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第13章 -1st_Wナユタの世界-
†第13章† -32話-[魔神<霹靂のナユタ>④]
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マグニチュードで表せるのか定かではない天変地異が世界樹の村にも到達し、俺は空へと上がった。
俺が戻った時点で村は壊滅していたけど大地の隆起や地割れによって無事だった建物もすべて跡形もなく崩れ落ち、やがて世界樹も支えていた根が千切れたのか大きな音を立てながらひっくり返ってしまった。
数多の倒壊音を後方で感じながら瘴気漂う暗い空を駆け抜ける。
パリパリと遠く離れた地にも届く電撃を道標に追って行けば、波状隆起の震源地で待っていたのかナユタは鎮座していた。
両手で振るっていた大鎚も小鎚に変わり二刀流となっている。
「ラスボス戦って感じでアガるなぁ」
暗い空、黒い大地。壊滅した様相の世界の中心にて待つ強敵。
規模から考えても神力の消費量は無視出来ないレベルのはず。これ以上の戦闘継続はナユタも望まないだろう。
「カレイドハイリア。抜刀!」
『(龍玉~。《水竜逆鱗砲》)』
『(聖壁の欠片。《守護者の護腕》)』
『(閻手。《常闇ノ襟巻》)』
カレイドハイリアは指示に従い巨剣が再び魔方陣から抜かれた。
こちらも神力を吸収するというハイリスクハイリターンを取らないと効果的な攻撃力を維持出来ない。
確実に当てて行こう。
呼び出されたそれぞれのオプションが分解され、再構築していく。後方に龍の意匠が施された銃砲。左に巨腕。首に隠密バフの掛かるマフラーが姿を現し戦端が再び切られる。
「——行くぞ」
「——WOROROROROROROROROROROROッ‼」
魔力縮地で急接近する俺に合わせてナユタも咆哮を上げた。
ビリビリと身体を打つ重低音の波に負けずに斬りかかるとナユタも合わせる様にミョルニルを振るった。
と、近くに落ちた落雷がその軌道を歪曲させて横降りのミョルニルに当たると加速して迫り来る。
「ぐおっ!十分受け止められるな!」
『(次、振り下ろし来ますわー!)』
威力調査で受けた横降り。受けて逃げた先を狙い、雷加速で真上から振り下ろされたもうひと振りの小鎚をパリィ。
そして切り返した小鎚も雷加速を利用したもので体感2倍速の回転率だ。
次々と目まぐるしく振るわれる小鎚。
視界は高速回転する小鎚の黄色で彩られ、ついに俺は受け損なって中空で体勢を崩してしまう。
「さっきのデチューン版か? 小鎚だからか威力は落ちてるな!うぉっ!」
『(インパクトをズラせば受け止めは出来るです)』
『(チャージショットで打点をズラす事は出来るよぉ~)』
くるくると無様に体勢を崩した俺とは対称的に子供たちは落ち着いて策を口にする。
ナユタは振り回される炎剣を警戒して小鎚を剣にひと当てしてから再び俺を狙って腕を振るう。
「《カワリミ》」
ボンっと煙を残し、空振った小鎚は大地を穿つ。
地面の割れ目を雷が走る中、俺はナユタの背後にその姿を現して剣を振るった。
「GYAAAAAAAAAAAAAAA!?」
直ぐに切り返し小鎚を裏拳の如く振るったナユタに再び[カワリミ]を使用。
手応えなく煙を捉えた小鎚には目もくれず、ナユタは正面に出てくるとアタリを付けて大正解な位置に最短距離でもう片方の小鎚を落とした。
「アクア!」
『(見えてま~す♪《水溜撃弾~♪》)』
小鎚の影に隠れた俺達だったが、強力なアクアの一撃でズレた一撃は真横に落ちた。
このチャンスに猛攻を掛ける。巨腕で[魔拳極砲]を。巨剣で[火竜一閃]を連続で打ち込む。
悲鳴を上げながらも振るわれる小鎚を殴り上げ、撃ち落とし。落ちて来る雷を斬り払う。雷獣の方も形振り構わず今まで使用していた魔法を詠唱し始め、様々な雷が走り落ちるオンパレードの中をカワリミと空中機動とパリィで凌ぎつつ殴り斬るを繰り返した。
「やっぱり、ステータスが落ちてる?」
『(身体も少し小さくなったかもしれませんね。神力が抜けたことで弱体化しているのでしょう)』
先ほどまで膂力が拮抗している印象だったが今は余裕とまではいかなくとも楽になっている。
アニマも同意見の様子。試しにパリィ直後に胸元に飛び込んで一刀両断を試みる。
「はああああああああああああ!」
『(もっと奥ですわー!さっきの魔法を使われましたわよー!)』
スカッ。大振りの一撃はナユタの胴体を捉えて空振る。
先ほども見たこの魔法はホログラムを再現した様なものなのだろう。俺たちのカワリミと似ていてイラっともする。
これでは異世界崩壊までに互いに決定打が当たらずに決着が付けられないでは無いかっ!
