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第13章 -1st_Wナユタの世界-

†第13章† -35話-[エピローグ②]

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 マリエルの報告が終わった。ナユタ少年の保護は寝耳に水だったが目覚めてくれない事には処遇を決めることも出来ない。
 どうせしばらくは休息期間に入る予定だしな。

「じゃあ最後は俺の報告だな。
 戦いの結果だが、魔神族。霹靂へきれきのナユタは討伐完了と考えていいだろう」
「妙な言い回しをしますね? 討伐出来たわけではないのですか?」
「トドメを刺す前に苛刻かこくのシュティーナが現れた。禍津大蛇オロチの逃げ道を用意した形だったがそれだけで加勢をする事も無かった。が、ナユタの保有する神力エーテルを回収して禍津大蛇オロチがナユタから抜けた為、身体の構成を保持するエネルギー不足でそのまま散ったんだ」
「世界樹と同じですね……」

 アルシェの質問に答えつつ脳裏を過ぎるのは隷霊れいれいのマグニの事だった。
 彼女の能力は大きく分けて分霊化・寄生・搾取・瘴気操作。そしてナユタの世界で見た世界樹、そして禍津大蛇オロチの存在。
 世界樹に寄生し神族を魔神族へと変質させ、世界樹の保有する神力エーテルを搾取し、魔神族を完全体へと進化させ、神力エーテルが少なくなるとまた搾取して脱出を図った。
 以前に関わった旧ゼノウPTのリーダー。ペルク氏。彼の時と状況は酷似している。

「ナユタは破滅……いや、禍津大蛇オロチを参考に正体を考えるなら仮称も決められるか。
 破滅、その対象を今後[ウロボロス]とする。ウロボロスの分御霊わけみたまと思われる禍津大蛇オロチの行動により魔神族ナユタは消滅。脱出を図った禍津大蛇オロチは俺が討伐した為、これにより魔神族ナユタの世界攻略は完了となる」
「ようやく一人ですね」
「ウロボロスがこの世界に到達する前にどこまで数を減らせるか、ですよねぇ~。難しいなぁ…」
「ですが、確実に事態は進んでおります。今はその事を喜ぶべきでは?」

 最初期から行動を共にする三人は感慨深い表情を浮かべるものの、アルシェはため息を吐き、マリエルは今後に思いを馳せ、メリーは一段落付いた事を強調した。それぞれゼノウPTもセーバーPTも同じように様々な思いを浮かべ、一番感慨深く頷いている剣聖けんせいセプテマ氏、耳や尻尾をピクピクさせて活躍出来たことを静かに喜ぶ拳聖けんせいエゥグーリア、何も考えていない猪獅子と青龍。
 俺自身も一旦目標としていたナユタの問題が解決したことで気は抜けていた。
 神力エーテルによる精霊の呼吸エレメンタルブレスの超強化で身体中もボロボロだ。

「というわけで俺の取得物だがドロップの扱いなのか、知らんうちにインベントリに入っていた。コレだ」

 インベントリから取り出したるは、蔓と枝葉は絡まる枝冠しかんと未知の金属で出来た宝輪。
 アイテム名は判明していても能力はまだ未知数なので後でギルドで鑑定してもらわなければならないが、魔神族のドロップ品なので絶対良い物だと思っている。

 兜   :雷帝樹の枝冠
 希少度 :???
 要求ステ:???
 ステ増減:???
 特殊効果:???

 装飾品 :雷帝の宝輪
 希少度 :???
 ステ増減:???
 特殊効果:???

「名前からしても雷属性特化の装備だと思う。鑑定してからの判断になるけどマリエルとセーバー、ライナーのいずれかに分配となるだだろうな」
「えっと…私は加護をもらったので装備はお二人でいい様な……」
「男が植物の冠とかキツイぜ?」
「ライナーに同意する。装備が強化されるのは嬉しいが心情的にストレスになりそうだ」

 おや、不服申告かね?
 まぁゲームじゃないんだから効果が良ければ何でも良いとは違うのは当然か。
 俺も結構見た目で装備を買ったりしてるし。ある程度は外装ドレスアップで好きな格好を装えるけど、実際は望まぬ女装している感覚とか死ねるもんな。わかるよ。

「とりま、俺からの報告は以上。あと話す事って何かあるか?」
「避難された方々。世界の名前が不明なので[ナユタの民]と呼びますが、彼らの住居ですね。
 タレア族の方々は見た目通り半魚人なので海に近い所が良いと申告された為アスペラルダで保護しようかと考えています。
 セフィーナ殿はナユタの世話が出来ればと伺っていて、ジョイザイル殿はどこかの貴族になれないかと……」

 見た目化け物のタレア族、ボンド氏がアルシェの言葉に頷く。
 セフィーナさんも恭しく同意を示した。ジョイザイル氏は……高望みし過ぎじゃね?
 貴族って世襲制が多いし、兵士として貢献すれば貴族にもなれるだろうけど異世界から来た元王族の血筋というだけでは無理がある。

「セフィーナさんは聖職者ですよね?ナユタは神族ではなく普通の人間ですが、これからの信仰はどのように考えていますか?
 改修するならユレイアルド神聖教国をお勧めするのですが……」
「そう簡単に改修は出来ません。ですから静かに暮らせる場所で生き方を考えたいと思っています。
 なので、希望としてはナユタ様のお世話をさせていただきたいとだけお伝えしました」

 ならフォレストトーレに送るか。一応風の国だしナユタとも相性が良いだろう。
 人手も必要だろうからな。ラフィートにこの後会いに行こう。

「ジョイザイル氏の希望は難しいですよ?」
「アルカンシェ姫からそれは聞いている。希望を聞かれたから伝えたまでだ。
 ひとまず我らの暮らしを安定させる必要があるから生活の場を設けてもらうだけでも助かる」
「わかりました。アルシェ、タレア族の件はギュンター様に伝えているのか?」
「アインスさん経由ですが伝えてもらいました。ボンド殿からタレア族の生活様式なども詳しく聞いて伝えているので候補地はいくつか考えてくれていると思いますよ」

 じゃああとはフォレストトーレだけだな。
 これは俺が話を付ければいいだけだしドワーフ達にも帰れる目途が立った事も伝えなきゃな。

「あとは……セプテマ氏とエゥグーリアだな。
 この後俺たちは島を離れますけどどうしますか?この後の身の振り方とか」
「儂は元々流浪の民でしたからなぁ…。まずは剣聖けんせいの称号を返還して鍛え直しですな。
 水無月殿には恩もあるので今後も協力したいとは考えているが、どう動くべきかは追々と言った感じです」
「手前は一度アーグエングリンに戻る。大義名分が破滅対策の手助けだったからな。
 また同じような事を起こす場合は声を掛けてくれればすぐに赴く所存だ」
「二人の意向はわかりました。エゥグーリアはゲートで送り届けるとして……」

 セプテマ氏はどうしようか。
 剣聖けんせいの称号の返還とか言ってたしどこかに運営団体とかがあるのだろうか?
 エゥグーリア同様に破滅対策をする時は声掛けできるように二人には揺蕩う唄ウィルフラタを渡しておかないとな。

「セプテマ氏が良ければなんですけど、勇者の旅に同行しませんか?
 仲間としてではなく一時的な指導員って感じでお願い出来ればと考えています」
水無月みなづき殿の願いなら儂に異論はない。
 時に今回は勇者は参加していなかったが破滅対策に勇者は関わっていないのですかな?」
「この世界に影響が出る様な事件であれば一緒に事に当たる場合もありますが、基本的に魔族の王を討伐する為に召喚された者。ですからね。精霊は付けていますがガッツリ関わらせる予定はありません。
 魔王を倒した後は元の世界に送還される予定なので決戦にはいないでしょうし……」
「納得した。では、称号返還後に勇者の元へ連れて行ってくだされ」

 勇者PTは未だに欠員の補充を見送っているらしい。
 弓使いと魔法使いの後衛2枠だった。フォレストトーレ奪還作戦の後も拳闘士のクライヴ氏が同行していたはずだが、正式なPTを組んだわけでも無さそうだった。よくある編成としてはゼノウの様な軽装のシーフやトレジャーハンター系、あとはヒーラーだけどこの世界の回復魔法は接触が基本だし誰でも低ステータスで初級魔法くらいなら覚えられるからなぁ。

「そういえば、お兄さんだけナユタの世界からの戻りが遅かったですけど何か心当たりはありますか?」
「う~んどうだろ…。世界崩壊の影響で時差が出てしまったのかもしれないけど詳しくはわからないな。
 生物の死は段々と動きが緩慢になる。同様に世界の時の流れも遅くなって、最後に崩壊が待っているのかもしれない」
「ゲートが繋がっている限りは同じ時間の流れになるかと」
『クーもメリーさんに同意見です。世界樹が亡くなってから時の流れが緩慢になっていったのだと思います』

 まぁどちらにしろ机上の空論以上の事は口に出来ないだろう。
 世界崩壊を最後まで観測出来るわけでもないし、同時に異世界の時間の流れを確認出来るわけもないのだから。
 結果論としてゲートが繋がっていれば時間の流れは統一され、ゲートの繋がりが無くなれば差が開くという事がわかっていればいい。
 それからの話し合いは細々としてものを挟んで解散となった。

「最後に。改めてゼノウPT、セーバーPT、リッカにタル。セプテマ氏にエゥグーリアも。
 関わらなければ肝を冷やすような戦いに身を投じる必要もなかったのに異世界にまで付き合ってくれた事に感謝する。
 俺達は一度休息に入る予定だが、同行しない面々にはまた何かと声を掛けたり会いに行く事になるだろう。
 本当に感謝している。おかげで霹靂へきれきのナユタを討伐することが出来た。次の異世界でまた会おう」
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