278 / 410
閑話休題 -次に向けての準備期間-
閑話休題 -82話-[黄竜と魔石と新たな武器と⑬]
しおりを挟む
「さて、お説教です。跪きなさい」
「はっ!」
窓際で振り向いたアルシェの顔は王族のソレであった為、彼女の言う通りにすぐ膝を着き続く言葉を待つ。
「今回宗八は何を間違えたかわかっていますか?」
「まったくわかっておりません」
話途中で止めて来たラフィート陛下の様子から考えて養蜂中心の町作りに関する事は確かだが、どこが俺の間違いになったのかいまいちピンと来ていなかったのでアルシェの質問にも中途半端な回答をせずにきっぱり答える。
「結論から言えば、新しい町を作ろうと話を振ったことが越権行為に当たりました。
宗八はアスペラルダの所属ですから他国の政に口を出したことが問題です」
「そういうことでしたか…。申し訳ございません、復興の手助けになればとしか頭にありませんでした」
「宗八のその考えは素晴らしいものです。
養蜂もこの世界にはない事業ですから成功すればフォレストトーレは確かに財政的にも大きな助けになるでしょう。
それでも今回の内容はラフィート陛下と同格となるお父様を通して伝える手順を取るべきでした」
ぼんやりとアルシェを通しておけば良かったと後悔をしていたところ、アルシェでも実際はダメでアスペラルダ王ギュンター様からラフィート殿下に話を通す必要があったそうで今回のやらかしの明らかな規模の大きさにに俺は青ざめる。
「伝え方も提案ですと貸しになってしまうので共同事業で行う必要があるでしょう。
フォレストトーレは現在人材も資材も資金も足りていないのですから町一つ興す事も難しいですし」
「申し訳ございませんアルカンシェ様。
浅慮な考えでアルカンシェ様だけでなくラフィート陛下にもアスペラルダにもご迷惑を……」
「……まぁ、私達にも落ち度はあります。
魔神族相手に調査などを行う行動指針ややり方も宗八に任せきりでしたし、国を挙げて支援して来たのです。
周辺国が協力してくださっていることもあり自由行動を問題視することもなかった為魔神族対応に集中出来ていました。
今回、甚大な被害を被った国が出たことで政を考える隙が宗八に出来てしまった…、今まで自由だったからこそ私達が注意を伝えておくべきことでした」
「常識を持ち合わせていれば一兵士が政に関わる事を口にすべきではないと分かるはずです。
全ては自分が自由を履き違えていたことが原因です。アルカンシェ様方に落ち度はございません!」
流石に今回の件をアルシェ達に問題があったなんて事にされては困る。
後悔の念に苛まれ足元から急激に冷えていく感覚に見舞われる状況下でも原因が全て俺にある事を理解するくらいには頭は回る。
異世界アルストロメリアに来た一年前であれば今回の様なミスはまずあり得なかったが、旅をして来た今までの行動で自由に動けていたことの延長でしでかしてしまった自分の責任に変わりはない。
今までの自由は理由もある故に見逃されていただけの自由だったことに改めて気付かされた。
「……ふぅ。宗八が反省している様なのでこれ以上は言いませんが、今後国王を相手にする際は注意が必要ですからね。
相手がラフィート陛下であった事も幸いでした。陛下は宗八の立場や為人を理解して事を荒立たない様配慮してくださいました。ちゃんと感謝するのですよ」
「ありがとうございます。今後同じ過ちを繰り返さない様に自制を心がけます」
* * * * *
「落ち着きましたか?」
「ありがとう、アルシェ。本当に気を付けるよ」
アルシェが王族オーラを治めて表情を緩めたことで説教が終わった事はわかっていたけど思いの外自身の過ちの対するショックが大きく、すぐに立ち上がらず俯いている俺の様子を見かねたアルシェは高さを合わせて俺を抱き締めて落ち着くのを待ってくれていた。
アルシェに答えたあとにもう大丈夫だと背中をポンポンと軽く叩き放してくれと合図を送る。
「嫌です」
俺の頭を胸に抱くように抱き締めているアルシェの力が増したのを感じる。
すでに冷静になっていて顔に押し当てられている胸圧がヤバイから離れて欲しいんだが…。
「王女様が特定の男にこんなことをしているのを見られると不味いだろ?」
「だからドアから離れてもらったんですよ」
「フォローまで完璧かよ」
「離れて寂しかったのはアクアちゃん達だけじゃないんですよ。
久し振りの触れ合いなんですからもう少し付き合ってください」
しばらくは離さないぞと宣言したアルシェに根負けして腕を腰に回して抱き寄せるとアルシェは逆に力を抜いてくれた。
そのおかげで胸圧が和らぎアルシェっぱいから脱出して息を気兼ねなく吸えるようになった。
まぁ俺も寂しさは感じていたし周りの目を気にしないでいいならお言葉に甘えてアルシェ成分を遠慮なく摂取させていただこう。
