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第13章 -1st_Wナユタの世界-

†第13章† -11話-[これで準備は整った]

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「じゃあな、クレア」
『はい……。水無月みなづきさんなら大丈夫だと思いますけど魔神族の異世界の件で何か力になれる事があれば遠慮なく言ってくださいね。友人としてアルシェの為にも惜しみなく力をお貸ししますから』
「はいはい。流石に戦えないクレアを連れていく事は無いけど緊急で力を貸して欲しい時はすぐ連絡するよ」

(クレアとの)別れを惜しむソレイユ様とはすでに光精の里でお別れを済ませ、現在はユレイアルド神聖教国に戻って来ていた。
 小旅行程度の息抜きで白竜の島観光を終えたクレアはここでお別れだ。

「クラウディーナ様もお気をつけて」
『心配は無用ですよクレア。私も命は惜しいですから危険があれば<万彩カリスティア>達を残してすぐ退避します。
 そうだですわ!今度は私がユレイアルドへ遊びに来てもいいですか?』
「もちろん!その時は精一杯歓迎いたします!」
「俺の頭越しの会話はどうかと思うのですが……」

 白竜クラウディーナも身体を小型化させる術を持っていて今は俺の肩に器用に乗っている。
 小型化も若いフリューネと違って成猫くらいまで小さくなっているから重くは無いけど地面に降りてからクレアと話して欲しかった。
 仕方ないので俺が膝を着いてクレアと高さを合わさねばならないじゃないか。

『またね、ハミングちゃん』
『また遊びましょう、ベルトロープ』
「はいはい、本当に行くからね。じゃあね」

 子供たちも束の間の再会に満足した様で笑顔で次の約束を見届けてからクレアの頭を軽く撫で、クルルクス姉妹に軽く手を挙げてから竜3匹を連れてゲートを通り抜けた。


 * * * * *
 足を踏みしめた場所はフォレストトーレ。
 一度地竜の島に戻りたい気持ちはあったけど数日の猶予の間に避難先を確認しておかないといけない。
 ついでにラフィートにグリーズとクラウディーナを会わせて驚かせてやろうという魂胆も有ったりする。

「どーも、ラフィート様と会いたいんだけど居ます?」
「これは水無月みなづき様。王はもちろんいらっしゃいますが一応規則なので、王の友人と言えど対応を確認してまいりますが宜しいですか?」
「はいはい、いいですよ。あ、用件は異世界が繋がったって伝えてもらえます?」
「かしこまりました。少々お待ちください」

 少し見ないうちにラフィートが仮拠点としている領主邸の改修工事が進んでいて、安全の為鉄柵やらなんやらが増えているうえに兵士も増員していた。とはいえ顔なじみの兵士は元からラフィートの近くを警備していたメンバーだったから声を掛ければすぐに確認に動いてくれた。まぁ去り際に俺の肩に乗るクラウディーナや足元にいるグリーズとフリューネを見て「また増えてる…」と小さく溢していたのはちょっと申し訳なかったかな。
 待ち時間に他の見回り兵士達も興味本位で視線を向けて来る中、手持無沙汰を誤魔化すためにフリューネを撫で繰り回して時間を潰せば然程さほど待たずに先ほどの兵士が戻って来てラフィートの下へと通された。

「ようこそいらっしゃいました、イエロー・ドラゴンとホワイトドラゴンとお見受け致します。
 私は風精領フォレストトーレの国王であるラフィート=フォレストトーレと申します」
「苦しゅうないぞ~」
「ゴホンゴホンッ!」

 はいはい、お呼びで無いですねぇ~。
 部屋に入るとラフィートを先頭にして町長のゲンマール氏を筆頭に文官の面々も全員膝を着き頭を垂れてお出迎えしてくれた。
 もちろんラフィートの発言を聞いて俺宛てでは無いことは理解した上でボケたのにお前は黙ってろと素気無い返事で打ち返されてしまった。
 とりあえずラフィート達が挨拶したいであろうクラウディーナを肩から降ろしグリーズにも前に出てもらった。

『大変な時期に訪問してしまって申し訳ない。黄竜グリュエザールと申します』
『今回は<万彩カリスティア>に付いて来ただけなので気にしないでください。白竜クラウディーナですわ』
「二人がこう言ってるしラフィート達も立ち上がってくれ。なっ?」

 少しの間を置きラフィートが立ち上がると背後に居た文官達もやがて立ち上がり始めた。
 持ち直したラフィートは全員に指示出しだけしてから奥にあるソファへと俺たちを誘ってくれたのでホイホイ付いて行く。

「ここからは宗八そうはちを相手に話をする、という事でよろしいですか?」
『構いません』
『同意致しますわ』
『Zzzzzz』

 返事を返す二人と違って寝転がってすぐに夢の中で大冒険へと繰り出したフリューネの寝息を肯定と判断したラフィートの視線が俺に定められたのを機に状況を改めて説明した。

「アーグエングリン王カンパネルラ殿とはあれから何度か話し合いを設けたが、黄竜含める地竜たちを休ませる場所選びに難航している事もあるが、すぐにエルダードワーフとドラゴドワーフの居住区画の用意は出来ないとの判断が大きい様で結局広大ですぐ手配出来る場所としてはフォレストトーレ元王都を提供する事で合意に至っている」
「じゃあいつ連れて来ても大丈夫か?」
「すでに残骸の撤去作業は始まっているが問題は無い。予定通り撤去の手伝いをしてくれるのであれば仮組みにはなるが居住区も急ぎ手配しよう」
「一応ドワーフだから自力で色々整えてくれると思うけどね。
 俺たちが異世界をどのくらいで攻略できるかもわからないから短い間になる可能性も十分にあるし」

 世界が変わればもちろん時間の流れも違ってくるだろう。
 あちらに数日篭ったとしてこちらでは1日程度という事も有り得るのだからその辺りは臨機応変に動かなければならない。

「わかった。これを元王都に居る現場監督に渡してくれ、事前に話は通してあるが念の為俺からと分かるようにしてある。現状フォレストトーレで協力出来ることは以上となるが、よろしく頼む」
「任されました。クラウディーナの協力を得られたことで勝算は上がってるんだ。
 俺たちの強さを知ってるラフィートは安心してどっしり構えておいてくれよ」
「そこはある意味信頼しているさ。
 それと蜂蜜を中心とした果樹園ならびにメガファーム予定地が決まったぞ。今しばらくはぴーとさんを借りる事になりそうだが良いか?」
「逆にそこに永住する気になれば娘から離れるはずだしそのつもりで懐柔するぐらいよろしく」

 とりあえずこれにてフォレストトーレへの一時避難は確保できた。
 あとは異世界が繋がる前に彼ら彼女らを移動させれば戦いに集中できるようになるな……。

「じゃあ俺は帰るな。ゲンマール氏もお邪魔しました」
「いえいえ、何のお構いも出来ず申し訳ない。遠い地から勝利を祈っております」

 立ち上がり帰宅宣言する俺を見上げながらラフィートは微笑みを浮かべながら手を挙げて了解の意を示した。
 加えて、訪問したあとも書類仕事を続けていたゲンマール氏にもご挨拶をして俺たちはフォレストトーレから離れ、白竜クラウディーナを連れて地竜の島へも戻るのであった。
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