマリアが来ているの?」
「クレシーダ様、サーニャの事聞きましたよ!娘の嫁入り話に耳を貸さない母親は居ないですよ!」
「ちょっとお母さんは黙っていてください……」
「静かにしている。そういう約束で同行を許可したのですよ。
これ以上サーニャに恥ずかしい思いをさせないで頂戴。話が進まなくなるわ……」
どうやら話を聞きつけて同行を言い出した様子。それに二人は条件を付けて渋々ながら許可を出した、と。
プリマリアの言い分も分かるし居ても良いけど、私が確保している自由時間はひとまず今日のみなのだからあまりにも酷い様なら出て行ってもらいましょう。
「わかりました、この場に残る事を許可します。とりあえず話を進めましょうか水無月さん」
「……だな」
入室してからほとんどの時間をプリマリアは水無月さんの顔に注目している。
それに戸惑いつつも私の話に乗ってくれたのでサーニャの件を進めましょう。
「クレチア。話は聞いていると思うけれど改めて問います。サーニャを教国から出す事は可能ですか?」
「聖女様のお立場から護衛は二人置いておきたい、というのが教国としての回答です。
その点で言えばクルルクス姉妹は都合が良かったので配置していたに過ぎません。クレア様と姉妹が納得しているのであればサーニャの穴埋めに誰か手空きの者を手配致しましょう」
「わかりました。では、水無月さん。
聖女クレシーダ=ソレイユ=ハルメトリとしてサーニャ=クルルクスの身柄を<万彩>にお預けします。戦闘も家事も唯の侍女より上回りますが必要とされているのは精霊使いとしてのサーニャ=クルルクスでしょう。私の大事な姉代わりの一人をお預けするのです。しっかりと死なない様に鍛えて、守って下さる事をお約束願います」
「聖女クレシーダ様のご心配は理解しております。私としてもサーニャ嬢を失う事は避けたい事態です。基本的には自衛となりますが本当に危機的状態になれば必ず助けに入る事はお約束いたします。また、魔神族討伐や破滅関連の解決が叶えばサーニャ嬢を聖女様の元へ戻すこともお約束いたします」
クレチアの許可が出たのであれば私としてもサーニャを応援したい気持ちも合わせて水無月さんに託すことにする。
聖女としての願いに水無月さんはしっかりと答えてくれた。彼がやるという事は必ず成し遂げ応えてくれると信じている。サーニャに顔を向けると複雑な表情の瞳とぶつかる。
聖女の侍女。その大役を誇りに働いてくれた彼女には酷な事だと思う。いつこの任に戻れるかも予測が立たず、私の聖女期間がいつ終わるとも知れないのだ。出来るなら最後まで勤め上げたいという想い。そんな彼女を水無月さんが見出し選んだ事を私は誇らしく思いますよ、サーニャ。
「水無月様、サーニャが貴方様の隣で添い遂げる未来はございますか?」
真剣な空気の中で流石は49歳児と水無月さんに言わしめたプリマリアが口を挟んだ。
クレチアが黙る様にと足を踏みつけ合図を送っていても意に介さずその視線で水無月さんに答えを求める。
「私はいずれ居なくなる人間です。残された方の人生に責任が持てない以上誰かを選ぶ事はありません」
「わかりました。貴方様の責任感に免じてこれ以上は口出しは致しません。
私は娘の幸せを願って貴方様がこの世界に残る事を願い教国にてサーニャの帰りを待つ事と致します」
以外にもすんなりと退いたプリマリアの姿は誰もが予想だにして居なかった。
娘への愛の深さを感じさせる声音に水無月さんも真剣な回答をせざるを得なかったがある意味満足の行く返しだったのかそのまま「失礼致しました」と言葉を残して以降はクレチアの隣で静かに立つだけに留まった。
「クレア、いいのか?」
「トーニャは残るのでサーニャの役割を引き継ぐことは可能でしょう。ただ、サーニャはまだ混乱していますからもう少し判断に時間を頂けますか? サーニャの意思が確認出来たらすぐ引継ぎの準備に取り掛かりますので」
「そっちが大丈夫なら俺も全然待つよ」
* * * * *
サーニャの身の振り方はひとまず保留にしてもらい、私達は地竜の島にやってきた。
トーニャとサーニャは当然としてプリマリアは仕事があったらしく教国で別れたけれどクレチアは付いて来た。
ユレイアルド神聖教国ではあまり見ない乾いた大地に見たこともない家屋。そして見慣れないタレア族と一緒にこちらを遠目に観察しているナユタの民。
彼らを前に水無月さんが私達を紹介してくれたので挨拶もさせていただいた。
「こっちの世界でこれから生活出来る場所を紹介する前に皆さんの健康状態を診察してくれる方をお連れしました」