改めて立ち上がって抱きなおすと今度はアルシェの顔が俺の胸元に擦り寄ってくる。
「兄離れ出来るのか?」
「する必要を考えたくはありませんね」
互いに決定的な言葉は囁いたこともないけどお互いが好いていることはちゃんとわかっている。
鈍感系を自称して誤魔化していても流石にアルシェのアピールに気付かないわけがない。
あくまで兄弟愛に近い情であって決して愛し合っているわけではない、とずっと言い訳している状態になってどのくらい経っただろうか。この先、勇者メリオが魔王を倒した際に俺は一緒に元の世界に送還される予定で動いているものの、召喚時に魔方陣に魔力は流れていないにも関わらず俺が現れたことから別口で俺が召喚された可能性も少なからずある。
もしも勇者メリオは送還されても俺が残った場合……、なんて希望的観測を期待してこれ以上進むことは俺たちには出来ない。
「生殺しだぁ~」
「私の方が生殺し期間は長いですよぉ~」
俺は送還された場合のアルシェの立場にケチが付かない様配慮してこれ以上手を出さないようにして、アルシェも王女としての立場を理解しているからこれ以上希望を口にしない。それでも現状も十分にスキャンダルな状況なのだが、添い寝はアスペラルダ王城内のみのイベントなので秘匿され、他所では同じ部屋で二人きりにはならないようメリーなどを配し、事情を知るラフィート王子などは見て見ぬ振りをしたり協力者もいたり……。
恋に自制している俺たちも争いに関わらない世界の住民なら順序立ててちゃんと立場を確立して恋人になったり出来るんだろうし付き合い始めるまでは自制も出来ただろうが、なんだかんだで命の危機を感じながら戦う俺たちは都度性欲が高まるのか接触する時間を設けてもらっている。もちろん添い寝とかの話だが。
「そろそろあっち戻らないといけないんじゃないか?」
「ん~、名残惜しいですけどもう三十分経っていますからそうなんですよねぇ~。お兄さん成分をもっと摂取したかったです」
同じことを考えていたアルシェと微笑み合って互いに惜しみながら身体を離す。
「じゃあ、戻ろうか」
「はい、お兄さん♪」
* * * * *
一方同時刻帯。
残った精霊姉弟は追加されたクッキーを仲良く分け合って雑談に花を咲かせていた。
『お姉さま、紅茶が入りましたよ』
『クーありがとう~。ベル、クッキー半分こしよ~』
『わぁーい!アクア姉様ありがとぉぉぉ!』
『アニマ、もらいますわよー!』
『ちょっとニル姉様!この皿のクッキーはワタクシが頂いたんです!あっ、フラムは食べてもいいですからね』
『うん』
残念ながら第二長女ノイだけがこの場には居ないが久しぶりのお茶会に姉弟たちはテンション高く姦しくお喋りをしている。
その目の前の光景を気にせずお代わりした紅茶の香りと味を楽しみながら出て行った二人の戻りを待つラフィート陛下に背後の文官たちが口を寄せる。
「陛下。陛下の前で子供とはいえこのような態度。私どもは許せません!」
「そうです!話し合いの間は何があっても静観するようにと命令されていましたが、ここで注意せねばアスペラルダに舐められてしまいます!」
「黙れ馬鹿どもが。あの娘たちが何者か分かっていてその口を開いているのか?」
「……人間ではなく精霊とは予想しております」
文官からの訴えを一蹴したラフィートは無遠慮に姉弟を指差してその存在を問うと、文官も馬鹿ではないので精霊と予測は出来ていたようだ。それでも自分たちの王を前にした態度に納得は行かない表情を浮かべているのを見てラフィートも溜息を吐いた。
「おい、水無月宗八の娘たち。
我が新しい臣下が落ち着かないらしい。父とアルカンシェ王女の立場もあるだろうからそれなりに整えられないか?」
『メリー、クー。二人の意見は~?』
「アスペラルダ以外の王族の前に今後も出る事を考えればフォレストトーレ王の温情に甘えるべきかと」
『フォレストトーレ王の意見はもっともです。慣れる為にもあちらの臣下が納得する為にも整えたほうがいいですね』
メリーとクーは姉弟のお茶会の給仕を主に手伝っている中、アクアからの質問に冷静に回答を返した。
自分達はメイドとして完璧な仕事をしているのでこの場で姉弟の態度を改める決定権は第一長女アクアに委ねられる。
仕方ないか。アルシェやじぃじとばぁばからもいずれちゃんとした態度を示さなければならなくなると聞いていたアクアは諦めの息を吐くと自分の中のスイッチを入れた。
『申し訳ございませんラフィート陛下。末の姉弟の態度だけは目を瞑っていただけますでしょうか?』
「かまわん」
『寛大なご配慮いただきありがとうございます。
クーは問題ないけれどニルとアニマも今だけはわたくしに従って頂戴ね』
『完璧な擬態ですわね、アクア姉様!かしこまりましたわー!』
『ワタクシも問題ないでしょう、アクア姉様?
