特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第13章 -1st_Wナユタの世界-

†第13章† -07話-[逸る拳聖②]

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〔結論からお伝えしますが、エゥグーリア拳聖けんせい水無月みなづき様達の下へ合流する事が正式に決定致しました。これはアーグエングリン王からの申請を受け、アスペラルダ王が承認した案件ですので撤廃は難しいです〕
「まだ二時間くらいしか経ってないんですけど段取りはちゃんと取っているところを聞くにアーグエングリン王はすぐに陥落したんですか?」
〔え!?それだけしか経ってないんですか!?
 申し訳ありませんがアーグエングリンで何があったかなど詳しい事は分からないのですが、王とリリアーナさんとファグス将軍が拳聖けんせいを説得した様ですよ。結局押し切られてしまってますが……〕

 ファグス将軍まで加わって止めようとしてくれたのが嬉しいけど止められてないなら意味ないんだよなぁ。

「それで客将がウチに助っ人に来る大義名分は?」
〔破滅対策をする水無月みなづき様のグループの協力者まで含めるとアスペラルダ・フォレストトーレ・ユレイアルドの三国が関わっていますがアーグエングリンからは一人も居なかった為そこを理由に推してきました〕
「確かにアーグエングリンの協力者は居ませんけど、俺が勝手に始めた事に各国が絶対協力しなきゃならないわけじゃないでしょ。
 ゼノウやセーバーと知り合ったのは偶々だし聖女クレアだって本当に一時的に協力してもらっただけですよ?」
〔今回は本当にただの理由付けでしょう。そうでもなければ国の客将を他国に渡すなんて有り得ませんから。
 拳聖けんせいが亡くなる様な事さえ無ければ問題にはしないそうなので好きに使っていいとの事です〕

 こっちの世界に来ていた瘴気精霊はすでに浄化済みだし、そもそもあそこから加階しないと寄生能力を持たないんだから瘴気耐性なんて試し様がない。[ユニゾン]出来る俺たちだって可能性はどこまでいってもゼロにはならんよ。
 その辺拳聖けんせいだからとアーグエングリン王は状況を甘く見ているのかもしれないけど、エゥグーリアが死んじゃっても責任の取りようって無くね?

 冒険者とも違うけど客将が我儘言って魔神族や瘴気を相手にするって一人で乗り込んで来るなら彼だって死ぬ覚悟もあっての合流だろう。サポートまでは手を回しても絶対死なない様に立ち回るなんてこっちだって必死なんだからやってられるか。
 メリーに伝えて「死亡しても責任は一切負いません、賠償請求もできません」って内容の書類を用意させておこう。サインをしなければ訓練だけ参加させて異世界が繋がっても戦闘に参加させなければいいか…。

「とりあえず上で決まった話なら了解です。アルシェにはこっちから伝えておきます。
 それでいつ頃合流すればいいですか?」
〔衣服や最低限の食料品などを準備してから持参させるという理由で時間稼ぎをしたそうで、早ければ明日。遅くても三日以内にリリトーナさんから改めて連絡が入るかと〕
「わかりました、受け入れ準備はしておきます」
〔申し訳ありませんがよろしくお願いします。では〕

 こういう時に伝えるだけの仕事を受けるアインスさんも胃が痛いだろうにご苦労な事だ。
 今のタイミングで俺が拳聖けんせいを受け入れる面倒を背負いたくないだろう事も理解しつつ、上が決めた事を窓口として自分が伝えなければならない中間管理職の辛さは元の世界も異世界も一緒だな。

 アインスさんが悪いわけじゃないのに多少イラつきが声音に出ていたというのに冷静に対応してくれた。
 申し訳なかったなぁ……今度他国のデザートでも差し入れしておこう。

「(アクア、アルシェに数日中にエゥグーリアが合流するって伝えてくれ。王様も承認してるから断れないって事も合わせて)」
『(あい。マティアスと戦ってくれた人~?)』
「(そうだよ。強すぎて国に訓練相手が居ないから俺たちが待ち遠しくて合流するってさ)」
『(ふぅん……面倒くさいね~。マリーとニルで痛い目見せられないかなぁ~?)』

 アクアが娘らしく俺に似た思考回路をしている事に口角が上がってしまう。
 純粋な肉弾戦であれば誰が相手でもエゥグーリアに軍配が上がるだろうけど、魔法ありきなら俺たちの誰でも勝ち星を挙げられるだろう。このストレスは俺が持っているものだが弟子が拳聖けんせいをボコす所を眺める事でも溜飲は下げられそうだ。

「(それ採用しようか。アルシェにも根回し頼むわ。
 マリエルとニルには当日伝えればいいから、当日は一緒に世界が誇る拳聖けんせいがボコボコにされるところを見ような)」
『(あい!)』

 さて、気が晴れる予定も決まったしメリーとクーにさっそく例の書類を城の文官に作成させてもらってきて貰わないとな……。


 * * * * *
「ネフィリナ、宗八そうはちを連れて来たぞ」
「完成したって聞いて来たけど……」
「あーはいはい。来たね。手袋部分さえ手元に届けば後は纏めるだけだし割と早く出来上がったよ」

 エルダードワーフの青年で村長代理兼ネフィリナの恋人であるソニューザを引き連れてドラゴドワーフの村へと顔を出した。理由は先にも口に出していた籠手が完成したと聞いただが……、彼女の家の中を見回してもそれっぽいものは無く何故かテーブルの上に置かれた見慣れない宝箱に目を引き付けられる。

「アンタが来るのが遅かったから遊び心で宝箱まで作っちゃったよ、アハハ!」
「アハハってお前……、昨日は無かったし俺が帰ってから作ったのか?」
「そうだよ!完成して興奮もしていたしチョチョイってね!」

 チョチョイで宝箱って作れるんか?とりあえず覚えのある魔力の反応から宝箱の中に目当ての物があると確信してから箱に手を触れる。なるほど、これはいい宝箱だ。樹を無駄遣い出来ないからか鉄製ってところも面白いな。

「さっそく開けても?」
「いいよ。アンタの為に完成させたんだ。それを使ってしっかりこの島を守っておくれよ」


 腕甲  :青竜の蒼天籠手フリューアネイシア・ブレイサー ◇オーダーメイド
 希少度 :神レア
 要求ステ:STR/100 INT/250 VIT/200 MEN/250
 ステ増減:STR+30/INT+80/VIT+50/MEN+80
 特殊効果:武器防御力補正+20%/魔法防御力補正+35%/ノックバック耐性+15%


 流石に普通の木製の箱に比べれば重い蓋に手を掛け持ち上げていくと、中からは素晴らしい出来の薄水色の籠手が姿を現した。
 鱗の様に細かいパーツが段々になっており指や手首の関節なども自由に扱えるようになっている他、肘までを保護出来るように大きめに造ってもらったけどここも動きの邪魔にならないよう配慮されていた。
 おぉー!最高じゃないか!

宗八そうはちはあまり表情に喜びは出さないんだな」
「いいじゃないか。ちゃんと喜んでる事を私は感じてるよ!職人冥利に尽きるね!
 一応事前に採寸はしていたけど気になる箇所があればササっと調整するからさっそく装備してみな!」
「あぁ、ギルドカード経由で装備すればブカブカの装備でもピッタリのサイズに変更されるし大丈夫ですよ。
 こんなに良い装備を作製していただき本当にありがとうございました。また近いうちに依頼をすると思いますがその時はよろしくお願いします」
「任せな!満足できたようで私も満足した!これで心置きなく眠れるってもんだ!」

 寝てなかったのかよ!と俺の代わりにツッコミを入れる彼氏に断りを入れてさっさと寝室に引っ込むネフィリナを見送り、ソニューザにも改めて感謝を告げると俺はその足でアスペラルダのギルドに顔を出す為に村を出るとゲートを繋げる。
 籠手が出来たならギルドカードの装備システムの機能解除をしてもらわないと経由装備が出来ないからな。予定より早かったけどさっそく解除してもらって籠手を装備して使い心地を試してみよう。
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