「皆様初めまして。私は治療や病気の対処などを担っているユレイアルド神聖教国という国からやって参りました。クレシーダ=ソレイユ=ハルメトリと申します。立場としては聖女と呼ばれる特定の職種になりますがあまり気を使わず体調不良の意識があれば遠慮せずにお伝えください」
「後ろに控えている女性3名は聖女の護衛です。無理を言って皆さんの健康の為に来て下さったので暴力に物を言わそうものなら冗談抜きに首が飛びかねません。自身の身の安全を第一にお願いします」
水無月さんの説明に苦笑しつつ皆さんの様子を見る事にしました。
水無月さんの指示で七精の門メンバーが整列の手伝いをしている。彼らもナユタの世界に行って生きて帰ったのですよね……。念の為ナユタの民の診察と治療が終わったら彼らも診察しておきましょう。
全員が特に問題行動を起こすこともなく3つのグループに分かれた。
「水無月さん、何故3つに分かれたのですか?」
「彼らは元々別派閥だったけど生活が立ち行かなくなって最終的に最後に残った1つの村で集団生活をしていたんだ。
先頭の人がそのグループのリーダーだからちょっとだけ偉い人相手にする感じでお願い」
「わかりました。では、お一人ずつ私の前にどうぞ」
最初の方は女性のセフィーナさん。ではなく、アルシェくらいの年齢の少年でした。
どうやら彼があのナユタの元となった人物だそうで念入りに診察をしましたが特に悪い所は見当たりませんでした。身体の中に光属性の魔力を流して悪くなっている臓器などもチェックしましたがこれも問題なし。健康そのものであるとお伝えすると付き添いのセフィーナさんだけでなく3つのグループの方々全員からホッとする様な空気を感じた。
まだナユタ君は目覚めていないけれど健康ならばそう時間を置かずに目覚めるかもしれないと加えて伝えると以降診察を受ける方々から警戒する様子が薄れた気がする。
2つ目のグループまでは問題なく進みましたが最後はタレア族という半魚人のグループ。
私達の世界には獣人やエルフの森人、海人、鉱人などの多様な人種がいるけれど魚と人の融合は初めて見ました。とは言っても鱗と牙は獣人の毛と歯と同じだろうし、水掻きは水辺の生き物なら持っている魔物もいる。知性のある会話も出来るなら特に気にする必要は無いと私は感じましたがトーニャ達は警戒を一段上げた様子。
「こら」
「何故私だけに怒るのですか。姉もクレチア様も居るではありませんか」
「手が出しやすかったから」
「水無月様、妹に手を出さないでください。子供が出来たら責任取っていただきますよ?」
クレチアはイチャイチャを生暖かく見守りつつ私に一歩近づいて来た。子供って触っただけで出来る?いいえ出来ませんとアイコンタクトを交わした。
彼女たちが警戒した問題など何事もなく過ぎ診察を全て終えることが出来た頃、水無月さんが寄って来る。
「どうだった?」
「どう……そうですね……。健康上の話で言えば瘴気は残っていませんでしたから問題は無いでしょう。
ただ、水無月さんが最も懸念していた生殖に関しては何とも言えません。身体の構造を理解して再生魔法を施すいつもの治療と異なり、生殖能力はもっと身体の構造のさらに奥の知識が必要に感じました。淀みと言いますか上辺は健康でしたが内側に引っかかるものは感じたのでとりあえず浄化を試みましたがどれほどの効果があったかまでは……すみません」
「いや、俺達が出来る範囲以上の事に気付いて施してくれただけ有り難いよ。
今後も何度か診察をお願いするかもしれないからまたその時はお願いしに行くよ」
「私も経過が気になりますから依頼を待たせていただきますね」
詳しく話を聞けばやっぱり私達の勘違いであった事が確定事項となった。
サーニャも己の勘違いを知って別の意味で真っ赤になってしまったけれど話が進まないので今はアナザー・ワンを管理しているNo.1のクレチアを呼びに行かせ到着を待っている所。
コンコンッ。
「サーニャでございます。クレチア様をお連れ致しました」
「入ってください」
ノックに反応して雑談の手を止めるとサーニャが外から声を掛けて来た。
許可を出し入室するサーニャに続いて「失礼いたします」と断って入って来たのはクレチア=ホーシエム。教皇様のアナザー・ワンにしてアナザー・ワンの教育などの責任者も一任されている女傑。続いてピースしながら入室するのはプリマリア=クルルクス。
え? あれ? 呼んでないのにどうしてトーニャ達の母親が付いて来ているの?