それとニル姉様はいいかげんワタクシのクッキーを諦めてください』
言葉遣いだけでなく居住まいも正した擬態アクアの姿に誇らしそうな微笑みを浮かべるクーとメリーとは対照的にぐぅの音も出なくなった臣下たちは名状しがたい表情で引き下がっていく。
もちろん王の前で居住まいを正させた事に喜びもあるが、逆に小さな子供に勝ち誇る自らの度量の狭さに恥ずかしさも感じていたからこその複雑な心境。そんな彼らの様子を見てラフィートもゲンマールも苦笑いを浮かべつつ紅茶に手を付ける。
しかしこの場で一人風精ファウナだけは小さいのに立派ねぇとのんびりした感想を浮かべていたのだった。
「はっ!」
窓際で振り向いたアルシェの顔は王族のソレであった為、彼女の言う通りにすぐ膝を着き続く言葉を待つ。
「今回宗八は何を間違えたかわかっていますか?」
「まったくわかっておりません」
話途中で止めて来たラフィート陛下の様子から考えて養蜂中心の町作りに関する事は確かだが、どこが俺の間違いになったのかいまいちピンと来ていなかったのでアルシェの質問にも中途半端な回答をせずにきっぱり答える。
「結論から言えば、新しい町を作ろうと話を振ったことが越権行為に当たりました。
宗八はアスペラルダの所属ですから他国の政に口を出したことが問題です」
「そういうことでしたか…。申し訳ございません、復興の手助けになればとしか頭にありませんでした」
「宗八のその考えは素晴らしいものです。
養蜂もこの世界にはない事業ですから成功すればフォレストトーレは確かに財政的にも大きな助けになるでしょう。
それでも今回の内容はラフィート陛下と同格となるお父様を通して伝える手順を取るべきでした」
ぼんやりとアルシェを通しておけば良かったと後悔をしていたところ、アルシェでも実際はダメでアスペラルダ王ギュンター様からラフィート殿下に話を通す必要があったそうで今回のやらかしの明らかな規模の大きさにに俺は青ざめる。
「伝え方も提案ですと貸しになってしまうので共同事業で行う必要があるでしょう。
フォレストトーレは現在人材も資材も資金も足りていないのですから町一つ興す事も難しいですし」
「申し訳ございませんアルカンシェ様。
浅慮な考えでアルカンシェ様だけでなくラフィート陛下にもアスペラルダにもご迷惑を……」
「……まぁ、私達にも落ち度はあります。
魔神族相手に調査などを行う行動指針ややり方も宗八に任せきりでしたし、国を挙げて支援して来たのです。
周辺国が協力してくださっていることもあり自由行動を問題視することもなかった為魔神族対応に集中出来ていました。
今回、甚大な被害を被った国が出たことで政を考える隙が宗八に出来てしまった…、今まで自由だったからこそ私達が注意を伝えておくべきことでした」
「常識を持ち合わせていれば一兵士が政に関わる事を口にすべきではないと分かるはずです。
全ては自分が自由を履き違えていたことが原因です。アルカンシェ様方に落ち度はございません!」
流石に今回の件をアルシェ達に問題があったなんて事にされては困る。
後悔の念に苛まれ足元から急激に冷えていく感覚に見舞われる状況下でも原因が全て俺にある事を理解するくらいには頭は回る。
異世界アルストロメリアに来た一年前であれば今回の様なミスはまずあり得なかったが、旅をして来た今までの行動で自由に動けていたことの延長でしでかしてしまった自分の責任に変わりはない。
今までの自由は理由もある故に見逃されていただけの自由だったことに改めて気付かされた。
「……ふぅ。宗八が反省している様なのでこれ以上は言いませんが、今後国王を相手にする際は注意が必要ですからね。
相手がラフィート陛下であった事も幸いでした。陛下は宗八の立場や為人を理解して事を荒立たない様配慮してくださいました。ちゃんと感謝するのですよ」
「ありがとうございます。今後同じ過ちを繰り返さない様に自制を心がけます」
* * * * *
「落ち着きましたか?」
「ありがとう、アルシェ。本当に気を付けるよ」
アルシェが王族オーラを治めて表情を緩めたことで説教が終わった事はわかっていたけど思いの外自身の過ちの対するショックが大きく、すぐに立ち上がらず俯いている俺の様子を見かねたアルシェは高さを合わせて俺を抱き締めて落ち着くのを待ってくれていた。