「《アクセラレーター!》」
『(動きについていけないからスナイプに切り替えるねぇ~)』
『(ボクはバラシて小さい魔法系を防ぐですよ)』
はいはいよろしくね。
ナユタの広げた距離を一気に縮めて剣聖から習った最高速から始まる【高速剣】を発動させる。
「すぅ~……む!」
肺一杯に息を吸い込むと口を閉じて無数の剣閃がナユタを切り裂きHPを削る。
等速なら一瞬で十数回斬り付けた様に見えるだろう。抵抗は時に躱し、時に斬り飛ばす。
クーの襟巻が神力を回収してくれているけれど、戦闘速度が速くて回復が追いついていない。
ナユタも攻撃を受けたり魔法を使用することで己を構成する神力が減少してきて弱っている。
しかし、俺も決着を急がざるを得ないとはいえ神力の消費に伴い[精霊の呼吸]のステータス上昇とカレイドハイリアの攻撃力が落ちて来た。
「っぷはぁ! フラム!」
『(《イリュージョン!》)』
大ダメージを負いアクアの支援射撃を受けて仰け反った瞬間に息を吐く。
フラムの魔法で分身が現れそれぞれ別方向へと一気に距離を取った。ナユタを中心に9方向に俺達はバラけ、巨剣をさらに大きく膨らませて振り下ろした。
「《九頭龍刃!》」
9つの炎剣が先のダメージでひと回り小さくなったナユタを斬り刻んだ。
とはいえ、本体は俺一人なので他8つは実体を持つ分身でダメージは微々たるものだ。
ナユタも咄嗟に誘導砲を撃ち放ち6体の分身を煙に戻したが今更の抵抗だった。
追加効果でナユタを斬った後は地面を斬り裂き、大地に出来た亀裂から炎が吹き上がってナユタは炎に包まれる。
「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッ!?GUuuuuuuu……GYAAAAAAAッ!」
苦しむナユタに呼応してか天候はさらに荒れる。雷鳴は止まる事無く轟き続け、落雷もめちゃくちゃな動きで落ちている。
気温も高まりすでに火精の里にいるかの如く暑い。当然原因は割れた大地からポコポコと気泡を吐き出しているマグマだ。
——世界の終わりが近づいている。
『(重力も変動してるです)』
『(空気も薄くなっていますわよー!)』
『(世界よりも先にこの星が終わりますよ。トドメを刺すなら急ぎましょう!)』
活動に支障が出る前にノイが重力を。ニルが空気周りを調整してくれた。
環境が極限状態であるのには違いは無く、アニマも急ぐべきだと促してくる程にはヤバイのだろう。
ナユタもまだ諦めておらず放電を発する事で全身を覆っていた炎を蹴散らしている。
あの放電も自身を構成する神力を消費しているはずだ。
威力が落ちたあの程度の炎。戦闘開始時のナユタなら無視して俺に突っ込んできたはずなのに、今ではスリップダメージを嫌って振り払っている。もうどんな選択肢を選んでもナユタの行動は全てが自身の首を絞めるところまで進行している。末期という奴だ。
ナユタ少年の意思は介在せず。ナユタ少年の情報と力だけを与えられた哀れな自動人形。
憐憫が混じる視線の先に蹲るアレが世界の防衛プログラムだったと誰が想像できるだろうか。
戦いを終結させる為、構えを取る。これで戦いに決着が付く。
それほどまでにナユタは消耗している様に見え、実際に巨大だった図体はずいぶんと縮んでしまった。
「……GIGI」
ナユタが何か音を発した。だが今更だと考え改め剣を握る手に力を込める。
——ブワリ。とナユタの身体から黒紫のオーラが噴き出し、ナユタ自身も身体の半分が変色していく。
まるで身体を乗っ取られるかのように……。
彼が握っていたはずのミョルニルはいつの間にか失われており、無事な右腕が変色した左半身を掻きむしる様な動作を取っている。
しかし、左半身は意に介さず上部へ腕を広げると大切な神力を消費して空に向かい広範囲に雷を放った。
「どういう状況だ?」
『(あの黒い半身絶対良くないよおおおおお!ゾワゾワするうううう!)』
『(宗八!今のうちにトドメを刺した方がいいです!)』
最後の空へ昇った雷が何を意図したのかは不明だが、光精のベルが騒ぐなら本当にヤバイのか……。
考えられるのは禍津大蛇が何か行動に出て来たってところだけど、ともかく様子を見ようにも時間は無いし。ここはサクッと一閃で倒してしまうに限るわな。
「《炎神……》」
『(ん?)』
『(空に感ありー!複数の何かが近づいて来てますわー!)』
はぁ?もういい加減終わろうぜ…。
土精ノイと風精ニルが何かを感知して再びアラートを鳴らす。出鼻を挫かれ空に意識を向けると次は火精フラムが報告して来た。
『(熱源あり。大きい火の弾?)』
『(フフフ~。フラム、あれはねぇ~)』
「隕石じゃねぇかっ!」
つまりなんだ? 宇宙に漂う岩石に含まれる隕鉄を引き寄せたって事か?
無茶苦茶だなっ!?
大した知識は無いけど1km級がゴロゴロと流星群の如くこの地を目指して降って来るのを目視で確認した。
氷河期を招いた超ド級隕石に比べれば可愛いものだろうが、精霊の力を借りているとはいえ人間の身には隕石の衝撃は色んな意味で生存が危ぶまれる。危い!
ナユタはと言えば変色が全身へと至って、今尚じっと動かない。
加えて胸の中心部からひび割れが発生している様に見えるから警戒は外せない。しかし目下の問題は隕石の方が優先度が高い。
「とりま、勢いを殺せば何とでもなる!」
『(あいさー!)』
あっという間に赤い点が数万度に熱された巨岩石へと視覚的情報を更新する中、優先順位を定め。時には[青竜の蒼天咆哮]で凍てつかせ、時には[炎神一閃]で複数を巻き込み溶かし尽くした。
アクアも手伝ってチャージに時間は掛かるが一つ一つ確実に勢いを殺してくれるから、地面に到達する巨大隕石は山を消す程度の威力に抑える事に成功した。
それでもナユタに備えて神力の消耗を抑えたかったというのに見事に使わされてしまった。
『(お父様!空に穴が開きました!おそらくシュティーナが現れたと思われます!)』
状況が二転三転しすぎだろ!ナユタはもう助からないだろうに何をしに登場したってんだ!?
シュティーナが出現した位置は隕石群の遥か後方。つまりは高高度の高みで巨大な空間の歪みを作り出していた。
そしてナユタに再び変化が訪れる。
いや、終わりを迎えたという方が正しいのかもしれない。
黒紫の身体は蛹の様で。ひび割れる身体は新た生命の誕生を予期させた。
隕石の処理に追われている間にナユタの中で準備が整ったソレは、瞬く間に飛びだしたのだ。
シュティーナが開けた脱出口を目指して。
ナユタの身体は粉々に壊れ。散った欠片の端から燃えカスの様に消えていく。
その抜け殻には何の力も残っておらず、あとは唯々。散りゆくのみだった。
『(パパ!アレ!アレ逃がしちゃダメだよおおおお!)』
「パパもそう思う!《炎神一閃!》《スタイルチェンジ/カレイドルークス!》《————天照》」
空へと昇る禍津大蛇は大地を這うかの如き素早さで高度を上げていく。
隕石群の処理なんてやってる場合じゃない。最低限に留めて禍津大蛇を倒したらすぐに元の世界に帰還すれば被害は軽微で済ませられるだろうさ。
真紅の巨剣は一瞬で神々しい輝剣へと姿を変えた。
アクアのサポートと駆け抜ける極焔の一閃が邪魔となる隕石を掃除する間に俺は禍津大蛇の位置を視認した。
色褪せた世界の中心で高らかに掲げた輝剣は注がれる高濃度魔力を受け入れその輝きを極光へと至らせ。——振るわれた。
「星光よ煌やけ!光刃剣戟!《闇縫ノ宝剣っ‼》」
巨大なロングソード型の輝煌の剣が五振り。
光の速さで射出されると禍津大蛇を刺し貫くと遥か彼方の大地へと縫い付ける。
シュティーナは動かない。彼女はまたもや魔神族としての体裁と裏切りを両立させたのだろう。
彼我の距離は甚だしく離れてしまった。この距離では殺せない。
自分を弾き飛ばす。飛ばして飛ばして射程距離に入る最後の魔力縮地の間に態勢を整えて再び輝剣は掲げられる。
視線の先には暴れ回り輝煌の剣から抜け出そうと藻掻く禍津大蛇の姿。
「星光よ煌やけ!光刃剣戟!」
「《———光竜聖剣!!!》」
禍津大蛇に極大魔力剣が振り抜かれる。と、黒紫の巨体に複数個所切断面が出現し光が溢れる。
次々と切り返しては1度の振り抜きで禍津大蛇は傷付き悲鳴を上げる。声にも成らぬ耳障りな不協和音だ。
煩い。宗八の頭にふと感想が湧いた。
しかし次に間を置かずに放たれた鋭い一撃に意識は集中した為、禍津大蛇の悲鳴は宗八の耳に以降届かなかった。
12回。傍目に数えられた攻撃回数だ。
されど実際には禍津大蛇の身体に無数に付いた光が溢れる傷跡は百を超えている。
最後に上段から振り下ろした輝剣の一撃は込められた神力を全て吐き出す攻撃だった。
視界はおろか遥か彼方まで浄化の光が支配する。緑の大地は蘇らない。けれど、地上と空に広がっていた厚い瘴気の層は全て消え去り、宗八は初めてナユタの世界の月を見る事が出来たのだった。
『(……シュティーナ、消失しました)』
クーの報告に禍津大蛇の逃走は失敗に終わったと判断した。
跡形も無くなった禍津大蛇の巨体。光に還るところも消失場面も見届けられなかったがこれでナユタの世界の冒険は終わりだと。身体中から抜けて行く神力と完全に切れた[精霊の呼吸]の効果で確かめた後に俺達はゲートを開いて皆が待つ元の世界へと帰還した。
俺が戻った時点で村は壊滅していたけど大地の隆起や地割れによって無事だった建物もすべて跡形もなく崩れ落ち、やがて世界樹も支えていた根が千切れたのか大きな音を立てながらひっくり返ってしまった。
数多の倒壊音を後方で感じながら瘴気漂う暗い空を駆け抜ける。
パリパリと遠く離れた地にも届く電撃を道標に追って行けば、波状隆起の震源地で待っていたのかナユタは鎮座していた。
両手で振るっていた大鎚も小鎚に変わり二刀流となっている。
「ラスボス戦って感じでアガるなぁ」
暗い空、黒い大地。壊滅した様相の世界の中心にて待つ強敵。
規模から考えても神力の消費量は無視出来ないレベルのはず。これ以上の戦闘継続はナユタも望まないだろう。
「カレイドハイリア。抜刀!」
『(龍玉~。《水竜逆鱗砲》)』
『(聖壁の欠片。《守護者の護腕》)』
『(閻手。《常闇ノ襟巻》)』
カレイドハイリアは指示に従い巨剣が再び魔方陣から抜かれた。
こちらも神力を吸収するというハイリスクハイリターンを取らないと効果的な攻撃力を維持出来ない。
確実に当てて行こう。
呼び出されたそれぞれのオプションが分解され、再構築していく。後方に龍の意匠が施された銃砲。左に巨腕。首に隠密バフの掛かるマフラーが姿を現し戦端が再び切られる。
「——行くぞ」
「——WOROROROROROROROROROROROッ‼」
魔力縮地で急接近する俺に合わせてナユタも咆哮を上げた。
ビリビリと身体を打つ重低音の波に負けずに斬りかかるとナユタも合わせる様にミョルニルを振るった。
と、近くに落ちた落雷がその軌道を歪曲させて横降りのミョルニルに当たると加速して迫り来る。
「ぐおっ!十分受け止められるな!」
『(次、振り下ろし来ますわー!)』
威力調査で受けた横降り。受けて逃げた先を狙い、雷加速で真上から振り下ろされたもうひと振りの小鎚をパリィ。
そして切り返した小鎚も雷加速を利用したもので体感2倍速の回転率だ。
次々と目まぐるしく振るわれる小鎚。
視界は高速回転する小鎚の黄色で彩られ、ついに俺は受け損なって中空で体勢を崩してしまう。
「さっきのデチューン版か? 小鎚だからか威力は落ちてるな!うぉっ!」
『(インパクトをズラせば受け止めは出来るです)』
『(チャージショットで打点をズラす事は出来るよぉ~)』
くるくると無様に体勢を崩した俺とは対称的に子供たちは落ち着いて策を口にする。
ナユタは振り回される炎剣を警戒して小鎚を剣にひと当てしてから再び俺を狙って腕を振るう。
「《カワリミ》」
ボンっと煙を残し、空振った小鎚は大地を穿つ。
地面の割れ目を雷が走る中、俺はナユタの背後にその姿を現して剣を振るった。
「GYAAAAAAAAAAAAAAA!?」
直ぐに切り返し小鎚を裏拳の如く振るったナユタに再び[カワリミ]を使用。
手応えなく煙を捉えた小鎚には目もくれず、ナユタは正面に出てくるとアタリを付けて大正解な位置に最短距離でもう片方の小鎚を落とした。
「アクア!」
『(見えてま~す♪《水溜撃弾~♪》)』
小鎚の影に隠れた俺達だったが、強力なアクアの一撃でズレた一撃は真横に落ちた。
このチャンスに猛攻を掛ける。巨腕で[魔拳極砲]を。巨剣で[火竜一閃]を連続で打ち込む。
悲鳴を上げながらも振るわれる小鎚を殴り上げ、撃ち落とし。落ちて来る雷を斬り払う。雷獣の方も形振り構わず今まで使用していた魔法を詠唱し始め、様々な雷が走り落ちるオンパレードの中をカワリミと空中機動とパリィで凌ぎつつ殴り斬るを繰り返した。
「やっぱり、ステータスが落ちてる?」
『(身体も少し小さくなったかもしれませんね。神力が抜けたことで弱体化しているのでしょう)』
先ほどまで膂力が拮抗している印象だったが今は余裕とまではいかなくとも楽になっている。
アニマも同意見の様子。試しにパリィ直後に胸元に飛び込んで一刀両断を試みる。
「はああああああああああああ!」
『(もっと奥ですわー!さっきの魔法を使われましたわよー!)』
スカッ。大振りの一撃はナユタの胴体を捉えて空振る。
先ほども見たこの魔法はホログラムを再現した様なものなのだろう。俺たちのカワリミと似ていてイラっともする。
これでは異世界崩壊までに互いに決定打が当たらずに決着が付けられないでは無いかっ!
「《アクセラレーター!》」
『(動きについていけないからスナイプに切り替えるねぇ~)』
『(ボクはバラシて小さい魔法系を防ぐですよ)』
はいはいよろしくね。
ナユタの広げた距離を一気に縮めて剣聖から習った最高速から始まる【高速剣】を発動させる。
「すぅ~……む!」
肺一杯に息を吸い込むと口を閉じて無数の剣閃がナユタを切り裂きHPを削る。
等速なら一瞬で十数回斬り付けた様に見えるだろう。抵抗は時に躱し、時に斬り飛ばす。
クーの襟巻が神力を回収してくれているけれど、戦闘速度が速くて回復が追いついていない。
ナユタも攻撃を受けたり魔法を使用することで己を構成する神力が減少してきて弱っている。
しかし、俺も決着を急がざるを得ないとはいえ神力の消費に伴い[精霊の呼吸]のステータス上昇とカレイドハイリアの攻撃力が落ちて来た。
「っぷはぁ! フラム!」
『(《イリュージョン!》)』
大ダメージを負いアクアの支援射撃を受けて仰け反った瞬間に息を吐く。
フラムの魔法で分身が現れそれぞれ別方向へと一気に距離を取った。ナユタを中心に9方向に俺達はバラけ、巨剣をさらに大きく膨らませて振り下ろした。
「《九頭龍刃!》」
9つの炎剣が先のダメージでひと回り小さくなったナユタを斬り刻んだ。
とはいえ、本体は俺一人なので他8つは実体を持つ分身でダメージは微々たるものだ。
ナユタも咄嗟に誘導砲を撃ち放ち6体の分身を煙に戻したが今更の抵抗だった。
追加効果でナユタを斬った後は地面を斬り裂き、大地に出来た亀裂から炎が吹き上がってナユタは炎に包まれる。
「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッ!?GUuuuuuuu……GYAAAAAAAッ!」
苦しむナユタに呼応してか天候はさらに荒れる。雷鳴は止まる事無く轟き続け、落雷もめちゃくちゃな動きで落ちている。
気温も高まりすでに火精の里にいるかの如く暑い。当然原因は割れた大地からポコポコと気泡を吐き出しているマグマだ。
——世界の終わりが近づいている。
『(重力も変動してるです)』
『(空気も薄くなっていますわよー!)』
『(世界よりも先にこの星が終わりますよ。トドメを刺すなら急ぎましょう!)』
活動に支障が出る前にノイが重力を。ニルが空気周りを調整してくれた。
環境が極限状態であるのには違いは無く、アニマも急ぐべきだと促してくる程にはヤバイのだろう。
ナユタもまだ諦めておらず放電を発する事で全身を覆っていた炎を蹴散らしている。
あの放電も自身を構成する神力を消費しているはずだ。
威力が落ちたあの程度の炎。戦闘開始時のナユタなら無視して俺に突っ込んできたはずなのに、今ではスリップダメージを嫌って振り払っている。もうどんな選択肢を選んでもナユタの行動は全てが自身の首を絞めるところまで進行している。末期という奴だ。
ナユタ少年の意思は介在せず。ナユタ少年の情報と力だけを与えられた哀れな自動人形。
憐憫が混じる視線の先に蹲るアレが世界の防衛プログラムだったと誰が想像できるだろうか。
戦いを終結させる為、構えを取る。これで戦いに決着が付く。
それほどまでにナユタは消耗している様に見え、実際に巨大だった図体はずいぶんと縮んでしまった。
「……GIGI」
ナユタが何か音を発した。だが今更だと考え改め剣を握る手に力を込める。
——ブワリ。とナユタの身体から黒紫のオーラが噴き出し、ナユタ自身も身体の半分が変色していく。
まるで身体を乗っ取られるかのように……。
彼が握っていたはずのミョルニルはいつの間にか失われており、無事な右腕が変色した左半身を掻きむしる様な動作を取っている。
しかし、左半身は意に介さず上部へ腕を広げると大切な神力を消費して空に向かい広範囲に雷を放った。
「どういう状況だ?」
『(あの黒い半身絶対良くないよおおおおお!ゾワゾワするうううう!)』
『(宗八!今のうちにトドメを刺した方がいいです!)』
最後の空へ昇った雷が何を意図したのかは不明だが、光精のベルが騒ぐなら本当にヤバイのか……。
考えられるのは禍津大蛇が何か行動に出て来たってところだけど、ともかく様子を見ようにも時間は無いし。ここはサクッと一閃で倒してしまうに限るわな。
「《炎神……》」
『(ん?)』
『(空に感ありー!複数の何かが近づいて来てますわー!)』
はぁ?もういい加減終わろうぜ…。
土精ノイと風精ニルが何かを感知して再びアラートを鳴らす。出鼻を挫かれ空に意識を向けると次は火精フラムが報告して来た。
『(熱源あり。大きい火の弾?)』
『(フフフ~。フラム、あれはねぇ~)』
「隕石じゃねぇかっ!」
つまりなんだ? 宇宙に漂う岩石に含まれる隕鉄を引き寄せたって事か?
無茶苦茶だなっ!?
大した知識は無いけど1km級がゴロゴロと流星群の如くこの地を目指して降って来るのを目視で確認した。
氷河期を招いた超ド級隕石に比べれば可愛いものだろうが、精霊の力を借りているとはいえ人間の身には隕石の衝撃は色んな意味で生存が危ぶまれる。危い!
ナユタはと言えば変色が全身へと至って、今尚じっと動かない。
加えて胸の中心部からひび割れが発生している様に見えるから警戒は外せない。しかし目下の問題は隕石の方が優先度が高い。
「とりま、勢いを殺せば何とでもなる!」
『(あいさー!)』
あっという間に赤い点が数万度に熱された巨岩石へと視覚的情報を更新する中、優先順位を定め。時には[青竜の蒼天咆哮]で凍てつかせ、時には[炎神一閃]で複数を巻き込み溶かし尽くした。
アクアも手伝ってチャージに時間は掛かるが一つ一つ確実に勢いを殺してくれるから、地面に到達する巨大隕石は山を消す程度の威力に抑える事に成功した。
それでもナユタに備えて神力の消耗を抑えたかったというのに見事に使わされてしまった。
『(お父様!空に穴が開きました!おそらくシュティーナが現れたと思われます!)』
状況が二転三転しすぎだろ!ナユタはもう助からないだろうに何をしに登場したってんだ!?
シュティーナが出現した位置は隕石群の遥か後方。つまりは高高度の高みで巨大な空間の歪みを作り出していた。
そしてナユタに再び変化が訪れる。
いや、終わりを迎えたという方が正しいのかもしれない。
黒紫の身体は蛹の様で。ひび割れる身体は新た生命の誕生を予期させた。
隕石の処理に追われている間にナユタの中で準備が整ったソレは、瞬く間に飛びだしたのだ。
シュティーナが開けた脱出口を目指して。
ナユタの身体は粉々に壊れ。散った欠片の端から燃えカスの様に消えていく。
その抜け殻には何の力も残っておらず、あとは唯々。散りゆくのみだった。
『(パパ!アレ!アレ逃がしちゃダメだよおおおお!)』
「パパもそう思う!《炎神一閃!》《スタイルチェンジ/カレイドルークス!》《————天照》」
空へと昇る禍津大蛇は大地を這うかの如き素早さで高度を上げていく。
隕石群の処理なんてやってる場合じゃない。最低限に留めて禍津大蛇を倒したらすぐに元の世界に帰還すれば被害は軽微で済ませられるだろうさ。
真紅の巨剣は一瞬で神々しい輝剣へと姿を変えた。
アクアのサポートと駆け抜ける極焔の一閃が邪魔となる隕石を掃除する間に俺は禍津大蛇の位置を視認した。
色褪せた世界の中心で高らかに掲げた輝剣は注がれる高濃度魔力を受け入れその輝きを極光へと至らせ。——振るわれた。
「星光よ煌やけ!光刃剣戟!《闇縫ノ宝剣っ‼》」
巨大なロングソード型の輝煌の剣が五振り。
光の速さで射出されると禍津大蛇を刺し貫くと遥か彼方の大地へと縫い付ける。
シュティーナは動かない。彼女はまたもや魔神族としての体裁と裏切りを両立させたのだろう。
彼我の距離は甚だしく離れてしまった。この距離では殺せない。
自分を弾き飛ばす。飛ばして飛ばして射程距離に入る最後の魔力縮地の間に態勢を整えて再び輝剣は掲げられる。
視線の先には暴れ回り輝煌の剣から抜け出そうと藻掻く禍津大蛇の姿。
「星光よ煌やけ!光刃剣戟!」
「《———光竜聖剣!!!》」
禍津大蛇に極大魔力剣が振り抜かれる。と、黒紫の巨体に複数個所切断面が出現し光が溢れる。
次々と切り返しては1度の振り抜きで禍津大蛇は傷付き悲鳴を上げる。声にも成らぬ耳障りな不協和音だ。
煩い。宗八の頭にふと感想が湧いた。
しかし次に間を置かずに放たれた鋭い一撃に意識は集中した為、禍津大蛇の悲鳴は宗八の耳に以降届かなかった。
12回。傍目に数えられた攻撃回数だ。
されど実際には禍津大蛇の身体に無数に付いた光が溢れる傷跡は百を超えている。
最後に上段から振り下ろした輝剣の一撃は込められた神力を全て吐き出す攻撃だった。
視界はおろか遥か彼方まで浄化の光が支配する。緑の大地は蘇らない。けれど、地上と空に広がっていた厚い瘴気の層は全て消え去り、宗八は初めてナユタの世界の月を見る事が出来たのだった。
『(……シュティーナ、消失しました)』
クーの報告に禍津大蛇の逃走は失敗に終わったと判断した。
跡形も無くなった禍津大蛇の巨体。光に還るところも消失場面も見届けられなかったがこれでナユタの世界の冒険は終わりだと。身体中から抜けて行く神力と完全に切れた[精霊の呼吸]の効果で確かめた後に俺達はゲートを開いて皆が待つ元の世界へと帰還した。
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いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!
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「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
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三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
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短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
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