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第13章 -1st_Wナユタの世界-

†第13章† -17話-[我、二日程休息ニ入ル。]

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 約半分の時間で何の問題も無く入口に戻って来た俺達は一人分にまで縮まった入口を急いで潜り抜けその後四時間ほどを掛けて異世界の入り口は完全に閉じ切るところを見届けてからその日は全員休息に入ってもらった。

「の前に、ディ。この度はご協力いただきありがとうございました」
「私、アルカンシェ=シヴァ=アスペラルダも人族の王族代表としてクラウディーナ様へ感謝申し上げます」
『私もそれなりに楽しかったですよ。送り先は神聖教国にお願いします。クレアと話してから自分で帰りますわ』

 ユレイアルドに送るのはいいとしてまぁ混乱を招くわな。
 クレアも仕事中だからさらに混乱が……まぁいいか。俺も猊下も白竜の言い分を拒否出来ようも無いだろ。

「しばらくユレイアルドに残るのであればクレアの魔石も精製していただけると助かります」
『その程度お安い御用ですわ。<万彩カリスティア>もまた私の下へ訪れるのでしょう?
 その時を楽しみに待っておりますわ』

 最後にひと撫でして見送った先はクレアの私室。
 部屋掃除なのかベッドメイキングなのかで作業中のシスターが三名ほどいきなり空間を繋げて現れた俺達の事を呆然と見つめて固まっていたが、廊下から響く駆け足音が扉の前で止まった事で全員の視線もそちらへ吸い寄せられた。

 ガチャ。
「…フゥ…フゥ……。ようこそおいで下さいました白竜様、聖女クレシーダ様に代わりお迎えに参りましたアナザー・ワンのサーニャ=クルルクスにございます」

 軽く息を整えながら現れたのはサーニャだった。直前に揺蕩う唄ウィルフラタで「白竜連れて行くから」と伝えていたおかげでサーニャを遣わせたのだろう。そのサーニャが下げていた顔を上げて一瞬目を見開いた理由は俺が肩に乗るディを撫でている光景を見たからだろうか?

「ディ。サーニャは信用出来るからクレアが空くまで遊んでもらうと良いですよ」
『わかりました。よろしくお願いしますね、サーニャ』
「はい、お任せくださいクラウディーナ様。水無月みなづき様もありがとうございました」
「あぁ後はよろしくな。ディもまた会おう」


 * * * * *
 エルダードワーフの村には事前に借りても良い家屋を話し合っていたおかげで全員がちゃんと休むことが出来た。

「ふああああああああああああ~~~っ。めっちゃ寝たなぁ……。もう昼餉時か……」

 とはいえ入口付近で戦わせていたメンバーはローテーションでちゃんと休んでいたから普通に昼食まで取って俺たちが起きるのを待っていた様だ。俺の起床に気が付いたトワインとフランザが駆け寄って来た。

「隊長、おはようございます」
「やっとお目覚めですね。お昼ご飯になりますがすぐ用意しますか?」

 メリーとクーも珍しくぐっすり……、いやメリーは起きているかもしれないけどサボれる時はしっかりサボる奴だからどうだろう。
 まぁクー達の代わりにメイドみたいな事を言って来た二人に頼むとするか…。

『えぇ~~、アクアはパパの手料理が食べたいなぁ~~』
「おはよう、起きてたのか。何かリクエストがあるなら俺が作っても良いぞ」
『じゃあお子様ランチ~』
「ここぞとばかりに面倒なパターンをリクエストして来たな……。いいだろう」
『やった~!トロピカルヤッホ~!』

 龍玉りゅうぎょくに乗って転寝しつつアクアが話し合いにエントリーして来た。
 え~と、ハンバーグとオムライスとナポリタンにエビフライだったっけ? とりあえず自分が食べた記憶のあるのを適当にチョイスしたアレでいいなら他の子ども達が起きて別のリクエストをする前に数を揃えておこう。

「すまんが、人間の方はお前らに任せる。精霊の方は俺が作るわ」
「わかりました」
「お任せください」

 朝御飯を作っている間にアクアには他のメンバーを起こしに行ってもらいチャチャッと調理をしてしまう。
 キッチンは集団生活をしているからか複数人で調理できる様になっているからフランザとトワインが一緒に調理していても問題なく同時進行で進められた。
 直火用の鉄板から火力調整用の自在鉤じざいかぎまで自作してるんだから驚きだよな。鍋で油を熱している内に沸騰した水にスパゲティを入れ、トワイン達が朝食で食べた白米の残りをケチャップライスにしてお子様プレートに乗っけて、フライパンで野菜を炒めそこに茹で上がったスパゲティと用意していた調味料と混ぜつつプレートに乗っけて、適温になった油に卵とパン粉を付けた下処理済みのエビを人数分投入して、揚がるまでの間にオムを量産してケチャップライスの上に乗っけて揚がったエビフライも乗っければお子様ランチの完成だ!
 あ、最後にオムライスの上にケチャップ垂らしておくか。旗は流石に用意出来ないけどうちの子供たちはこれで満足するから問題ないのだ!

「隊長って女子力高いですよね……。これのレシピって教えてもらえますか?」
「別にいいけど、フランザは誰かに作ってあげる予定があるのか?」
「いえ、ネタで大人の男性に出したら面白そうかなって思いまして」
「やめてやれよ」

 フランザの横でトワインが苦笑しながら人間用の昼食を並べていくので俺も子供用のテーブルにお子様ランチを並べて昼食の準備は整った。エルダードワーフの習慣で子供と大人は別々の食卓が用意されていて子供組の年長者が小さい子のサポートをして育っていくらしいのでそこに倣う事としたのだ。つまりセーバーの契約風精リュースライアにうちの子供たちを任せる事になるけど半分くらいはしっかりしているし大丈夫だろう。


 * * * * *
 ふぅ。満足した。
 昼食を食べ終わる頃合いをみて全員が近くのテーブルに座ってまったりしているのを確認してから改めて今回の件を話し合おう為に声掛けをして長老宅内に入っていく。この村に大人数で座れるテーブルが無いので一番大きい長老宅の床に座るしかないのだから仕方ない。

「じゃあ気付いた事や反省点、なんでもいいから順に報告をお願い。
 あと、新顔も居るから一応名乗ってからの発言をお願い」

 円陣で座った俺の右隣に陣取っているアルシェ達は後回しにしたいから左側に座っているゼノウ達へ話を振る。こちらが奥へ奥へと進んでいた間に異世界の出入り口付近で何か変わった事などがあれば情報共有しておきたい。

「クラン〈七精の門エレメンツゲート〉所属。ゼノウ隊リーダーのゼノウだ。
 感想としては数こそ多いが柔らかいと感じた。浄化されて瘴気の鎧が剝がされているのとは別の要素があるかもしれないと感じた。以上」
「同じくゼノウ隊のトワインです。反応速度がレベル帯にしては速いと感じました。また、射速の速い[サンダーアロー]が使えないのが辛かったです」
「同じくゼノウ隊のフランザです。風魔法を撃っても視認しているかの様な動きを見せていました。雷属性だけでなく風属性にも適正が高そうです」
「同じくゼノウ隊のライナーだ。敵の攻撃は殴打が多いように感じた。メタルスクイールの様に爪による斬撃をする個体も居たけどそれにしても切断よりも破壊を優先しているように感じた」
拳聖けんせいを担っているエゥグーリアだ。時折ではあるがランク9並みの敵が現れた。形状から寄生体の上位個体だとは思うがはっきりとした関係はわからなかったが打撃メインで腕や尻尾の形状が鈍器に変化する能力を持っていた」

 ゼノウPTが語る感想は簡潔ながら俺達も感じていた印象を再確認させた。
 また、エゥグーリアが相対した上位存在には俺たちは出会っていない事から[スターライトピュリフィケーション]に反応して現れた可能性が高い。俺たちは道中の休憩時に[サンクチュアリフィールド]のみにして広範囲の敵を刺激をしない様に注意していたから参考にはなるかな。

 Aチームの報告に続いてBチームの報告も似たり寄ったりではあったものの対処に関しては問題は発生していなかった事に安堵した。今後はもっと奥地からの戦闘開始という事も加味してしっかり休息してから侵攻を進めていかなければ……。徘徊していて今回は反応しなかった大型瘴気モンスターもやがては相対する事にもなるしやっぱり光属性に特化した手下を持ちたいなぁ。

 今の仲間で真なる契約をしていない且つ愛弟子以外となると……セーバーPTの剣士[ノルキア=ハンバネス]、同じく魔法使い[アネス=ミレボリア]、同じく弓使い[モエア=ラメンツィラ]の三名かぁ……。近々相談を持ち掛けてみよう。
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