アルシェに答えたあとにもう大丈夫だと背中をポンポンと軽く叩き放してくれと合図を送る。
「嫌です」
俺の頭を胸に抱くように抱き締めているアルシェの力が増したのを感じる。
すでに冷静になっていて顔に押し当てられている胸圧がヤバイから離れて欲しいんだが…。
「王女様が特定の男にこんなことをしているのを見られると不味いだろ?」
「だからドアから離れてもらったんですよ」
「フォローまで完璧かよ」
「離れて寂しかったのはアクアちゃん達だけじゃないんですよ。
久し振りの触れ合いなんですからもう少し付き合ってください」
しばらくは離さないぞと宣言したアルシェに根負けして腕を腰に回して抱き寄せるとアルシェは逆に力を抜いてくれた。
そのおかげで胸圧が和らぎアルシェっぱいから脱出して息を気兼ねなく吸えるようになった。
まぁ俺も寂しさは感じていたし周りの目を気にしないでいいならお言葉に甘えてアルシェ成分を遠慮なく摂取させていただこう。
改めて立ち上がって抱きなおすと今度はアルシェの顔が俺の胸元に擦り寄ってくる。
「兄離れ出来るのか?」
「する必要を考えたくはありませんね」
互いに決定的な言葉は囁いたこともないけどお互いが好いていることはちゃんとわかっている。
鈍感系を自称して誤魔化していても流石にアルシェのアピールに気付かないわけがない。
あくまで兄弟愛に近い情であって決して愛し合っているわけではない、とずっと言い訳している状態になってどのくらい経っただろうか。この先、勇者メリオが魔王を倒した際に俺は一緒に元の世界に送還される予定で動いているものの、召喚時に魔方陣に魔力は流れていないにも関わらず俺が現れたことから別口で俺が召喚された可能性も少なからずある。
もしも勇者メリオは送還されても俺が残った場合……、なんて希望的観測を期待してこれ以上進むことは俺たちには出来ない。
「生殺しだぁ~」
「私の方が生殺し期間は長いですよぉ~」
俺は送還された場合のアルシェの立場にケチが付かない様配慮してこれ以上手を出さないようにして、アルシェも王女としての立場を理解しているからこれ以上希望を口にしない。それでも現状も十分にスキャンダルな状況なのだが、添い寝はアスペラルダ王城内のみのイベントなので秘匿され、他所では同じ部屋で二人きりにはならないようメリーなどを配し、事情を知るラフィート王子などは見て見ぬ振りをしたり協力者もいたり……。
恋に自制している俺たちも争いに関わらない世界の住民なら順序立ててちゃんと立場を確立して恋人になったり出来るんだろうし付き合い始めるまでは自制も出来ただろうが、なんだかんだで命の危機を感じながら戦う俺たちは都度性欲が高まるのか接触する時間を設けてもらっている。もちろん添い寝とかの話だが。
「そろそろあっち戻らないといけないんじゃないか?」
「ん~、名残惜しいですけどもう三十分経っていますからそうなんですよねぇ~。お兄さん成分をもっと摂取したかったです」
同じことを考えていたアルシェと微笑み合って互いに惜しみながら身体を離す。
「じゃあ、戻ろうか」
「はい、お兄さん♪」
* * * * *
一方同時刻帯。
残った精霊姉弟は追加されたクッキーを仲良く分け合って雑談に花を咲かせていた。
『お姉さま、紅茶が入りましたよ』
『クーありがとう~。ベル、クッキー半分こしよ~』
『わぁーい!アクア姉様ありがとぉぉぉ!』
『アニマ、もらいますわよー!』
『ちょっとニル姉様!この皿のクッキーはワタクシが頂いたんです!あっ、フラムは食べてもいいですからね』
『うん』
残念ながら第二長女ノイだけがこの場には居ないが久しぶりのお茶会に姉弟たちはテンション高く姦しくお喋りをしている。
その目の前の光景を気にせずお代わりした紅茶の香りと味を楽しみながら出て行った二人の戻りを待つラフィート陛下に背後の文官たちが口を寄せる。
「陛下。陛下の前で子供とはいえこのような態度。私どもは許せません!」
「そうです!話し合いの間は何があっても静観するようにと命令されていましたが、ここで注意せねばアスペラルダに舐められてしまいます!」
「黙れ馬鹿どもが。あの娘たちが何者か分かっていてその口を開いているのか?」