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「どうしてプリマリアが来ているの?」
「クレシーダ様、サーニャの事聞きましたよ!娘の嫁入り話に耳を貸さない母親は居ないですよ!」
「ちょっとお母さんは黙っていてください……」
「静かにしている。そういう約束で同行を許可したのですよ。
これ以上サーニャに恥ずかしい思いをさせないで頂戴。話が進まなくなるわ……」
どうやら話を聞きつけて同行を言い出した様子。それに二人は条件を付けて渋々ながら許可を出した、と。
プリマリアの言い分も分かるし居ても良いけど、私が確保している自由時間はひとまず今日のみなのだからあまりにも酷い様なら出て行ってもらいましょう。
「わかりました、この場に残る事を許可します。とりあえず話を進めましょうか水無月さん」
「……だな」
入室してからほとんどの時間をプリマリアは水無月さんの顔に注目している。
それに戸惑いつつも私の話に乗ってくれたのでサーニャの件を進めましょう。
「クレチア。話は聞いていると思うけれど改めて問います。サーニャを教国から出す事は可能ですか?」
「聖女様のお立場から護衛は二人置いておきたい、というのが教国としての回答です。
その点で言えばクルルクス姉妹は都合が良かったので配置していたに過ぎません。クレア様と姉妹が納得しているのであればサーニャの穴埋めに誰か手空きの者を手配致しましょう」
「わかりました。では、水無月さん。
聖女クレシーダ=ソレイユ=ハルメトリとしてサーニャ=クルルクスの身柄を<万彩>にお預けします。戦闘も家事も唯の侍女より上回りますが必要とされているのは精霊使いとしてのサーニャ=クルルクスでしょう。私の大事な姉代わりの一人をお預けするのです。しっかりと死なない様に鍛えて、守って下さる事をお約束願います」
「聖女クレシーダ様のご心配は理解しております。私としてもサーニャ嬢を失う事は避けたい事態です。基本的には自衛となりますが本当に危機的状態になれば必ず助けに入る事はお約束いたします。また、魔神族討伐や破滅関連の解決が叶えばサーニャ嬢を聖女様の元へ戻すこともお約束いたします」
クレチアの許可が出たのであれば私としてもサーニャを応援したい気持ちも合わせて水無月さんに託すことにする。
聖女としての願いに水無月さんはしっかりと答えてくれた。彼がやるという事は必ず成し遂げ応えてくれると信じている。サーニャに顔を向けると複雑な表情の瞳とぶつかる。
聖女の侍女。その大役を誇りに働いてくれた彼女には酷な事だと思う。いつこの任に戻れるかも予測が立たず、私の聖女期間がいつ終わるとも知れないのだ。出来るなら最後まで勤め上げたいという想い。そんな彼女を水無月さんが見出し選んだ事を私は誇らしく思いますよ、サーニャ。
「水無月様、サーニャが貴方様の隣で添い遂げる未来はございますか?」
真剣な空気の中で流石は49歳児と水無月さんに言わしめたプリマリアが口を挟んだ。
クレチアが黙る様にと足を踏みつけ合図を送っていても意に介さずその視線で水無月さんに答えを求める。
「私はいずれ居なくなる人間です。残された方の人生に責任が持てない以上誰かを選ぶ事はありません」
「わかりました。貴方様の責任感に免じてこれ以上は口出しは致しません。
私は娘の幸せを願って貴方様がこの世界に残る事を願い教国にてサーニャの帰りを待つ事と致します」
以外にもすんなりと退いたプリマリアの姿は誰もが予想だにして居なかった。
娘への愛の深さを感じさせる声音に水無月さんも真剣な回答をせざるを得なかったがある意味満足の行く返しだったのかそのまま「失礼致しました」と言葉を残して以降はクレチアの隣で静かに立つだけに留まった。
「クレア、いいのか?」
「トーニャは残るのでサーニャの役割を引き継ぐことは可能でしょう。ただ、サーニャはまだ混乱していますからもう少し判断に時間を頂けますか? サーニャの意思が確認出来たらすぐ引継ぎの準備に取り掛かりますので」
「そっちが大丈夫なら俺も全然待つよ」
* * * * *
サーニャの身の振り方はひとまず保留にしてもらい、私達は地竜の島にやってきた。
トーニャとサーニャは当然としてプリマリアは仕事があったらしく教国で別れたけれどクレチアは付いて来た。
ユレイアルド神聖教国ではあまり見ない乾いた大地に見たこともない家屋。そして見慣れないタレア族と一緒にこちらを遠目に観察しているナユタの民。
彼らを前に水無月さんが私達を紹介してくれたので挨拶もさせていただいた。
「こっちの世界でこれから生活出来る場所を紹介する前に皆さんの健康状態を診察してくれる方をお連れしました」
「皆様初めまして。私は治療や病気の対処などを担っているユレイアルド神聖教国という国からやって参りました。クレシーダ=ソレイユ=ハルメトリと申します。立場としては聖女と呼ばれる特定の職種になりますがあまり気を使わず体調不良の意識があれば遠慮せずにお伝えください」
「後ろに控えている女性3名は聖女の護衛です。無理を言って皆さんの健康の為に来て下さったので暴力に物を言わそうものなら冗談抜きに首が飛びかねません。自身の身の安全を第一にお願いします」
水無月さんの説明に苦笑しつつ皆さんの様子を見る事にしました。
水無月さんの指示で七精の門メンバーが整列の手伝いをしている。彼らもナユタの世界に行って生きて帰ったのですよね……。念の為ナユタの民の診察と治療が終わったら彼らも診察しておきましょう。
全員が特に問題行動を起こすこともなく3つのグループに分かれた。
「水無月さん、何故3つに分かれたのですか?」
「彼らは元々別派閥だったけど生活が立ち行かなくなって最終的に最後に残った1つの村で集団生活をしていたんだ。
先頭の人がそのグループのリーダーだからちょっとだけ偉い人相手にする感じでお願い」
「わかりました。では、お一人ずつ私の前にどうぞ」
最初の方は女性のセフィーナさん。ではなく、アルシェくらいの年齢の少年でした。
どうやら彼があのナユタの元となった人物だそうで念入りに診察をしましたが特に悪い所は見当たりませんでした。身体の中に光属性の魔力を流して悪くなっている臓器などもチェックしましたがこれも問題なし。健康そのものであるとお伝えすると付き添いのセフィーナさんだけでなく3つのグループの方々全員からホッとする様な空気を感じた。
まだナユタ君は目覚めていないけれど健康ならばそう時間を置かずに目覚めるかもしれないと加えて伝えると以降診察を受ける方々から警戒する様子が薄れた気がする。
2つ目のグループまでは問題なく進みましたが最後はタレア族という半魚人のグループ。
私達の世界には獣人やエルフの森人、海人、鉱人などの多様な人種がいるけれど魚と人の融合は初めて見ました。とは言っても鱗と牙は獣人の毛と歯と同じだろうし、水掻きは水辺の生き物なら持っている魔物もいる。知性のある会話も出来るなら特に気にする必要は無いと私は感じましたがトーニャ達は警戒を一段上げた様子。
「こら」
「何故私だけに怒るのですか。姉もクレチア様も居るではありませんか」
「手が出しやすかったから」
「水無月様、妹に手を出さないでください。子供が出来たら責任取っていただきますよ?」
クレチアはイチャイチャを生暖かく見守りつつ私に一歩近づいて来た。子供って触っただけで出来る?いいえ出来ませんとアイコンタクトを交わした。
彼女たちが警戒した問題など何事もなく過ぎ診察を全て終えることが出来た頃、水無月さんが寄って来る。
「どうだった?」
「どう……そうですね……。健康上の話で言えば瘴気は残っていませんでしたから問題は無いでしょう。
ただ、水無月さんが最も懸念していた生殖に関しては何とも言えません。身体の構造を理解して再生魔法を施すいつもの治療と異なり、生殖能力はもっと身体の構造のさらに奥の知識が必要に感じました。淀みと言いますか上辺は健康でしたが内側に引っかかるものは感じたのでとりあえず浄化を試みましたがどれほどの効果があったかまでは……すみません」
「いや、俺達が出来る範囲以上の事に気付いて施してくれただけ有り難いよ。
今後も何度か診察をお願いするかもしれないからまたその時はお願いしに行くよ」
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