「……人間ではなく精霊とは予想しております」
文官からの訴えを一蹴したラフィートは無遠慮に姉弟を指差してその存在を問うと、文官も馬鹿ではないので精霊と予測は出来ていたようだ。それでも自分たちの王を前にした態度に納得は行かない表情を浮かべているのを見てラフィートも溜息を吐いた。
「おい、水無月宗八の娘たち。
我が新しい臣下が落ち着かないらしい。父とアルカンシェ王女の立場もあるだろうからそれなりに整えられないか?」
『メリー、クー。二人の意見は~?』
「アスペラルダ以外の王族の前に今後も出る事を考えればフォレストトーレ王の温情に甘えるべきかと」
『フォレストトーレ王の意見はもっともです。慣れる為にもあちらの臣下が納得する為にも整えたほうがいいですね』
メリーとクーは姉弟のお茶会の給仕を主に手伝っている中、アクアからの質問に冷静に回答を返した。
自分達はメイドとして完璧な仕事をしているのでこの場で姉弟の態度を改める決定権は第一長女アクアに委ねられる。
仕方ないか。アルシェやじぃじとばぁばからもいずれちゃんとした態度を示さなければならなくなると聞いていたアクアは諦めの息を吐くと自分の中のスイッチを入れた。
『申し訳ございませんラフィート陛下。末の姉弟の態度だけは目を瞑っていただけますでしょうか?』
「かまわん」
『寛大なご配慮いただきありがとうございます。
クーは問題ないけれどニルとアニマも今だけはわたくしに従って頂戴ね』
『完璧な擬態ですわね、アクア姉様!かしこまりましたわー!』
『ワタクシも問題ないでしょう、アクア姉様?
それとニル姉様はいいかげんワタクシのクッキーを諦めてください』
言葉遣いだけでなく居住まいも正した擬態アクアの姿に誇らしそうな微笑みを浮かべるクーとメリーとは対照的にぐぅの音も出なくなった臣下たちは名状しがたい表情で引き下がっていく。
もちろん王の前で居住まいを正させた事に喜びもあるが、逆に小さな子供に勝ち誇る自らの度量の狭さに恥ずかしさも感じていたからこその複雑な心境。そんな彼らの様子を見てラフィートもゲンマールも苦笑いを浮かべつつ紅茶に手を付ける。
しかしこの場で一人風精ファウナだけは小さいのに立派ねぇとのんびりした感想を浮かべていたのだった。
10
お気に入りに追加
760
あなたにおすすめの小説

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

異世界に来たからといってヒロインとは限らない
あろまりん
ファンタジー
※ようやく修正終わりました!加筆&纏めたため、26~50までは欠番とします(笑)これ以降の番号振り直すなんて無理!
ごめんなさい、変な番号降ってますが、内容は繋がってますから許してください!!!※
ファンタジー小説大賞結果発表!!!
\9位/ ٩( 'ω' )و \奨励賞/
(嬉しかったので自慢します)
書籍化は考えていま…いな…してみたく…したいな…(ゲフンゲフン)
変わらず応援して頂ければと思います。よろしくお願いします!
(誰かイラスト化してくれる人いませんか?)←他力本願
※誤字脱字報告につきましては、返信等一切しませんのでご了承ください。しかるべき時期に手直しいたします。
* * *
やってきました、異世界。
学生の頃は楽しく読みました、ラノベ。
いえ、今でも懐かしく読んでます。
好きですよ?異世界転移&転生モノ。
だからといって自分もそうなるなんて考えませんよね?
『ラッキー』と思うか『アンラッキー』と思うか。
実際来てみれば、乙女ゲームもかくやと思う世界。
でもね、誰もがヒロインになる訳じゃないんですよ、ホント。
モブキャラの方が楽しみは多いかもしれないよ?
帰る方法を探して四苦八苦?
はてさて帰る事ができるかな…
アラフォー女のドタバタ劇…?かな…?
***********************
基本、ノリと勢いで書いてます。
どこかで見たような展開かも知れません。
暇つぶしに書いている作品なので、多くは望まないでくださると嬉しいです。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる